アントニー・ゴームリーの彫刻作品『ANOTHER TIME XX』と向き合う宇賀なつみさん
特集|宇佐・国東半島でパワーをもらう旅

大自然×圧巻アート×パワースポット寺社。
宇賀なつみが案内する国東半島の神秘旅

Posted 2025.08.22
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「大分県にはよく来ているのに、国東(くにさき)半島はじっくり旅したことがないんですよ」と話す宇賀なつみさん。

大分県の空の玄関口・国東半島は、宇佐神宮を中心に神道と仏教が融合した「神仏習合(しんぶつしゅうごう)文化」が息づく祈りの地。近年では数多くのアーティストが移住したり、芸術祭が開催されたりと、“アートのまち”としても注目を集めています。

今回は、自然と精神性が交差する神秘的な国東半島の開運旅へと出かけました。

アントニー・ゴームリーの
鉄の像に会いに行く

最初に向かったのは、大分空港から車で約50分、国東市国見町の「千燈岳(せんとうだけ)」。この中腹にある切り立った崖には、2014年の国東半島芸術祭で設置された人体彫刻作品『ANOTHER TIME XX』が佇んでいます。

「アントニー・ゴームリー」の案内板
登山道の入口には、「アントニー・ゴームリー」と記された案内板が。

国東半島芸術祭では、国内外から25組以上の現代美術作家が参加。この場所は、芸術祭の作品のなかでも特にシンボリックな、アントニー・ゴームリーの作品の会場「千燈プロジェクト」になりました。

〈不動茶屋〉の外観
登山道の第2駐車場のそばにある〈不動茶屋〉。
〈不動茶屋〉内の展示を見る宇賀さん
不動茶屋は芸術祭の休憩所兼案内所だった場所。

「身長191センチ、体重629キロ。鉄の像はこんなに大きいんですね」とボードに目を留める宇賀さん。芸術祭当時の情報から、これから見に行く作品への期待感が高まります。

千燈岳登山道の入口

千燈岳は比較的登りやすい登山道ではありますが、岩の上を歩く所や階段が続くので、歩きやすい靴と服装がベスト。両手を空けて登ると安心です。

登山道を登る宇賀さん
「まだまだ余裕です」と宇賀さん。

国内外の海や山と、さまざまな場所を旅している宇賀さんは、山道も足取り軽やか。

『ANOTHER TIME XX』までの道のりなどが書かれた案内看板

アントニー・ゴームリーは、ロンドン出身の、身体と空間の関係性を探る作品で世界的に知られる彫刻家。2013年に国東を訪れ、現地を歩き、張り出した岩場に自身をかたどった像を設置する構想を描きました。

遠くに鉄の像が見える

登り始めて約15分、岩場の先端にまるで誰かが立っているかのような気配。「いました!」と鉄の像を見つけて声を挙げる宇賀さん。

『ANOTHER TIME XX』と並んで海景を眺める宇賀さん

崖の上に佇む像の傍らで、一面に広がる海景に思わず「わあ……!」と感嘆の声。静けさに包まれた国東の山中に、宇賀さんの感動がそっと響きます。

瀬戸内海と姫島を見下ろす遠景
目の前に見えるのは、瀬戸内海に浮かぶ大分県唯一の一島一村・姫島村。
崖の上で海を見つめるように立つ人体彫刻
海を見つめて立つこの像が、アントニー・ゴームリーの作品『ANOTHER TIME XX』。

アントニー・ゴームリーはこの地を訪れたとき、奈良時代から続く国東半島独自の山岳仏教文化「六郷満山(ろくごうまんざん)」(※修行僧が険しい山道を巡り、神仏習合の祈りを捧げた信仰)に強く惹かれました。

実際にその修行の道を歩き、その精神性に感銘を受け、ここを設置場所に選んだといいます。

『ANOTHER TIME XX』と真正面で向き合う宇賀さん
「この表情にはどんな想いが込められているんでしょうね」。じっと見つめる宇賀さん。

この像の設置は、不動茶屋からワイヤーを張っての運搬が必要だったとのこと。シイタケ農家や工務店の方など、地元の協力によって実現したという背景も、アートと地域のつながりを感じさせます。

登山道をさらに進む
鉄の像のすぐ上にある「五辻(いつつじ)不動尊」へ。

山岳宗教と八幡信仰が融合した六郷満山文化が色濃く残る国東半島。作品がある場所も修験道の一部であるため、険しい岩山を登る登山道になっています。

五辻不動尊からの景色
五辻不動尊でひと息。

心地よい風と眼下に広がる景色が、歩いてきた道のりをやさしく讃えてくれるようです。「アート作品に出合うまでのプロセスも体験の一部ですね。ごほうびのような絶景でした」(宇賀さん)

帰りに立ち寄ったのは、登山口からほど近い「旧千燈寺跡」。

旧千燈寺跡へと続く登山道

六郷満山文化を開いたという仁聞菩薩(にんもんぼさつ)が最期を迎えたと伝えられる場所で、かつては“西の高野山”と呼ばれていました。

旧千燈寺跡の石仏
苔むした参道が続く
旧千燈寺跡の2つの仁王像

苔むした参道の先にある、今は姿なき旧千燈寺跡に佇む仁王像。レリーフ状の一枚岩を浮き彫りにした、国東半島にある仁王像のなかでも珍しい形です。護摩堂のないこの場所を、今でもこの仁王たちが守っています。

苔の生えた地面をひと筋の光が照らしている
うっそうと茂る森のなか、ひと筋の光が差し込む様はまさに神秘そのもの。自然と信仰が折り重なる景色に、しばし足を止めて心を預けてしまいそう。

アートを巡り、祈りの地を歩く。国東半島でしか味わえない静けさとパワーに満ちた時間がここには流れています。

Spot 01
Information
アントニー・ゴームリー『ANOTHER TIME XX』
address:大分県国東市国見町千燈
tel:0978-72-5168(国東市役所 観光・地域産業創造課 商工観光企画係)
access:安岐ICから車で約60分、大分空港から車で約50分
駐車場台数:第1駐車場10~20台、第2駐車場5~10台 ※大型車は登り始めの分岐点で左回りに通行
web:アントニー・ゴームリー『ANOTHER TIME XX』

島袋道浩の作品『光る道-階段の無い参道-』
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アートたち

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