温泉を活用した“温泉パプリカ”で成功。
大分県〈タカヒコアグロビジネス
(愛彩ファーム九重)〉が実践する
持続可能なスマート農業 | Page 2
働きやすい環境を整え、新しい農業へ
広大なパプリカハウスでは、女性が活躍中。なかでも多いのが、地元に住む子育て世代です。その理由のひとつが、休みの取りやすさ。「天候に左右されやすい」という農業の不安定さを逆手に取り、学校の行事や子どもの体調不良といった突発的な出来事にも柔軟に対応したところ、就業希望者が口コミで増えていったのだそう。
「農業の仕事はただでさえ不安定なのに、シフトだけがっちり決めても意味がないと思ったんですよ。農業だから急にひとり休んでもなんとかなるんです」と大久保さん。ハウスの中では、子育て世代や海外からの研修生など、20代~80代までが元気に働いています。


環境への影響や栽培方法に加え、当初からこだわっているのが、中間業者などを通さず、取引先へ直接出荷すること。これまでの農業は、自分たちの育てた作物を市場などに出荷するのが一般的。「最終的な販売価格を農家が知らない」という“当たり前”に疑問を感じた大久保さんは、「エンドユーザーにしっかり金額を決めて売っていく」ことに。
販路の開拓や交渉に手間はかかりますが、販売者とコミュニケーションを取ることも、農業にとって欠かせない仕事だと実感しています。
「人と会うことってすごく大事。話したうえでお客さんが欲しがるようなものをつくるからこそ、付加価値がつくんです。直接『おいしかったよ』と言ってもらえれば、自分たちの価値にもつながります」



農業界では“異端”とも捉えられる取り組みですが、ここで得た知識や経験は、地元の農家の方々にも惜しみなく伝えているそう。地元の方との関わりも増えるなかで、九重町や大分県の振興も考えるようになっていったといいます。
大久保さんは、「農業から始めて、みんなとどうつながっていくかを考えていたら、いつの間にか、九重町と大分県をどうやって盛り上げるかに関わっていた」と笑います。
「子どもたちが社会に出たときに、ここで体験したことが生きてくれれば」という想いと、「生まれた縁はいつかつながる」という考えから、小学生から大学生まで、農場見学や体験なども積極的に受け入れています。そして地元の子どもたちには、「大学生になったらアルバイトに来て!」と、伝えているのだとか。
「『地元にバイトがあるから、長期休みに帰って来られる』という子が多いんです。人が集う場所でありたいとも思っています」

