
2025年は“昭和100年”。
宇賀なつみ、高度成長期のパワーを感じに豊後高田へ | Page 2
手書きと手紙で
旅のパワーをおすそわけ
伯剌西爾珈琲舎でひと休みしたあとは、歩いて5分の場所にある〈株式会社ワンチャー〉へ。2000年に設立されたワンチャーは、伝統工芸技術と日本の工業技術を融合させたオリジナルの万年筆を製造し、世界中へと届けている豊後高田発のユニークな企業です。


実は宇賀さんとワンチャーの出合いには、すてきなストーリーがありました。
宇賀さんと放送作家の小山薫堂さんがパーソナリティーを務めるラジオ番組『SUNDAY’S POST』。ゲストやリスナーから届く手紙にまつわる物語を伝えるこの番組を、社長の岡垣さんが数年前に偶然耳にし、宇賀さんの存在を認識することになります。

岡垣さんは、8年前から市内の中学校で「書く授業」を担当。その授業をサポートするワンチャーのラジオフリークの社員が「ラジオにハガキを出したら、読まれるかもしれないよ」と中学生に提案したところ、興味を持った生徒がラジオへのハガキ投稿に挑戦。図らずも、宇賀さんの番組に豊後高田市の中学生からたくさんのハガキが届くことに。
「なぜ大分県の中学生からこんなにハガキが届くのか、不思議だったんです。何クラス分もですよ。そのハガキには“初めて万年筆で書いています”とみなさん書かれていました」(宇賀さん)

こうしてつながった縁を大切にしたいと、岡垣さんは万年筆を番組へ提供。読まれたハガキのなかから毎週1名にワンチャーの万年筆を贈っています。

ヨーロッパやアメリカをメインに、現在世界30か国で取引があるワンチャーの万年筆。中国、ベトナム、インド、エジプトなど、スタッフの出身地でもワンチャーを発信し、海外への流通が主戦力となっています。
そのなかでも輪島の漆を塗った〈ドリームペン誠漆〉が看板商品。女性に人気の〈PuChiCo(ぷちこ)〉は、その名の通り手のひらサイズ。文房具好きの心をくすぐる色とりどりの万年筆がそろいます。「うわー、きれい!」と宇賀さんも思わず感動。


「万年筆で書くことは、普通のペンや鉛筆と比べて手間がかかりますよね。わざわざ書くから一画一画に力が入るし、その分思いが伝わるんじゃないかな。実はあのラジオ番組をやるまで、私も万年筆を使ったことがなかったんですよ」(宇賀さん)
試し書きをする宇賀さんに、せっかくの機会なので一筆したためてもらうことに。

万年筆は、ここぞという大切なときに、心を落ち着かせて使いたくなるもの。
「旅先で書くと、ハガキが届く前に自分が先に帰りついてしまうかもしれませんが、じっくり時間をかけて届くハガキは、より言葉が熟成され、今、逆にいいなって。いろんな人の手を渡って、その手紙がゆっくり旅して思いを届けてくれるわけですもんね。よりぜいたくな体験だと思います」(宇賀さん)

宇賀さんの言葉を聞いて、「いつか宇賀さんモデルの万年筆をつくりたいです」と岡垣さんが最後にぽつり。次に再会するのは、宇賀さんとの商品開発の打ち合わせになるかもしれません。

不思議なご縁でつながる豊後高田市から、宇賀さん自身のラジオ番組に今の気持ちをつづったハガキを投函。宇賀さんの旅の思い出と気持ちをハガキにのせて、昭和の町のポストに託しました。