![〈水処稀荘〉の外観](https://libs.edit.pref.oita.jp/wp/wp-content/uploads/2024/02/15142140/news-columns-suikomareso-ec-l-1080x540.jpg)
天領日田で暮らすように泊まる。
大分の素材と匠の技が詰まった、
一棟貸しの宿〈水処稀荘〉
江戸時代に天領として栄えた大分県日田市。なかでも豆田町は経済や文化の中心地として栄え、現在も商家や土蔵などが多く残るなど、その歴史を色濃く感じさせる場所です。
そんな豆田町で、ひときわ目立つ真っ白な壁の建物が、今回ご紹介する〈水処稀荘(すいこまれそう)〉。ユニークな名前から「何のお店だろう?」と思いきや、実は空き家となっていた古民家を改装した「宿」なのです。
1日1組、1棟貸し切り。
まちの営みを感じながら旅を楽しむ
![豆田町の商店街の景色](https://libs.edit.pref.oita.jp/wp/wp-content/uploads/2024/02/15142142/news-columns-suikomareso-photo1-l.jpg)
“すいこまれそう”というユニークな名前は、オーナーの瀬戸口剛さんと、ディレクターの原茂樹さんの子ども時代の思い出の場所から命名。水郷・日田市で育った友人同士の2人の遊び場だった川のひとつに“エラ”と呼んでいた場所があり、そこは子どもたちにとって神聖な場所だったそうです。
![〈水処稀荘〉の外観](https://libs.edit.pref.oita.jp/wp/wp-content/uploads/2024/02/15142144/news-columns-suikomareso-photo2-l.jpg)
![御幸橋からの豆田町の街並みと花月川の眺め](https://libs.edit.pref.oita.jp/wp/wp-content/uploads/2024/02/15142145/news-columns-suikomareso-photo3-l.jpg)
最大の特長は、「1日1組、1棟貸切」であること。その理由について、「まちの営みを感じながら、暮らすように泊まってほしかったから」と話すのは、宿のオーナーであり、企画から建築まで携わった職人の瀬戸口剛さん。
「旅行に行くと、ホテルや旅館の中だけで過ごして結局どこに行ったのか、わからない……みたいな経験したことありませんか? それってすごくもったいないなと思っていて。だから旅先でも家のように生活して、ここを拠点にまち歩きをしたり九州各地へ遊びに行ったりしてほしいと思ったんです」
![〈水処稀荘〉オーナー・瀬戸口剛さん](https://libs.edit.pref.oita.jp/wp/wp-content/uploads/2024/02/15142147/news-columns-suikomareso-photo4-l.jpg)
宿のコンセプトは「和と洋」、「古いものと新しいもの」の2つのスタイルの融合。日田の素材を活かした和の様式と、ヨーロッパのアンティーク家具などの洋の様式をミックスさせ、特別な空間を演出しています。
![暖簾に描かれた〈水処稀荘〉のロゴマーク](https://libs.edit.pref.oita.jp/wp/wp-content/uploads/2024/02/15142149/news-columns-suikomareso-photo5-l.jpg)
1階はキッチンや浴室を備えた生活スペース、2階にはリラックススペースと寝室を完備。長期滞在やリピーターが多いのが特長で、「まるで我が家のようにくつろげる」と2018年のオープン以来、ひっきりなしにお客さんが訪れているそうです。
そんなこだわりが詰まった〈水処稀荘〉の内部を早速紹介していきましょう。
![キッチンとリビングのテーブルセット](https://libs.edit.pref.oita.jp/wp/wp-content/uploads/2024/02/15142151/news-columns-suikomareso-photo6-l.jpg)
![廊下の窓につけられたステンドグラス](https://libs.edit.pref.oita.jp/wp/wp-content/uploads/2024/02/15142152/news-columns-suikomareso-photo7-l.jpg)
![木目がはっきりと浮かんだ日田杉を使った床板](https://libs.edit.pref.oita.jp/wp/wp-content/uploads/2024/02/15142154/news-columns-suikomareso-photo8-l.jpg)
![〈小鹿田焼〉の手洗い鉢](https://libs.edit.pref.oita.jp/wp/wp-content/uploads/2024/02/15142156/news-columns-suikomareso-photo9-l.jpg)
![〈水処稀荘〉の2階スペース。奥にはベッドが置かれた寝室](https://libs.edit.pref.oita.jp/wp/wp-content/uploads/2024/02/15142158/news-columns-suikomareso-photo10-l.jpg)
![小さな机と座椅子が置かれた「ムの間」と名付けられた和室](https://libs.edit.pref.oita.jp/wp/wp-content/uploads/2024/02/15142159/news-columns-suikomareso-photo11-l.jpg)
![日田の土と藁と川砂が使われた土壁](https://libs.edit.pref.oita.jp/wp/wp-content/uploads/2024/02/15142201/news-columns-suikomareso-photo12-l.jpg)
![和室の小窓から見える豆田町の景色](https://libs.edit.pref.oita.jp/wp/wp-content/uploads/2024/02/15142203/news-columns-suikomareso-photo13-l.jpg)
![ベッドの寝具や壁が深い緑青色で統一された寝室](https://libs.edit.pref.oita.jp/wp/wp-content/uploads/2024/02/15142205/news-columns-suikomareso-photo14-l.jpg)
