
凹凸の質感にインクのかすれ、
手作業でしか生み出せない印刷物。
〈高山活版社〉が考える「これからの印刷」 | Page 3
「活版印刷の可能性を後世へ」
高山さんの挑戦
活版印刷を復活させたことで、新たなチャレンジを続ける〈高山活版社〉。2015年に活版印刷によるオリジナルステーショナリーブランド〈TAKAYAMA LETTERPRESS〉を発表し、2021年には特殊紙と呼ばれる色や手触りが特徴的な紙を使い、東京の〈中村印刷所〉が開発した水平開き製本を採用したノート〈NOT A NOTE〉を発売しました。
翌年、2022年には大分県立芸術文化短期大学と『暮らしといんさつ展』を共催し、紙と印刷による表現の可能性を探求するなど精力的に活動を続けています。


こうして地道な活動を続けていくうちに、地元・大分県はもちろん、他県からもデザイナーを通して、さまざまな製品の印刷の依頼が増えることに。そんなクリエイターとのやり取りのなかで、高山さんは印刷業界の常識では考えられなかったような新たな気づきを得ることもあると話します。
「『これ、インクののりが悪くて失敗したんです』というものほど、喜んでくれるデザイナーさんもいるんです。『こんなの商品になりませんよ、裏写りしてるんです』と説明しても、その裏写りがおもしろいって商品化してくれたことも。その方には、うちがつくっている伝票の紙もおもしろいようで、『今度この紙で本をつくりたい』と話していたので、近いうちに実現するかもしれません」


大分県で印刷会社を営んで115年。この地で事業を続ける想いを、高山さんはこう話します。
「地元のお客様がお仕事をくださるから、うちはずっと生き残れているんです。これからも大分のお客様を大事にしつつ、活版印刷の立ち合いの〈ともにつくる〉サービスを生かして県外からのお客様も増やしていけたらと思っています」
今年、念願だった活版印刷発祥の地、ドイツでの展示会も予定しているといいます。印刷の技術を後世へつなぐため、〈高山活版社〉の挑戦はつづきます。

credit text:柿崎真英 photo:淺田展弘