
養鶏場直営の〈とりtoたまご〉
新鮮な卵が魅力あふれるスイーツに
卵型の容器に入ったプリンは、薄黄色。そっとすくって口に運べば、思わず「おいしい」と声がこぼれてしまいます。
城下町竹田の中心部から少し離れた、国道沿い。地元の人たちから「こうとうさま」と呼ばれ親しまれている扇森稲荷(おうぎもりいなり)神社のすぐそばに、2024年10月、養鶏場直営のお菓子工房〈とりtoたまご〉がオープンしました。餌や育て方にもこだわった養鶏場〈グリーンファーム久住〉から届く新鮮な卵から、魅力的なスイーツが続々と生まれています。

味自慢の新鮮卵でつくる
トロリと濃厚なプリン

看板商品は、新鮮な卵だからつくることができるプリン。口溶け滑らかで卵とミルクの味を堪能できる〈久住高原プリン〉、豊後大野市の酒蔵がつくる〈鷹来屋〉の酒粕を使った〈酒粕プリン〉など、種類も豊富です。なかでも人気なのが、〈ご褒美プリン〉。

シュークリームやロールケーキから、フィナンシェやマドレーヌ、パウンドケーキなどの焼き菓子まで。広い店内には目移りするほどたくさんの商品が並んでいますが、養鶏場のスイーツづくりはひとつのプリンから始まりました。
「養鶏場ならではものを」とつくり上げたのが〈ご褒美プリン〉です。シンプルな素材でつくっているため、卵の新鮮さこそがプリンの命です。素材を生かした、実直で真面目なお菓子づくりを続けています。

そんなお菓子をつくっているのは、店内に設けられたオープンな厨房。ガラス張りになっているので、お買い物途中にもパティシエの丁寧な仕事ぶりを見ることができます。
キッチンで忙しそうに働いているのは、後藤啓寿(けいじゅ)シェフパティシエ。いまでは県外のデパートなどでも販売を始めたプリンをはじめ、定番商品を次々につくり出しながら、スフレチーズケーキやカヌレなど、自慢の卵を使った新たなスイーツづくりにも余念がありません。


お菓子選びに夢中になってしまいがちですが、店内には自慢の卵も販売。どれも自慢の味を楽しむことができますが、国産飼料だけを与え、のびのびと自由に平飼いで育てた鶏の卵など、ほかでは買えない貴重なものも。オリジナルのマヨネーズなどもあり、養鶏場直営店ならではのお買い物を楽しめます。


おいしいもので、地域を豊かにしたい

窓辺のカウンター席では、店内で販売するスイーツや、〈コーヒープリン〉にも使われている〈nageia coffee〉の豆で淹れる香りのいいコーヒーなども味わえます。ここでぜひ味わいたいのが、自慢の卵の味をダイレクトに楽しめる「たまごかけごはん」。新鮮な卵はふたつまで、ご飯も1杯お代わりできます。


グリーンファーム久住では、「誇れる卵をもっと育てたい。その卵を使った商品を広めたい」と、お菓子製造を始めました。最初に開いたのは、竹田市総合文化ホール〈グランツたけた〉そばにある〈カフェ カプリセス〉。養鶏場ならではの卵を贅沢に使ったオムライスやカルボナーラが人気です。
しかしスイーツの種類も増え、カフェの一部だけで販売するには手狭に。竹田市は城下町で有名な観光地でもあることから、「観光途中に立ち寄れるお土産屋さんが必要」と、新たにお菓子の製造と販売がメインの、とりtoたまごを立ち上げたのでした。その裏には、地元に根づいた養鶏場として社をあげて「地域を豊かにしていきたい」という想いがあったといいます。

カプリセスでもとりtoたまごでも、手づくりの観光マップがランチョンマット代わり。

「私たちのお店だけではなく、竹田市内のいろいろな場所に足を延ばしてもらいたい。『こんなにいいところがあるんだよ』って、私たちのおすすめの場所を紹介することで、次に竹田へ来ていただける動機づけになればいいな、と思って」と店長の飯田将さん。「もっと竹田を知ってほしい。もっとゆっくりと竹田時間を過ごしてほしい」という思いが込められています。

今後は、「周辺の店のシャッターが閉まっていることが気になっていた」という豊後竹田駅そばにも、新店舗をオープンする予定です。
「私たちは、『田舎だからできない』のではなくて、『田舎だからできること』を知りました。だから、大変な状況でもできることがあると伝えていきたい。地域創生を目指しているんです」と、イキイキとした表情で話してくれる飯田さん。現在は人材育成にも力を入れているそう。

夏からはコーンもオリジナルの「養鶏場のソフトクリーム」が登場予定。構想中だという予約制のパフェも気になります。
また、カプリセスでは、東京のドーナツ店とのコラボも始まるそう。店舗や商品をブラッシュアップしながら、まちも活性化させていく。羽ばたき始めたとりtoたまごの進化から、目が離せません。
*価格はすべて税込です。
credit text:河野恵 photo:木寺紀雄