居心地がよく、思わず「ただいま」と言いたくなる〈水処稀荘〉。そこには、「暮らすように泊まる」を実現するための工夫が随所に詰め込まれています。
日田が誇る野菜や小鹿田焼。
食と文化を通して濃くなる旅の輪郭
旅の醍醐味といえば、やはり食事。その土地の素材や料理を味わうことで、旅の記憶が鮮明に刻まれます。だからこそ、〈水処稀荘〉では宿泊する方には「地元での食事を楽しんでほしい」と瀬戸口さんはいいます。
「近所のスーパーで食材を買って1階のダイニングキッチンで料理をしたり、周辺の飲食店巡りを楽しんだりしてほしいですね」
食事付きコースにすれば宿から徒歩2分ほどの場所にある創作料理と蕎麦の店〈和食工房 新〉での食事が可能。夕食は季節のコース料理、朝食はお弁当が食べられます。
![〈和食工房 新〉の外観](https://libs.edit.pref.oita.jp/wp/wp-content/uploads/2024/02/15142206/news-columns-suikomareso-photo15-l.jpg)
![カウンター席とテーブル席がならぶ〈和食工房 新〉の店内](https://libs.edit.pref.oita.jp/wp/wp-content/uploads/2024/02/15142208/news-columns-suikomareso-photo16-l.jpg)
店主の和田新市さんは、福岡でイタリアンのシェフとして活躍した後、湯布院の人気旅館〈山荘無量塔〉などで和洋折衷料理を学んだ凄腕。その実力は、2018年にミシュランのビブグルマンに選ばれたほどです。
地元農家さんがつくった野菜をふんだんに使ったコース料理や、店主こだわりの手打ち蕎麦、地酒に合う一品料理などが揃います。
![肉料理やサラダなど〈水処稀荘 夜のコース料理〉の4品](https://libs.edit.pref.oita.jp/wp/wp-content/uploads/2024/02/15142210/news-columns-suikomareso-photo17-l.jpg)
![コースメニューの一品、手打ち蕎麦](https://libs.edit.pref.oita.jp/wp/wp-content/uploads/2024/02/15142211/news-columns-suikomareso-photo18-l.jpg)
![デザートとコーヒー](https://libs.edit.pref.oita.jp/wp/wp-content/uploads/2024/02/15142213/news-columns-suikomareso-photo19-l.jpg)
自身も旅好きだという瀬戸口さん。旅先では地元の食事や交流を楽しんだり、反対に何もせずボーッと過ごしたりと、いずれもその場所に溶け込むように過ごすのが旅のスタイル。そうすることで、「観光スポットに行くだけでは味わえない旅の魅力と出合える」といいます。
「旅って、ただ泊まるだけでは分からないことがあると思うんです。その場所の人たちと同じように暮らすように泊まって、やっと知るまちの魅力ってあると思う。だから〈水処稀荘〉もそんな旅のスタイルを実現するための拠点にしてもらえるとうれしいです」
建築素材から職人まで、地元・日田産にこだわる瀬戸口さんが現在とくに力を入れているのが小鹿田焼を活かしたライトです。
宿に併設する事務所兼、インフォメーションカウンター〈bajio(バヒーオ)〉には、吊るすタイプのランプシェードや、持ち運びに便利なフロアライトなど、さまざまなタイプの小鹿田焼ライトが展示されています。
![カフェ&バルのインテリアが随所に残る〈bajio(バヒーオ)〉の内観](https://libs.edit.pref.oita.jp/wp/wp-content/uploads/2024/02/15142215/news-columns-suikomareso-photo20-l.jpg)
![小鹿田焼ランプシェード(大・素焼)](https://libs.edit.pref.oita.jp/wp/wp-content/uploads/2024/02/15142216/news-columns-suikomareso-photo21-l.jpg)
![小鹿田焼ランプシェードの台座](https://libs.edit.pref.oita.jp/wp/wp-content/uploads/2024/02/15142218/news-columns-suikomareso-photo22-l.jpg)
![薪の焼け跡や自然の濃淡がある小鹿田焼ランプシェード](https://libs.edit.pref.oita.jp/wp/wp-content/uploads/2024/02/15142220/news-columns-suikomareso-photo23-l.jpg)
江戸時代から300年以上の歴史をもち、「世界一の民藝」と呼ばれている小鹿田焼。約9軒の窯元が一子相伝で技術を受け継ぎながら、今日まで伝統を守ってきました。〈bajio〉では、ライトのほかに小鹿田焼の器の取り扱いも。どれも現地で買い付けを行っています。
![ゴブレットのような足と台座のついた小鹿田焼のぐい呑み3種](https://libs.edit.pref.oita.jp/wp/wp-content/uploads/2024/02/15142222/news-columns-suikomareso-photo24-l.jpg)
![浅型の小鹿田焼カップ2種](https://libs.edit.pref.oita.jp/wp/wp-content/uploads/2024/02/15142223/news-columns-suikomareso-photo25-l.jpg)
![「水処稀荘」と宿名がデザインされたキーホルダー](https://libs.edit.pref.oita.jp/wp/wp-content/uploads/2024/02/15142225/news-columns-suikomareso-photo26-l.jpg)
「暮らすように泊まる」という新たな旅の提案をしている〈水処稀荘〉。まちに溶け込むように過ごす旅は、きっと特別な時間になるはずです。
*価格はすべて税込です。
credit text:大西マリコ photo:黒川ひろみ