左から大きい順に、かぼす、青ゆず、すだちの全容と断面
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かぼす、ゆず、すだちはどう違う?
味や香り、見分け方、使い分けを
わかりやすくご紹介!

Posted 2021.09.28
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かぼすやゆず、すだちなど、爽やかな香りと豊かな酸味で食卓を彩る柑橘類「香酸柑橘(こうさんかんきつ)」。香りの主成分のリモネンは食欲増進、酸味成分のクエン酸が疲労回復にも役立つ頼もしい食材です。

とはいえ、いまひとつ各種類の違いがわからず、料理に使いたくてもどれを選べばいいか悩んでしまう人も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、香酸柑橘を代表する3種「かぼす」「ゆず」「すだち」の特徴と見分け方、使い方をご紹介します。

2025年6月24日更新

かぼす、ゆず、すだちの見分け方

左から大きい順に、かぼす、青ゆず、すだちの青果

まず見分け方で一番わかりやすいのは大きさです。大きい方から順に、かぼす、ゆず、すだち。

かぼすはテニスボール、すだちはゴルフボールほど、青ゆずはその中間くらいの大きさとなっています。かぼすとすだちは深い緑色で表面がつやつやしていますが、青ゆずはほんのり黄色が混ざり、ゴツゴツとした手触りなのも特徴です。

左から大きい順に、かぼす、青ゆず、すだちの全容と断面
左から、かぼす、ゆず、すだち。

断面を見てみると、かぼすの果肉は赤みのある黄色、すだちは黄緑がかった色をしています。ゆずはかぼすとすだちの中間くらいの薄い黄色をしており、種が多く果肉の量が少なめなことがわかります。

かぼす、ゆず、すだち、3品の見分け方をまとめた表
かぼす、ゆず、すだちの見分け方を一覧表にしてみました。柑橘を見分けるときにお役立てください。

かぼす、ゆず、すだちの特徴と使い方

次に、特産地や旬の時期などの基本情報から、味、香り、栄養の特徴までをご説明。またその特徴から、どんな料理やシーンでの利用におすすめかもご紹介しましょう。

クエン酸量No.1、なのに
甘みと酸味のバランスがいい「かぼす」

かぼすの全容と断面
大分県民の食卓のお供「かぼす」。唐揚げや刺身、天ぷら、味噌汁など、何にでも合う万能調味料です。

大分県が誇る特産品「かぼす」。生産量の約9割を大分県で生産しており、生産量の多い年(2021年)には約6000トンもの生産がありました。

実は熟すと黄色になりますが、青玉のほうが香り豊か。そのため、旬は青い実が穫れる8〜10月の3か月ほどとなっています。

大きさはすだちの3倍ほどで、ひと玉から約30ミリリットルの果汁が搾れます。そのため、焼き魚などの添え物以外に、果汁をたっぷり使う酢の物やドレッシング、ポン酢、鍋料理などにも重宝します。

ほか2種よりも酸味の元であるクエン酸が多く含まれていますが、甘みも含まれている分、甘みと酸味の調和がとれた柔らかな味わいが魅力。香りは上品で、白身の焼魚など繊細な味の料理に合わせても、素材の風味を損ないません。

かぼすの特徴まとめ

・かぼすの旬は、青い果実が出回る8〜10月
・ひと玉で約30ミリリットルの果汁が搾れる。
・酸味はあるが甘みとのバランスがよく、まろやか。
酢の物やポン酢はもちろん、鍋、味噌汁など幅広い用途に◎。

豆知識

なぜかぼすは大分で多く育てられているの?

かぼすは江戸時代から大分県で親しまれてきた伝統果実。寒暖差のある気候が香りと酸味のある果実を育てるのに適しているため、主産地となりました。

特有の華やかな香りと、
複雑な風味が楽しめる「青ゆず」

ゆずの全容と断面
種表面のヌルヌルした部分は、保湿性が高くコラーゲンを束ねる働きもある「ペクチン」。料理のとろみづけや化粧品などに活用されることもあるそう。

高知県の特産品「ゆず」。11〜12月頃に出回る黄ゆずの姿が知られていますが、8〜10月は青ゆずも流通しています。

種が多く、まだ小さい青玉から絞れる果汁はごくわずか。また、ほかの2種より糖度が高いものの、青いうちは酸味と苦みも強く、複雑な味わいです。ただ、ゆずの皮には「ユズノン」と呼ばれる特有の香り成分が含まれているため、料理の香りづけにはもってこい。皮を削ったりスライスしたり、皮目を下にして果汁を絞ることで、その華やかな芳香を活用できます。

ゆず湯が人気なのもこの成分のおかげです。柑橘類の皮には血行促進作用があり、お風呂に入れると体を芯から温めてくれるうえ、ユズノンは「50メートルプールに1滴入れても香る」と言われるほどの強い香り。たくさんのお湯にいれてもしっかりと香ってくれるんです。

