
別府の定番観光「べっぷ地獄めぐり」を徹底攻略!
効率のいい巡り方から名物グルメ・お土産まで紹介
大分県別府市の定番観光である「べっぷ地獄めぐり」。鉄輪(かんなわ)エリアに集中している5つの地獄と、そこから少し離れた亀川(かめがわ)エリアにあるふたつの地獄の合計7つの地獄を巡るコースとなっています。
この記事では、すべての地獄を効率よく巡る方法をはじめ、各スポットで販売されている名物グルメやお土産情報まで幅広く紹介します。
「地獄」の由来とは?
地獄とは、100℃前後の噴気や熱泥・熱湯などが噴出している温泉噴出口のことをいいます。噴気・沸騰している源泉が全国総数のおよそ10%集まっている、日本でも有数の地熱エリアである別府市。地獄が点在するエリアでも、蒸気や熱湯が自然に湧き出す光景をあちこちで見ることができます。

『豊後風土記』によると、今から1000年以上前には鉄輪・亀川エリアで噴気や熱泥、熱湯などが噴出していたことが記されており、近寄ることもできない土地だったといわれています。そのようなことから、「地獄」と呼ばれるようになり、現在も鉄輪ではその呼び名が使われています。

こうした地球の息吹ともいえる自然現象を安全に観賞し、学習できるよう整えられたものが、これから紹介する7つの地獄なのです。
効率のいい回り方や順番、所要時間は?
鉄輪エリアにある〈海地獄〉〈鬼石坊主地獄〉〈かまど地獄〉〈鬼山地獄〉〈白池(しらいけ)地獄〉の5つの地獄と、亀川エリアにある〈血の池地獄〉と〈龍巻(たつまき)地獄〉のふたつの地獄。

鉄輪エリアに点在する地獄は、半径500メートル以内の範囲にあるため、歩いて回ることができます。一方、亀川エリアにあるふたつの地獄は、鉄輪エリアから約3キロメートル離れています。おすすめは、車かバスを利用した移動ですが、さまざまなパターンでの所要時間を紹介します。
鉄輪エリアの地獄から亀川エリアの地獄までの各種アクセス
1. 徒歩
〈白池地獄〉から〈血の池地獄〉まで約2.3キロメートル。所要時間は30分ほど。
2. 車
鉄輪エリアの各地獄の無料駐車場からJR亀川駅方面へ。所要時間は約5分。亀川エリアの各地獄にも無料駐車場あり。
3. 路線バス
亀の井バス16番に乗車し、血の池地獄前で下車。乗車時間約6分。1時間に約2本運行。
4. タクシー
所要時間は約5分。
5. シェアサイクル
〈海地獄〉〈かまど地獄〉〈龍巻(たつまき)地獄〉にサイクルポートあり。〈かまど地獄〉から〈龍巻地獄〉までの所要時間は約15分。
最も効率よく回れるルートは、鉄輪エリアの5つの地獄を先に見てから、亀川エリアに移動してふたつの地獄を見るという順番。
〈海地獄〉⇨〈鬼石坊主地獄〉⇨〈かまど地獄〉⇨〈鬼山地獄〉⇨〈白池地獄〉⇨〈血の池地獄〉⇨〈龍巻地獄〉
JR別府駅方面から公共交通機関を使う場合、鉄輪行きのバスが多く出ていること、運行ルート的にも亀川エリアより先に到着できることもあり、移動時間や待ち時間を短縮できます。さらに、〈海地獄〉前にバス停があるため、ここを起点として鉄輪エリアにある地獄を見て回るのがおすすめです。

また全体の所要時間は、各地獄の見学時間を約20分とした場合、移動時間も含めると2時間30分以内で回ることができます。
ただし、地獄によってはレストランやお土産屋さんを併設しているところもあるため、じっくり見たいという場合は半日程度の余裕を持ったほうがよさそうです。
入場料やクーポン情報、それぞれの営業時間は?
7つの地獄はそれぞれ入場料がかかり、1か所あたり大人(高校生以上)500円、子ども(小・中学生)250円となっています。また、すべての地獄を見学できる共通観覧券も各地獄で販売されており、そちらは大人(高校生以上)2400円、子ども(小・中学生)1200円となります。共通観覧券の有効期間は、購入日からその翌日までの2日間です。
この共通観覧券が大人200円引き、子ども100円引きになる特別割引券(クーポン)が「べっぷ地獄めぐり」の公式ホームページから印刷できるので、お見逃しなく。
開園時間はすべての地獄で共通の8時から17時まで、年中無休で営業しています。
①地獄で蒸したプリンや卵が食べられる! コバルトブルーの〈海地獄〉

