幻のフルーツ「ポポー」を使ったジャムはいかが?
「ポポー」というフルーツをご存知ですか? 北米原産のフルーツで、果実はアケビを思わせる楕円形をしています。さらに、果肉や種の様子が柿に似ており、それらの見た目から日本ではアケビガキとも呼ばれています。戦後には家庭でも広く栽培されていましたが、次第に生産者の数も減り、今では「幻の果実」と言われるように……。
そんなポポーの栽培に18年前から取り組んでいるのが〈湯布院 風曜日〉の代表・村田武さんです。由布市湯布院町の山間の果樹園で栽培したポポーをはじめ、契約農家から厳選して仕入れた梨やかぼすなどの果物を使ってジャムやジュースを製造販売しています。
一人の男性との出会いから始まった“栽培が難しいフルーツ”の生産
気になるポポーの風味について、「洋梨とバナナを合わせたような濃厚な味わいと、カスタードクリームのような食感が特徴です」と村田さん。傷みが早く、生果としての出荷は難しいため、ジャムに加工して販売しています。完熟のやわらかい実のみを厳選し、丁寧に裏ごししてつくられるポポーのジャムは、素材の味を感じられるよう甘さは控えめ。
「素材が持つ本来の味わいを大切にしながら、安心して食べられるものを」という思いでつくられる〈湯布院 風曜日〉の商品は、すべての行程を手作業にこだわり、少量生産されています。その原点となっているのが、村田さんの父・勝さん(別府大学短期大学部名誉教授)の「食」へのこだわりでした。加工品開発に長く携わっていた勝さんが“食品の未来”に危機感を抱いたことをきっかけに、村田さんが工房の立ち上げを決意。
1998年の創業当時は、「人手も、配達に使う車もない状態からのスタートでした」と村田さんは振り返ります。また、同時に果実に関する勉強と仕入れを手探りで行う日々が続き、そんな時にポポーとの出合いがあったと言います。
「大分市吉野の畑に変わった実がなっているのを発見しまして。『この実は何ですか?』と尋ねた相手が、ポポー生産者の川田康さんでした」
その後、しばらくの間は川田さんからポポーを仕入れていた村田さん。高齢により、川田さんが畑に通えなくなったことをきっかけに、由布市で農地の開墾からポポーの栽培を始めることになりました。完熟後の日持ちが短いポポーは、9月中旬から11月上旬にかけて迎える収穫の最盛期には毎日畑に出向いて収穫を行う必要があるほか、風にも弱いため台風対策も必要です。また、栽培当初は期待していた数の実をつけないことも多かったそう。
それでも村田さんは、川田さんの意志を受け継ぎながらポポー栽培に取り組み、ジャムを通してそのおいしさを全国に伝えています。2004年の栽培開始から18年が経過した現在は、農地を3か所に増やし、苗木を含めて1000本ほどを育てるまでになったといいます。
ポポーをはじめとした、〈湯布院 風曜日〉が手がけるジャムは、オンラインのほか全国の百貨店などでも購入することができます。また、土・日曜・祝日のみオープンするカフェ〈茶房 風曜日〉でも商品の購入はもちろん、〈マダム特製ジャムカレー〉などジャムを使ったメニューを味わえます。
ある人にとっては昔懐かしい思い出を呼び起こし、ある人にとっては謎に包まれたミステリアスなフルーツ、ポポー。魅惑の味わいを体験してみてはいかがでしょうか?
web:湯布院 風曜日 公式ホームページ
*価格はすべて税込です。
credit text:柿崎真英