平均年齢71歳。
日出町の〈高平おばちゃんズ〉がつくる
お弁当がおいしすぎる!
大分県の日出町(ひじまち)高平(こうびら)地区を拠点とする女性グループがSNSをにぎわせているという情報を耳にし、真相を探るべく現地へ。
あるときはJR九州の観光列車〈36ぷらす3〉が停車する杵築駅(きつきえき)に、またあるときは、日出町役場で開催されるマルシェなどに神出鬼没で現れて、手づくりのお弁当やお惣菜を販売するのだとか。
おそらくは今、大分県でもっともホットな“おばちゃんたち”と、“幻のお弁当”をご紹介します!
料理上手なメンバー11人が食を通じて地域に貢献する
日出町があるのは、別府市、杵築市、宇佐市(うさし)と隣接する県東部の速見郡。グループの正体は、町内の高平婦人会に所属する11人の女性が集まり、2016年から活動している、その名も〈高平おばちゃんズ〉。高平婦人会そのものは約100年の歴史があるといいます。
60~80代が集まるメンバーの平均年齢は71歳! 皆さん元気はつらつとしていて、常に笑い声が絶えません。代表の末綱智子さん(ともちゃん)は、その活動について次のように話します。
「婦人会の活動の一環として、地域おこし協力隊と社会福祉協議会の支援により発足したのが〈高平おばちゃんズ〉です。メンバー全員が料理上手という強みを生かし、お弁当をつくって高齢者のお宅へ月1回届けたり、JR九州の観光列車〈36ぷらす3〉の乗客に向けて杵築駅のホームでお惣菜やお弁当を販売したりしています」
2020年には、毎年町内で開催される人気イベント「城下町ひじ雛めぐり」に合わせて、地元、大分県立日出総合高等学校の生徒とコラボレーションして、透明カップ入りの“映えるちらし寿司”をつくったことも。
「この年齢になって、高校生と一緒に何かをするということはあまりないので刺激になりますね(笑)。〈高平おばちゃんズ〉の活動を通して、いろいろな年代の人と出会って、コミュニケーションできるのは本当に楽しいし、幸せなことだと思います」
周囲の人々を笑顔にする“元気印”のおばちゃんたち
おばちゃんたちのお弁当づくりの拠点は、のどかな山間の風景が広がる日出町高平地区のコミュニティ—センター。この日、メンバーが集合したのは朝7時頃で、5人が参加しました。お弁当の数や各人の都合により、時間や人数は変動するといいます。
まず、それぞれが持ち寄った野菜(メンバーが家庭菜園でつくったものが大半だとか)を見て、献立を決めることから調理が始まります。お弁当の主役となるのが、これら地元産の野菜を使った色とりどりのお惣菜。例えば、きんぴらごぼうや高菜の白和え、おからのサラダなど。
「みやちゃん、和え物の味見をしてくれる?」
「ちくわは何を詰めて揚げる? のぶちゃん、手が空いたら手伝って」
「この切り干し大根はさっちゃんの家で干したんだったね」
お互いを名前で呼び合う和やかなムードのなか、次々にお惣菜が仕上げられていきます。皆さんの手際のよさは主婦歴ウン十年の賜物。
和える、煮る、炒める、揚げるなど、丁寧に手づくりしたお惣菜が10種類以上、バランスよく並びます。箸休めの漬物に至るまで、おいしさはもちろん、ボリュームも満点でひとつ500円という価格設定には脱帽です。
安くて、おいしくて、神出鬼没。チャーミングなおばちゃんたちが丹精込めてつくるお弁当は決まった店舗での販売はなく、かつ数が限られることから、いつの間にか“幻のお弁当”とも言われるようになりました。
イベントやマルシェへの出店、杵築駅での販売スケジュールなどは、インスタグラムを要チェック。人気が高く、早々に売り切れることもあるのでご注意ください。また、10個以上から注文も受け付けています。
お弁当やお惣菜のおいしさはもちろんのこと、メンバー同士の仲のよさや明るく前向きな姿勢が、出会った人たちを笑顔にする〈高平おばちゃんズ〉。これから先10年、いえ20年も、11人で元気に活動してくださいね。
*価格はすべて税込です。
credit photo:メグミ text:池田祐美子