別府の地獄のなかでも最大の規模を誇る〈海地獄〉。約1200年前となる貞観9(867)年の鶴見岳噴火によってできた熱泉のひとつです。温度は約98℃、深さは200メートル以上といわれています。
特徴的なコバルトブルーの色は、温泉中の成分である硫酸鉄の溶解によるもの。海のような色をしていることから、〈海地獄〉という名がつけられました。

〈海地獄〉でできること
こちらには地獄のほかに、ショップやギャラリー、カフェテリア、温室などの施設が数多くあります。
〈SHOP REN(ショップ蓮)〉では、大分県の名産品をはじめ、ここでしか買えないアイテムも販売されています。

ショップの2階にある〈GALLERY AO(ギャラリー青)〉では、地獄にまつわるさまざまな謎や温泉のトリビアなどを学べる展示がずらりと並んでいます。


〈SHOP REN〉のそばには、地獄のお湯を利用した温室があります。ここでは、熱帯性スイレンや日本一の大きさを誇るオオオニバスが育てられています。


地獄の源泉100%かけ流しの足湯は、入場者は誰でも無料で利用することができます。〈SHOP REN〉でタオルを購入して、休憩がてら楽しんでみるのもおすすめです。
〈海地獄〉で食べたいもの
長屋門のそばにある〈CAFETERIA UMI(カフェテリア海)〉には、テーブル席やカウンター席など計68席が用意され、ランチやお茶などさまざまな用途で利用できます。なかでも、〈海地獄〉のお湯で蒸し焼きにした「地獄蒸し焼きプリン」と地獄の熱湯でゆでた「温泉たまご」は食べておきたいメニュー。

〈CAFETERIA UMI〉の隣にある〈極楽饅頭〉で販売している、天然温泉の高熱噴気を利用して蒸したお饅頭もおすすめです。

②地獄のなかで唯一、入浴施設のある〈鬼石坊主地獄〉

8世紀前半に編さんされた『豊後風土記』に登場するほど歴史が古い地獄である〈鬼石坊主地獄〉。明治時代には「新坊主地獄」として観光名所になりましたが、1950年代後半に一時閉鎖。その後、多くの復活を願う声によって、2002年12月に再開園が実現しました。

〈鬼石坊主地獄〉でできること
敷地内には、7つある地獄のなかで唯一となる入浴施設〈鬼石の湯〉があります。木々の緑がまぶしい内湯と、その隣には広々とした露天風呂。露天風呂の脇にある階段を上ると、2階には開放感あふれる展望風呂も。さらには5種類の家族風呂も揃うなど、多様な雰囲気のなかで地獄めぐりの疲れを癒やすことができるでしょう。

また温泉のほかに足湯もあるので、旅のスケジュール次第でさまざまな楽しみ方ができますよ。

〈鬼石坊主地獄〉で食べたいもの
売店〈一休み こびり〉では、多種多様な軽食をいただくことができます。なかでも、おすすめは売店の隣にある地獄窯を使ってつくる地獄蒸し料理。温泉の噴気を利用した、鉄輪ならではの伝統の調理法を用いたアツアツ料理を楽しんでみては。

③のど湯や飲泉もできる〈かまど地獄〉

敷地内に1丁目から6丁目までの6つの地獄がある〈かまど地獄〉。その名の由来は、かつて氏神となる〈八幡竈門(はちまんかまど)神社〉の大祭にお供えするご飯を地獄の噴気で炊いていたことによるといわれています。また、この神社が『鬼滅の刃』の聖地としても知られる縁で、〈かまど地獄〉にも作品のファンが多く訪れています。

〈かまど地獄〉でできること
3丁目と4丁目の間には、極楽1丁目~極楽4丁目と題されたユニークな温泉体験コーナーがあります。極楽1丁目には靴下のまま利用できる「足の岩盤浴」、極楽2丁目には温泉を実際に飲むことができる「飲む温泉」、極楽3丁目には手と足の「蒸し湯」、極楽4丁目には温泉の蒸気を喉や顔に当てて保湿できる「喉の湯」と「顔の湯」があり、全身で温泉を堪能することができます。

また、こちらにも無料で利用できる足湯があります。青い湯の足湯は、別府の地獄のなかでもここだけだそう。

〈かまど地獄〉で食べたいもの
5丁目のそばにある売店では、ここでしか食べられないメニューが数多くあります。なかでも、食べておきたいのは名物の「温泉ぴーたん」と、大人気商品の「醤油ぷりん」。

