温泉だけじゃない。別府南部エリアの文化を発信する宿〈HAJIMARI Beppu〉がオープン!
JR別府駅から歩くこと約10分。別府湾がすぐそばに広がる別府市南部エリアの一角に、暮らすように滞在できる宿〈HAJIMARI Beppu(ハジマリベップ)〉が2023年9月にオープンしました。
別府の文化に出合う“はじまり”の場所として、新たな文化交流の拠点を目指すこの施設。開業にあたり、現代美術家の安部泰輔さんや文筆家の甲斐みのりさん、料理家のワタナベマキさんなど、別府や大分に在住または縁のあるアーティストやクリエイターらが参加したことでも話題になっています。
ゲストや地域、それぞれに“はじまり”のきっかけを与える場所
この宿があるエリアには、地域の暮らしに根付いた共同温泉が多数あり、昔ながらの下町風情と生活文化を感じられるまち並みが広がります。また、戦火を免れた土地ならではの歴史ある建造物や名所も多く残る一方で、少子高齢化による空き家の増加が地域課題となっています。
〈HAJIMARI Beppu〉が入る建物も、長らく空きビルとなっていたひとつでした。以前は酒卸倉庫として使用されていたという建物を、別府市北西部の堀田温泉エリアで営業を行うアートな温泉宿〈GALLERIA MIDOBARU(ガレリア御堂原)〉を設計した建築家の光浦高史さんと、陶芸家の坂本和歌子さんらが中心となって再生。元の佇まいを極力残しながら、安全で居心地のよい空間によみがえらせました。
客室は全6室。約30〜80平方メートルもの広さを活かし、作業スペースや制作スペース、ワークブースなどを設けた部屋を用意して、ワーケーションや滞在制作などでも利用できるようにしています。また、すべての部屋にキッチンやテラスが完備されています。
この宿では、お風呂も食事もお土産も、まちの施設やお店を利用することを推奨しています。ゲストへの特典となる共同温泉のチケット(1泊ごとに1回利用可)を使って地元の人と一緒に湯に浸かったり、同館が現代の湯治スタイルとして提唱する「まち湯治」ルートを紹介してもらい、心と体を癒やしたりして、湯のまち別府を満喫しましょう。
〈HAJIMARI Beppu〉には、そんな魅力ある別府のまちに“浸かる”旅や、暮らしの“はじまり”になる場所として、別府の住人になった気分で、暮らすように滞在し、まちを楽しみながら過ごすことができるようなこだわりが詰まっています。
1階部分は、元倉庫の2層吹抜け空間を活かした、くつろぎと交流の場として開放。「HAJIMARI LOUNGE(ハジマリラウンジ)」と名付けられた、このスペースにはカフェ〈喫茶ゆあみ〉やショップなどが混在し、ゲストはもちろん、地域の人々も自由に利用することができます。
さらに今後は、トークライブや展覧会を実施するオルタナティブスペースとしても定期的に活用される予定だといい、ゲストと地域の人々の交流によって、新たなカルチャーが醸成されていくことが期待されます。
また、同じビルの1階には、坂本和歌子さんによる器と焼き菓子のお店〈うみとじかん〉も営業を行っています。店内に併設された陶芸工房では、ワークショップも体験できますよ。
宿だけで完結するのではなく、周辺のおすすめスポットや「まち湯治」ルートの紹介、温泉チケットの提供などによって、ゲストに別府市南部エリアの魅力を発見してもらうことを目指す〈HAJIMARI Beppu〉。そうして、このまちのファンが増えることで、地域再生への“はじまり”にもつながっていくことでしょう。
credit text:柿崎真英