文化を味わう美食の旅へ出かけよう。「大分サステナブルガストロノミー」
古来より“豊の国”と呼ばれる大分県。2021年に「ユネスコ食文化創造都市」に認定された臼杵市をはじめ、別府市の日本一の温泉を活用した調理法など、各地でその豊かな食文化が現在に受け継がれています。
時代の移り変わりに合わせて変化し続ける、大分の食文化を未来へつなげていくことを目指し、サステナブルな動きを取り入れるレストランも増えています。そんな食への取り組みに関わる人々やお店に着目したのが「大分サステナブルガストロノミー」です。
この記事で紹介するお店をはじめ、大分の食を支える人々の工夫や知恵、そして土地の風土や歴史が凝縮された料理を味わう旅に出かけてみませんか?
由布院でしか食べられない“由布院の料理”を追求する〈ゆふいん 山椒郎〉
「三里四方の食によれば病知らず」。この言葉を教えてくれたのは、〈ゆふいん 山椒郎(さんしょうろう)〉代表の新江憲一さん。先人たちは三里以内で手に入るもの、つまり地域で採れた旬の食材を食べていれば、健康でいられると考えていたそうです。
2013年にこの店をオープンして以来、新江さんは自然環境への配慮や食文化の継承・発展にもつながるようなこの考えをもとに、由布院でしか食べられない“由布院の料理”を追求し続けています。
その土地の料理を食べるということは、その文化や風土を知るということ。食と深く向き合うひとときが、味わう人の感性や心までをも豊かにします。このお店で過ごす時間は、食文化の体験そのものといえるでしょう。
伝統と革新をかけ合わせた新たな食文化を提供〈Otto e Sette Oita〉
国内随一の温泉観光地・別府市の、湯けむりたなびく鉄輪(かんなわ)の温泉街に店を構える〈Otto e Sette Oita(オット エ セッテ オオイタ)〉。できるだけ大分県の食材だけを使うことにこだわり、温泉の蒸気を活用した調理法「地獄蒸し」や、温泉水を駆使した料理を提供する創作イタリアンレストランです。
オーナーシェフの梯哲哉さんは、地獄蒸し釜の温度や圧力、蒸気の量を微調整しながら、食材との無限の組み合わせを試行し、自分の舌で確かめながらメニューを考案。
5時間かけてほろほろに蒸し上げられた豚肉や、温泉水でゆでるパスタなど、大分県の豊かな食材と、大地の恵みである温泉の力を最大限に活用した、鉄輪にしかない伝統と革新をかけ合わせた新しい食文化を体験できます。
大分の食材をフレンチの技術で昇華。家庭的なおもてなしも魅力〈TOMO Clover〉
大分市に店を構えるフレンチレストラン〈TOMO Clover(トモクローバー)〉。海の幸や山の幸、そして卵などに至るまで、県内各地で生産された食材をふんだんに使ったコース料理が味わえると、幅広い層から人気を集めています。
「大分県は自然が豊か。そのなかで、生産者も料理人も自分のつくるものに真剣に向き合い、刺激し合っているんです。道の駅や直売所も品揃えが豊富で、料理人としてはテンションが上がりますね」と、オーナーシェフの大久保智尚さん。
このお店では、来店回数や年代性別にかかわらず、お客様にとって心地よい、家庭的なおもてなしを提供することを信条としています。なかには、ベビーカーで来店する利用客もおり、リクエストがあれば子ども用のメニューを用意することもできるとか。誰にとっても温かい、特別な時間と場所がここにはあります。
竹田の自然を料理で表現する〈アトリエ ドゥ シャンピ〉
四方を山に囲まれた、自然豊かな竹田市の中心部にある〈アトリエ ドゥ シャンピ〉。このお店では、地元で採れた新鮮な野菜やジビエを使った創作料理を味わうことができます。
「いつも手に入るわけではないけれど、燃料まで地元のものを使っているんですよ」と、オーナーシェフの松竹祐介さんは話します。この日に使用していた薪は、松竹さんが自ら地元の農園でせん定してきたブドウの枝なのだそう。
燃料から地産地消に取り組む松竹さんは、地元産のジビエと野菜を組み合わせ、まるで竹田の自然が凝縮されているかのような料理を提供しています。
※この記事は、大分サステナブル・ガストロノミー推進協議会監修のガイドブック『文化を味わう美食旅』を再編集したものです。
credit text:柿崎真英