ピータンと名づけられているものの、実際は地獄蒸しで調理された蒸し卵。蒸気に含まれるアルカリ性が強いことから、ピータンのようなクセのある味に仕上がるのだとか。
④温泉の熱でワニを飼育する〈鬼山地獄〉

鬼山という地名に由来する〈鬼山地獄〉。「ワニ地獄」の愛称でも親しまれているこの施設では、創業者の宇都宮則綱(のりつな)氏が観光客により楽しんでもらうべく、ほかの地獄との差別化を図るため、1923(大正12)年に日本で初めて温泉熱を利用してワニの飼育を開始したことが始まりといわれています。

〈鬼山地獄〉でできること
ワニの餌づけを毎週土・日曜日の10時から見学できます。エサに群がるワニのダイナミックな姿を間近で見てみては?

⑤“生きた化石”と呼ばれる熱帯魚・ピラクルがいる〈白池地獄〉

和風庭園のような趣がある〈白池地獄〉。無色透明の温泉が池に落ちる際、温度と圧力の低下によって自然と青白くなることから、この名がつけられました。最近では、上から地獄を見るとハート型になっていると、若い人を中心に話題を集めています。

〈白池地獄〉でできること
敷地内には、温泉熱を利用して、さまざまな大型の熱帯魚を飼育している熱帯魚館があります。“生きた化石”と呼ばれるピラルクやピラニアなど約20種類を見ることができます。

そのほか、県指定重要文化財の石造物「向原石幢(むこうばるせきどう)」や「国東塔(くにさきとう)」、郷土美術が展示されている「二豊南画堂(にほうなんがどう)」で絵画などを鑑賞することもできます。

⑥軟膏や血の池プリンが名物。地獄絵のような〈血の池地獄〉

日本最古の天然地獄である〈血の池地獄〉。『豊後国風土記』に「赤湯泉」の名で記されており、1300年以上前から存在するといわれています。特徴的な真っ赤な色は、地下の高温・高圧下で自然に化学反応を起こして生じた酸化鉄、酸化マグネシウムなどを含んだ赤い熱泥が地層から噴出し、堆積することで池一面を染めています。

〈血の池地獄〉でできること
この赤い熱泥を主な薬効成分としてつくられているのが「血の池軟膏(なんこう)」です。泥の成分である硫化マグネシウムが慢性皮膚病に効能があるとされ、戦前から受け継がれています。この軟膏は地獄のそばにある専用の売り場で購入することができます。

また、出入口から地獄までをつなぐ道には売店があり、こちらで販売されている「血の池ぷりん」も名物となっています。

こちらにも入場者は誰でも無料で利用できる足湯があります。休憩がてら、足湯に浸かりながら地獄の風景を堪能してみるのもおすすめです。

〈血の池地獄〉で食べたいもの
駐車場に面した場所にあるレストラン〈極楽亭〉では、大分県を中心とした九州産の素材を使った料理が楽しめます。なかでも、イチオシのメニューは「血の池バーガーセット」「地獄の極楽カレー」「野菜がおいしい地獄蒸し御膳」の3品。

ハンバーガーは、牛100%のパティにベーコンや卵を挟んだボリューム満点のひと品です。〈血の池地獄〉をイメージしたトマトソースが味にアクセントを与えます。

カレーは、たっぷりのトマトピューレを使い、〈血の池地獄〉のような赤色に。盛り方も地獄を表現しています。

地獄蒸し御膳は、地獄蒸しで調理した野菜やお肉、卵などをいただける盛りだくさんのメニュー。ヘルシーな料理を食べたいという方におすすめです。

⑦一定の間隔で噴き出す間欠泉〈龍巻地獄〉

〈龍巻地獄〉は、これまでの地獄とは異なる間欠泉タイプ。間欠泉とは、一定の間隔で熱湯と噴気を噴出する温泉のことで、こちらは別府市の天然記念物にも指定されています。噴出の間隔は自然発生によるためバラつきがありますが、大体30~40分ごとに6~10分間ほど。世界の間欠泉のなかでも休止時間が短いことで注目を浴びているとか。

〈龍巻地獄〉で食べたいもの
お土産屋さんに併設されたジェラートショップでは、〈龍巻地獄〉の裏にある果樹園で収穫されたフルーツを使ったジェラートやジュースを購入できます。

「べっぷ地獄めぐり」でできることまとめ
7つの地獄でできることを、ひと目でわかりやすいよう表にまとめました。それぞれの場所でできることを事前に確認して足を運んでみると、よりスムーズに回れるかもしれません。


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*価格はすべて税込です。
credit text:柿崎真英 photo:淺田展弘