青ゆずの特徴まとめ

・青ゆずの旬は、8〜10月
・種が多く、小さい青玉から絞れる果汁はわずか。
・糖度が高いが、青いうちは酸味と苦みが強く、複雑な味わい。
・皮を削ったりスライスしたり、皮目を下にして果汁を絞ると料理の香りづけに

クセのない酸味と強い香りで、
松茸やサンマと相性抜群な「すだち」

すだちの全容と断面
料理の脇に半分や4分の1サイズに切られてちょこんと添えてある姿がおなじみの「すだち」。

ゆずの偶発実生(ぐうはつみしょう/自然交配などにより偶然発見された果実)と言われる「すだち」は、高知県のお隣、徳島県の特産品。国内生産量の97%を同県が占めています。かぼす同様、青玉のほうが風味豊かで、旬は8〜10月の3か月間となっています。

3種のなかではもっとも小ぶりで、重さは20〜40グラムほど。ゴルフボールと同じくらいか、それよりもやや小さいサイズ感です。

特徴は、クセのない酸味と強い香り。苦みが少なくどんな食材にも合う味わいで、爽やかな香りをしっかりまとわせてくれるため、松茸やサンマなど強い香りの食材ともよく合います。皮にはポリフェノールの一種である「スダチチン」が含まれており、体重増加の抑制や、糖・脂質代謝改善などへの効果が期待されているそうです。

すだちの特徴まとめ

・すだちの旬は、8〜10月
・クセのない酸味と強い香りで、苦みが少ない。
松茸やサンマなど強い香りの食材に合う。
・体重増加の抑制や、糖・脂質代謝改善が期待できる。

(番外編)使いやすく栄養素も高い
宮崎特産のダークホース「へべす」

へべすの全容と断面
断面を見ると、へべすの種の少なさや皮の薄さがよくわかります。

ここで番外編の香酸柑橘をひとつご紹介。

へべす」は、江戸時代、宮崎県日向市の長宗我部平兵衛(ちょうそかべへいべえ)さんが山で偶然発見し、持ち帰って栽培を始めたのが起源とされる同県特産の果実。「平兵衛さんの酢みかん」が転じ、「平兵衛酢(へべす)」となったと言われています。

旬の時期は、8〜10月頃

特徴は、皮が薄く種が少ないため、ひと玉から果汁が多く絞れる点と、まろやかな口当たり、ほんのり甘い香りの3点。そのため、ポン酢やドレッシングなどに加工するのに向いています

また、必須アミノ酸9種のうち8種が含まれており、発がん抑制効果があると言われるフラボノイド成分「ナツダイダイン」も非常に多く含まれている、栄養面でも優秀な食材です。

ただ、かぼす、ゆず、すだちの3種と比較すると生産量が10分の1にも満たず、宮崎県外に流通する数はごくわずか。お店で見かけたら、迷わず購入するのがおすすめです。

へべすの特徴まとめ

・へべすの旬は、8〜10月
・皮が薄く種が少ないため、ひと玉から果汁が多く絞れる。
・まろやかな口当たり、ほんのり甘い香り。
ポン酢やドレッシングなどにするのがオススメ。
・発がん抑制効果があると言われるフラボノイド成分「ナツダイダイン」も豊富。

特徴を理解して使い分けよう

サイズ順に並ぶかぼす、ゆず、すだち

果汁を絞って調味料としても、お湯や炭酸水、お酒で割ってドリンクにしてもおいしい香酸柑橘。上手に使えば、塩分過多になりがちな食生活を改善してくれる強い味方にもなってくれます。

どの柑橘も魅力的ですが、特徴を理解して使い分けることで、より素材の恩恵を引き出せるはず。果汁をたっぷり使いたい、酸っぱすぎない味付けにしたい、クエン酸の疲労回復効果に期待したいときには「かぼす」、特有の華やかな香りに癒やされたい、お風呂などにも活用したいときには「ゆず」、酸味と香りのスパイスを料理に加えたいときには「すだち」を使ってみるといいかもしれません。

よくある質問に答えます。かぼすQ&A

Q. かぼすとすだちは何が違うの?

A. 大きさ・果汁の量・香り・味のバランスなどが異なります。かぼすは果汁が多く、まろやかな酸味、すだちは香りが強くシャープな酸味が特徴です。

Q. なぜ大分県では、かぼすが多く栽培されているの?

A. 大分県の寒暖差が大きく水はけの良い土壌は、香り豊かで酸味のある果実の生育に適しているためです。江戸時代から栽培が盛んです。

詳しくはこちら

Q. かぼすの旬の時期はいつですか?

A. 一般的に青玉のかぼすは8〜10月が旬。香りが強く、果汁のしぼりやすい時期です。黄色に熟す冬場は香りも酸味もまろやかになります。

Q. かぼすはどんな料理に合いますか?

A. 焼き魚や鍋、ポン酢、サラダのドレッシング、唐揚げなど幅広く活用できます。果汁を炭酸やお酒に加えるのもおすすめです。

かぼすの上手な利用法やレシピはこちらをチェック。

credit text:坂口 ナオ

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