
かぼすの生産量、日本一!
大分県の新たなブランド魚「かぼす4兄弟」
かぼすの生産量、日本一を誇る大分県。この特産品をエサにして魚を養殖する試みが大分県内で盛んに行われています。

2010年に誕生した〈かぼすブリ〉を筆頭に、〈かぼすヒラメ〉〈かぼすヒラマサ〉が登場し、2022年には〈かぼすフグ〉の養殖に成功。この4種類を合わせて、「かぼす4兄弟」の愛称で親しまれています。
なかでもブリやヒラメ、フグは今が旬真っ盛り。今回は、そんなかぼす魚の魅力について、大分県漁業協同組合 経済事業部 販売課長の橋本圭介さんにお伺いしながら、ご紹介していきます。
旬を迎える冬しか食べられない〈かぼすブリ〉

古くからブリの養殖が盛んな大分県。豊後水道に面した臼杵(うすき)市や津久見市、佐伯(さいき)市で養殖されるブリは、その恵まれた環境によって、身の締まりや脂ののりがよいと言われています。
そんな質の高いブリをさらにおいしくしようと、2007年から県を中心に開発が始まったのが〈かぼすブリ〉でした。
ブリの切り身はヒラマサやカンパチに比べて血合い部分が早く変色してしまうという課題を、エサに混ぜたかぼすに含まれるポリフェノールやビタミンCなどの抗酸化作用によって改善することができたのです。
〈かぼすブリ〉の血合いは、通常のエサを与えた養殖ブリよりも最大で40時間ほど長く鮮やかな状態が維持されたと言います。

それだけでなく、かぼすの香り成分であるリモネンの効果によって、香りのよい身質とさっぱりとした脂が大好評。
橋本さんは〈かぼすブリ〉の魅力を、「味よし・香りよし・見た目よし。脂がしつこくなく、さっぱりとした味わいが特徴です」と話します。
大分県が生産量日本一を誇る食材のコラボ〈かぼすヒラメ〉

〈かぼすブリ〉が誕生した年と時を同じくして、〈かぼすヒラメ〉も登場しました。養殖ヒラメの生産量が日本一の大分県。そのなかでも、最も生産量の多い佐伯市をはじめ、津久見市でも養殖されています。

えんがわや肝にリモネンが蓄積することによって、身がさっぱりし、旨みがより増しており、「さっぱりとしているのに味に深みがあり、おいしいと好評です」と橋本さん。
こちらは1年を通して出荷されますが、特においしい時期は冬から春にかけてとなります。
かぼすブリの穴を埋めるべく誕生した〈かぼすヒラマサ〉

ブリやカンパチと同じブリ属のヒラマサ。冬限定の出荷となる〈かぼすブリ〉に代わり、春以降も販売できるヒラマサを「かぼすシリーズ」に加えようと、2019年から販売が始まったのが〈かぼすヒラマサ〉です。
その身質は旨みとコクが強く、爽やかな香りを感じられます。また〈かぼすブリ〉同様、血合い部分の変色スピードにも、かぼすの効果が発揮。
橋本さんは、「春から夏にかけて脂がのり、さわやかな風味も味わえると評判です」と話します。
こちらは、〈かぼすブリ〉の出荷がお休みとなる春以降に販売されます。
7年の開発期間を経て養殖に成功した〈かぼすフグ〉

「かぼす4兄弟」の“末っ子”となる〈かぼすフグ〉は、2022年にデビュー。かねてよりトラフグの養殖に力を入れている佐伯市を中心に養殖されています。
全国3位の養殖フグ生産量を誇る大分県が「大分らしい特徴を持ったトラフグをつくりたい!」という想いから、2015年に開発をスタート。7年もの歳月を経て、〈かぼすフグ〉の商品化に成功しました。

その味わいはリモネンの効果によって、「フグ特有の上品な旨みのなかに、かぼすの爽やかな香りと確かなおいしさが感じられます」と橋本さんも太鼓判を押します。
〈かぼすフグ〉は、11月から3月までの間、大分市や佐伯市を中心とした飲食店で味わえるほか、ふるさと納税の返礼品としても提供されています。
「かぼす魚」商品化までの道のり
こうした“四魚四様”の魅力を持つかぼす魚ですが、その商品化までにはさまざまな苦労があったと橋本さんは話します。
「生産者、県(農林水産研究指導センター水産研究部)、市、そして漁協が協力体制のなかで何年も生産試験を行い、科学的根拠をもとに今の添加量や給餌期間を決めています。
かぼすを与えすぎると魚体の成長が悪くなり、逆に与えすぎないとリモネンの数値が出なくなるため、給餌回数やちょうどよい給餌量の数値を見つけるのに一番苦労しました。
かぼす魚を養殖してから販売先や消費者への周知に至るまでのプロセスで、地道な販売促進活動やPR活動をさまざまな場所で行い、何年もかかって今に至っています。
生産者が何年もかけて試行錯誤を繰り返しながら、つくり上げた大分県が誇る新しいブランド魚をご家庭でぜひご賞味ください」
大分県を訪れた際はもちろん、お取り寄せや店頭などで見かけた際は、一度味わってみてはいかがでしょうか?
credit text:柿崎真英