大分銘菓「やせうま」の認知度アップへ。
老舗和菓子店によるユニークな挑戦とは?
大分県の郷土料理「やせうま」を、多くの人に広めたいという想いから生まれた〈豊後銘菓やせうま〉。大分市に本社を置く〈やせうま本舗田口菓子舗〉が半世紀以上に渡って製造販売するこの和菓子を、家庭でも日常的に食べてもらいたいと、地元のシェフとともに〈豊後銘菓やせうま〉を使ったアレンジスイーツを考案し、話題を呼んでいます。
豊後銘菓が海外のスイーツに変身!?
そもそも「やせうま」とは、小麦粉と水を練ってつくった生地を平たい麺状にして茹で、きなこと砂糖をまぶした食べもののこと。その由来は平安時代、貴族の若君が由布市にある妙蓮寺へ参拝に向かう道中、「八瀬(やせ)」という名の乳母につくってもらった「うま(幼児期特有の言い方で食べものを指す言葉)」が、この小麦粉でつくったおやつだったといわれています(諸説あり)。
そんな地元の郷土料理を全国に広めるため、日持ちがして持ち運びもしやすい、ひと口サイズの和菓子にアレンジし、販売しているのが〈やせうま本舗田口菓子舗〉です。〈豊後銘菓やせうま〉と名付けられたそのお菓子は、大豆を自家焙煎・自家製粉してつくったきな粉の餡(あん)を求肥で包んでつくられます。
誕生から半世紀以上に渡って愛され続けてきたこの商品が、この度レストランのシェフの手によって、新たなスイーツに進化! 専務取締役の田口永依⼦さんは、「保存料・着色料はもちろん、小麦粉や卵、乳製品も使わず、オリゴ糖を配合した体に優しい〈豊後銘菓やせうま〉をお土産品としてだけでなく、もっと日常的に家庭でも食べてもらいたい」という想いで、この取り組みを企画しました。
新スイーツの開発を手がけたのは、別府市に店を構えるイタリアンレストラン〈Otto e Sette Oita〉の梯(かけはし)哲哉さん、大分市の日本料理店〈裏⾆⿎ ReZecco〉の中園彰三さん、同じく大分市にあるフレンチレストラン〈Tomo Clover ⼤久保⾷堂〉の⼤久保智尚さんの3人。
オリジナリティを織り交ぜながら、自由にレシピを考案してほしいと依頼されたイタリアンの梯さんがつくり上げたのは、フルーツを砂糖やレモン汁などのシロップでマリネしてつくるイタリアのフルーツポンチ「マチェドニア」からインスピレーションを得た〈苺とやせうまのマチェドニア〉。
続く和食の中園さんは、あんぽ柿を使った〈あんぽ柿とやせうまのクリームチーズ〉を、フレンチの大久保さんは、フランス発祥のスイーツであるタルトとシブースト(パイ生地の上にカスタードなどでつくるクリームと果物を重ね、表面をキャラメリゼしたケーキ)にアレンジした〈銘菓やせうまのタルト〉〈銘菓やせうまのシブースト〉をそれぞれ考案しました。
これらのスイーツは、実際に各店舗でも味わうことができました。現在は提供が終了していますが、Instagramでシェフによる手書きレシピが公開されています。なかには、自宅で簡単につくれるようなお手軽版を紹介しているレシピも。
これまでにないユニークな取り組みについて、お客さんからは「豊後銘菓やせうま、きな粉のアレンジの可能性に驚いた」「フレンチやイタリアンにもなるのか! とてもおいしかった」と好評の声が届いているといいます。
大分県民のソウルフード「やせうま」を独自に進化させた歴史を持つ、老舗菓子店による新たな挑戦。〈豊後銘菓やせうま〉はJR大分駅・別府駅構内や大分空港で購入できるほか、公式サイトからお取り寄せもできるので、ぜひアレンジスイーツづくりを試してみては?
credit text:柿崎真英