今が旬! 大分のブランドさつまいも〈甘太くん〉の魅力を深堀り
今年も、さつまいものおいしい季節がやって来ました。近年のおいもブームも相まって、以前より多くの品種やブランドを耳にするようになりましたが、「甘太(かんた)くん」という名前は聞いたことがありますか?
甘太くんは、大分独自のブランドかんしょ(さつまいも)。県内で収穫した「べにはるか」という品種のさつまいもを長期間貯蔵するなど、一般的なさつまいもに比べて、ひと手間もふた手間もかけることで生まれる、スイーツのような甘さが魅力です。
今回は、この大分が生んだスペシャルなさつまいもについて、JAおおいた〈甘太くん部会〉の部会長を務める生産者の佐藤勇夫さんにお話をうかがいながら、詳しくご紹介します。
甘太くんができるまで
甘太くんが誕生したのは2008年のこと。大分県産べにはるかをブランド化するため、大分県と農協が連携して2005年から試験栽培が始まりました。主な産地となるのは阿蘇山の噴火による火山灰土が広がる臼杵(うすき)市や、豊後大野(ぶんごおおの)市の丘陵地帯など。
佐藤さんは、甘太くんのおいしさを左右するもっとも重要な工程を土づくりと話します。「なるべく連作をしないよう、土づくりは2年交代で行っています。トラクターで何度も土を耕しながらやわらかくしてね。苗を植え付けてからも、もちろん大事。作物は生きているから、きちんと手入れをしないと育たない。手をかけてこそ、よい芋ができるということですな」。
品質の均一化のために、大分県が培養したウイルスフリー苗を使うのも特徴です。ウイルスフリー苗とは、さつまいもに悪影響を及ぼすウイルスに感染していない健全な苗のことで、ほかの苗と比べて作物の生育がよく、均一な形状に育ちやすいといった特徴があります。
4月の半ばから5月頃にかけて苗の植え付けを行い、収穫の時期を迎えるのは10月頃。収穫後は、温度と湿度が管理された貯蔵庫で40日以上寝かせます。べにはるかは、でんぷんを糖に変える酵素の働きが強い品種のため、熟成させることで糖化が進み、甘味が格段に増すのだそう。
貯蔵期間が終了すると、次に糖度調査が行われます。そこで品質チェックをクリアした畑であること、さらに、〈JA全農おおいた〉を通じて販売されたものだけが「甘太くん」を名乗ることができるのです。
多くの手間をかけてつくられた甘太くんの糖度は、通常のさつまいもの1.5倍! 焼きいもにするとスイーツのような甘みになります。佐藤さんいわく、市販のあんこと同じくらい甘いのだとか。
人気の品種とはどう違う?
“焼きいも界の御三家”とも言えるほど高い人気を誇る品種が、べにはるか、安納芋、シルクスイートです。甘太くんが属するべにはるかは、このふたつの品種とどう違うのでしょうか?
①甘み
・べにはるか:甘さのもととなっているのは麦芽糖と言われています。麦芽糖は水あめの主成分であり、甘酒にも含まれています。そのため、自然な甘さが特徴です。
・安納芋:甘さの秘密は、砂糖と同じ成分であるショ糖。糖度は生の状態で16度ほどあり、加熱するとべにはるかと同程度の40度近くにまで増えます。
・シルクスイート:糖度は8度前後と言われており、すっきりとした上品な甘さが楽しめます。
②食感
・べにはるか:ねっとり、しっとりとした舌触りが特徴。焼きいもにすると、その食感を大いに堪能することができます。
・安納芋:ねっとりとした食感を楽しめます。
・シルクスイート:名前の由来にもなっているシルク(絹)のようになめらかな舌触りが特徴です。
甘太くんのおいしい食べ方
甘太くんの初出荷式は、毎年11月中下旬頃に〈大分市公設地方卸売市場〉で行われます。その後、大分県内をはじめとする九州や関西のスーパーに並びます。それ以外の地域ではお目にかかれないかと思いきや、「甘太くんを卸している関西のスーパーと同系列の店があれば、関東でも甘太くんを見つけることができるかも」と佐藤さん。
甘太くんを一番おいしく味わえる食べ方は、やはり焼きいも。九州の一部のコンビニでも販売されるほか、〈JA全農おおいた〉では冷凍焼きいも〈甘太くん焼いも〉の販売を行っています。
また、〈JA全農おおいた〉は、甘太くんの〈干し芋〉も販売。皮むきからスライス、乾燥作業まで、すべて人の手によってつくられる一品は人気が高く、webショップでは欠品が続いています(2022年10月現在)。
そのほかに、地元の人は甘太くんをどう食べているのでしょうか?
「甘太くんを使ってお菓子をつくっているお店もあるし、きんとんや天ぷらにして売っているお店もある。家庭ではスイートポテトにしたり、お味噌汁に入れて食べたりするところもあるね」と佐藤さん。臼杵市には、甘太くんで焼酎をつくる酒蔵もあると言い、幅広いかたちで楽しまれているようです。
九州や関西の一部地域以外では、まだまだレアな存在の甘太くんですが、お取り寄せなども活用しながら、そのおいしさを一度味わってみてはいかがでしょうか?
web:JAおおいた公式ホームページ
credit text:柿崎真英