温泉を活用した“温泉パプリカ”で成功。
大分県〈タカヒコアグロビジネス
(愛彩ファーム九重)〉が実践する
持続可能なスマート農業
プラント建設業から農業に新規参入。
大地の恵みを生かしてつくる〈温泉パプリカ〉
山々に囲まれた自然豊かな玖珠郡九重町(くすぐんここのえまち)で、若い世代からベテラン世代までがいきいきと働いている大規模農業企業があります。それが、2013年に設立された〈タカヒコアグロビジネス(愛彩ファーム九重)〉。
“おんせん県おおいた”ならではの、温泉(地熱)を活用した温室で、パプリカやトマトの栽培からスタートし、現在はピーマンや白ネギ、原木しいたけも栽培。昨年は地元の経営者から平飼いの養鶏事業を承継するなど、事業や栽培品目を広げているのですが、驚くのはその規模です。最初に立ち上げたトマトとパプリカのガラス温室は、なんと3万2千平米。
「規模感がぶっ飛んでますよね」と笑うのは、タカヒコアグロビジネスの取締役、大久保翔太さん。


「私たちはもともと、農業のプロ集団ではないんです」
タカヒコアグロビジネスは、プラント工事などを手がける建設会社〈タカフジ〉が起こした農業法人。「自然が豊かな大分県で続いてきた魅力ある農業を衰退させてはいけない」という社長の想いから、自社の技術や設備を生かした農業経営に乗り出しました。
燃料費の高騰が農業経営を逼迫させているなかで、目を向けたのが再生可能エネルギー。太陽光や風力も構想にあったそうですが、「大分県に豊富にある温泉水や温泉熱が使えるのでは?」と、自社で暖房設備の研究・開発を始めます。
そして完成したのが、温泉の熱と蒸気で温めた水をハウス内のパイプに通して室内を温める「温泉熱利用型の農業用熱交換システム」。現在ハウス内を暖める暖房は、化石燃料(A重油)の使用はゼロ。CO2も排出しない持続可能なシステムで、特許も取得しています。


この熱交換システムを利用したのが、広大なパプリカハウス。桁外れの規模ですが、「事業計画をしっかり立てないと、農業ってやっぱりうまくいかないんです」と、大久保さん。

ICTなどを活用したスマート農業を実践しながら、農薬も必要最低限しか使用せず栽培しています。
「僕には子どもが4人いますが、きれいでも農薬がたくさんかかった野菜を食べさせたいとは思わない。子どもには、形は不揃いかもしれないけど、できるだけ農薬を使っていない本当にいいものを食べさせたい。そこも突き詰めたいんです」


