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2時間歩いた者だけがたどり着ける秘湯
〈法華院温泉山荘〉と九重の紅葉

Posted 2021.10.21
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標高1700メートル級の山々が連なる九州随一の山岳地帯「くじゅう連山」。春はピンク色の可憐な花を咲かせるツツジの一種「ミヤマキリシマ」が有名ですが、秋には赤や黄色に染まった草木が織りなす美しい光景を見るために、多くの人が訪れる紅葉の名所でもあります。

その山中に広がる坊ガツル湿原の北西部に、九州一高いところにある温泉として知られる〈法華院温泉山荘(ほっけいんおんせんさんそう)〉があります。最短でも約2時間歩かなければ辿り着けないこの場所は、登山した者だけが入れる、まさに“秘湯”。内湯の窓からは秋の色に染まったくじゅうの山々を眺めることもでき、紅葉登山にはもってこい。宿泊客の利用はもちろん、日帰り入浴も可能です。

今回は、温泉の情報に加え、おすすめの登山ルートや周辺の紅葉スポットも併せてご紹介します。

紅葉も温泉も一挙に楽しめる、九州最高所の温泉宿

 (photo:ray_tako / PIXTA)

〈法華院温泉山荘〉は、九州で一番高いところにある温泉宿。もとは法華院白水寺(はくすいじ)というお寺で、鎌倉時代の1324年に、天台宗のお寺として開かれたとの記録が残っています。

明治時代に山小屋となり、現在では登山者憧れの宿としてにぎわっています。ちなみに、宿のご主人は26代目の住職なのだとか。

宿泊客は24時間入浴可能な温泉。11:00〜20:00は日帰り入浴もできます(19:30最終受付)。

露天風呂こそありませんが、男女それぞれの内湯の窓からは、大船山(たいせんざん)や平治岳(ひいじだけ)、立中山(たっちゅうさん)が見られ、秋には色とりどりの山の姿を眺めながらのんびりと湯に浸かれます。

外にはオープンデッキもあるので、風呂上がりにすがすがしい山の空気を浴びながら、のんびり過ごすこともできますよ。

泉質は、無色透明の硫酸塩泉。筋肉痛や関節痛、疲労回復などに効果ありとうたわれており、山登りで疲れた体を癒やすのにうってつけです。

温泉までは、穏やかなルートで片道2時間ほどの道のり

毎年春に行う野焼きによって美しい自然が保たれている「坊ガツル湿原」。山荘から徒歩10分ほどの場所には、トイレや炊事場が整備された〈坊ガツルキャンプ場〉があり、テント泊も可能です。(photo:Daikegoro / PIXTA)

〈法華院温泉山荘〉がある「坊ガツル湿原」は、「くじゅう連山」のほぼ真ん中にある、国内最大級の中間湿原です。中間湿原とは、雨水のみで植生を維持する高層湿原と、地下水で植物が育つ低層湿原、両方の性質を持つ湿原のこと。

また、ラムサール条約に登録されている希少な植物の宝庫でもあります。運がよければ野ウサギや野鳥に出合えることも。

秋には赤、オレンジ、黄色のグラデーションに染まった大船山の姿をバックに、辺り一面にススキが白く輝く幻想的な風景が見られます。

東の主峰・大船山の山頂(標高1786メートル)にある湖「御池(おいけ)」。くじゅう連山のなかでももっとも早い、10月中旬に紅葉が始まるスポットです。(画像提供:くじゅうファンクラブ)

車道の通っていない山中にあるため、たどり着くには徒歩で向かうしかありません。と言っても、初心者向けのコースもあるのでご安心を。長者原(九重)登山口から「タデ原湿原」を抜け、雨ヶ池越を通る一番やさしいルートなら、2時間ほどで到着できます。

周辺には紅葉のビュースポットである三俣山や、大船山山頂の御池も。体力に自信があれば、足を伸ばしてみてもいいかもしれません。

近くに行ったら立ち寄りたい! 周辺の紅葉スポット

くじゅうエリアは県内屈指の紅葉スポットなだけあって、山に登らなくとも紅葉狩りが楽しめる場所がたくさんあります。そこで〈法華院温泉山荘〉の周辺にある、車でも行ける紅葉スポットを3つご紹介します。

タデ原湿原(見頃は10月中旬〜11月上旬)

秋にはコシアブラ、ミズナラ、コハウチワカエデなどの色とりどりの紅葉が見られます。(photo:KAZE / PIXTA)

「タデ原湿原」は、2005年、坊ガツルとともにラムサール条約に登録された、標高1000メートルの盆地に広がる約38ヘクタールの大湿原。

隣接する〈長者原ビジターセンター〉を起点に遊歩道が整備されていて、景色を眺めながらの散策に最適です。20分、40分、60分の散策コースが用意されているので、予定や体力に併せて気軽に楽しめます。

牧ノ戸峠(見頃は10月中旬〜11月上旬)

(photo:KAZE / PIXTA)

やまなみハイウェイのなかでもっとも標高が高い「牧ノ戸峠」は、色づく山々の姿を360度の大パノラマで臨める絶景ポイントです。

近くの展望台までは、牧ノ戸峠登山口から歩いて10分ほど。くじゅう連山への入り口でもあるため多くの登山客を見かけますが、展望台までは軽装で向かえます。ここから3時間ほどで〈法華院温泉山荘〉に行くこともできますよ。

九重“夢”大吊橋(見頃は10月下旬〜11月中旬)

(画像提供:九重“夢”大吊橋)

歩行者専用では日本一の高さを誇る吊り橋〈九重“夢”大吊橋〉。

標高777メートルの山間に架けられた、高さ173メートル、長さ390メートルの橋の上からは、玖珠川(くすがわ)両岸に約2キロメートル連なる断崖絶壁・九酔渓(きゅうすいけい)や震動の滝などが一望できます。九酔渓に生い茂る、モミやツガ、カツラなどの原生林が鮮やかに色づく様子は圧巻そのもの。紅葉が見頃を迎える11月上旬になると、多くの観光客でにぎわいます。

併設の物産直売所〈天空館〉では、地元で捕れたイノシシや鹿などのジビエ肉を使ったハンバーガー〈九重“夢”バーガー〉をはじめ、ご当地グルメやお土産なども販売しており、景色以外にも楽しみ豊富なスポットです。

シーズン中なら必ず見頃に出合える「くじゅう連山」で、紅葉狩りはいかが?

くじゅう連山が紅葉の季節を迎えるのは、10月の半ばから1か月ほど。もちろん年によって1週間前後のずれはありますが、標高の高いところから低いところへと紅葉するため、この時期に行けば、山頂から裾野までのどこかは必ず見頃を迎えているそう。

〈法華院温泉山荘〉に向かう道のりにも、「タデ原湿原」や「坊ガツル」「牧ノ戸峠」など数々のビュースポットが存在するので、温泉を目指してトレッキングを楽しむのもよし、自信のある人は、さらなる美しい光景を目指して先へ進んでもいいでしょう。

体力と好奇心と相談しながら、秋のくじゅうの鮮やかな景色を楽しんでくださいね。

Information
法華院温泉山荘
address:大分県竹田市久住町大字有氏1778番地
tel:090-4980-2810
access:長者原(九重)登山口から徒歩約2時間
営業時間:立ち寄り湯は11:00〜20:00(19:30最終受付)
定休日:なし
入浴料:500円
web:法華院温泉山荘 公式ホームページ

credit text:坂口 ナオ

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