別府土産に、大分土産も。
美しい雑貨との出合いが待つ
〈SPICA〉
まちの歴史と新しい風が
同居するセレクトショップ
別府市の南部エリアを東西に走る永石(なげし)通り沿い。市内や県内からだけでなく、全国から人が集まる〈SPICA(スピカ)〉は“別府らしさ”をやわらかに体現する雑貨店です。
別府で生まれ育った店主の高野豊寛さんいわく、「別府って、いろんな人や物が出入りする多様性のあるまちだと思うんです。セレクトショップという空間に、偶然性によって隣り合って置かれた物があり、物と人、人と人との新しい出合いが生まれていく。ご縁としか言いようのないつながりを大切にしたいという気持ちでお店をやっています」
古道具と雑貨を商う店としてスタートした店内には、表具師だった高野さんの祖父が使っていた大きな作業台が鎮座し、壁際には衣装や焼きものが収められていた箱、釘箱、りんご箱など、表情豊かな木箱がリズミカルな風景をつくり出しています。
生活雑貨に加え、数段上がった奥には、照明器具や家具、アクセサリーに洋服も。音楽を集めたスペースも心地よく、道沿いに左へつながるスペースでは半月ごとに展覧会が開催されています。
「県外からいらっしゃるお客様にも地元の方たちにも、地元の作家さんをご紹介したいし、実際に手に取っていただけたらうれしいですね」
そう語る高野さんと妻のかおりさんがセレクトし、店に置かれたものの4割ほどが別府を含む大分県内でつくられたものです。亀田大介さんの白い器、松原竜馬&角田淳さんの焼きもの、網中いづるさんのイラストを配したタオルやメモ帳に、網中聖二さんの竹細工。さらに日本各地から、アジアやアフリカからも届く多彩なアイテムが広い空間を満たしています。
「工業製品の佇まいも美しいし、手仕事の物が持つ揺らぎやプリミティブな質感は、インテリアとしてお部屋に持ちこんでみるととてもおもしろいんです。店ではカセットやCDも販売していますが、たとえば旅先で買ったCDを聴きながらまちを巡り歩いたら、その音が旅のBGMとして何年も後に思い出される特別なものになりますよね。音楽に限らず、そういったものを一緒に持ち帰ってもらえたら」
オープンから17年目。いまや全国に名を知られる店となったSPICAの礎には“古道具”という言葉があるといいます。
「『東京骨董スタイル』という別冊太陽の本を開いたら、文筆家の甲斐みのりさんの文章に網中いづるさんの絵が添えられているページがありました。そこで“古道具”という解釈に初めて出合って、自分が好きなものはこれだ! と衝撃を受けたんです。そこから自分が何をしたいのか、どんな店をつくりたいのかが明確になりました。
そんな縁もあり、甲斐みのりさんと網中いづるさん、陶芸家の坂本和歌子さん、東京・代々木上原でセレクトショップ〈the M.B〉を営む坂内麻里子さんの4人展を、2年に1度ここで開催しています」
昨年は「さじ」、その前は「うたうように」、「sweet memories」、「spring hotel」と、毎回テーマやイメージを共有した4人による原画や器、オリジナルやセレクトしたアイテムの展示販売。第1回「spring hotel」のために描かれた網中さんの絵は、現在〈HAJIMARI Beppu〉のロビーラウンジに架けられています。
テイストの異なる姉妹店がオープン
また2022年7月には、永石通りを2分ほど歩いた先に〈puno〉という名の姉妹店が完成しました。
「国内外のアーティストがつくるカセットテープ、レジャーシートや文房具、詩集などを月替わりで、音楽や香りと一緒に提案するスペースです。学生のアルバイトスタッフにも手伝ってもらいながらつくる、ショーケースのような、本店とは違った雰囲気のお店になりました」
punoは土曜日、日曜日(ときどき祝日も)10時からの限定営業。週末や祝日に別府に滞在するなら、SPICAからpunoへも足を延ばしてみることをおすすめします。
*価格はすべて税込です。
credit text:鳥澤光 photo:ただ(ゆかい)