ニュース&コラム

大分空港と大分市を約35分でつなぐ! 
16年ぶりに復活した移動手段の発着所
〈ホーバーターミナルおおいた〉を紹介

Posted 2026.01.21
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大分空港と大分市内をつなぐ移動手段のホーバークラフトの定期運航が2025年7月、16年ぶりに復活。ホーバークラフトとは船の一種で、船体の下に備えたエアクッションで飛ぶように走るのが特徴です。最高時速約80キロメートルで移動するため両地点間の所要時間は約35分と、陸路のおよそ半分の時間でアクセスできます。

この大分市側の発着ターミナルとなる〈ホーバーターミナルおおいた〉(通称HOV.OTA/ホボッタ)の設計を手がけたのは、建築家の藤本壮介さん。大阪・関西万博のシンボルとなった「大屋根リング」の設計をはじめ、会場デザインのプロデューサーを務めたことでも知られます。

この記事では、そんな〈ホーバーターミナルおおいた〉の魅力を藤本さんの解説を交えながら詳しく紹介していきます。

別府湾沿岸風景を象徴する「空へと上昇していく外観」に注目

スロープ状の屋根
スロープ状の屋根は歩いて登ることができ、屋上には展望台も備わっています。(c) Masaki Iwata + Sou Fujimoto Architects

〈ホーバーターミナルおおいた〉の外観は、なだらかに空へと向かって上昇する、長さ約150メートルのスロープ状の屋根が特徴的。その姿は、滑走路から離陸していく軌道を想起させる象徴的なデザインです。

この印象的なデザインについて、藤本さんはこう解説します。

「このターミナルは建築でありながら、同時に『道』や『丘』でもあるような存在を目指しました。別府湾に沿って延びる地形の流れ、そしてこの地域特有のゆったりとした風景のなかで、自然な上昇性を持つ大屋根をつくることが最初の出発点です。

構想当初は、①『大分のふたつの玄関口』をつなぐ象徴、②空へと上昇していく沿岸風景の象徴的な表現、③将来の遊歩道へと連続する都市スケールの地形的建築といったコンセプトで、大分の未来像を見据えたスケールを意識した設計を提案していました。

立ち上がった建築は、まさに『体験と風景としてのランドマーク』として、屋根がそのまま別府湾へと視界を開いていく“体験の連なり”をイメージし、形状をまとめています」

上空から見たホーバーターミナルおおいた
「屋根を登るドラマチックな体験」を建築ポイントのひとつとして語ってくれた藤本さん。「斜面を上がるにつれて空だけが見える瞬間があり、やがて別府湾の大パノラマが開く。これは都市スケールと身体スケールが重なる体験をつくることを意図しています」(c) provided by Oita prefecture

また、周辺景観とのバランスについてもこだわったといいます。

「敷地が位置する湾のなかで、単に目立つランドマークとしてではなく、周囲の風景に穏やかになじむ存在となることを意識して計画しました。

将来的に湾全体が一体的に整備される姿を思い描き、近隣の港エリア(かんたん港園)でも使われている再生レンガを舗装材として選定しています。

また、勾配のやわらかな屋根、周辺の建物の高さに寄り添う抑えたボリューム、軒裏や柱に地域材の杉を用いて風景になじませ、港湾エリア全体に広がる将来の遊歩道と自然に連続していくような風景を目指しました」

スロープ状の屋根
(c) provided by Oita prefecture

大分県の原風景である杉林をイメージした屋内スペース

発券エリアや待ち合いスペースなどがあるターミナル内は、大分県産材や地域材を活用した温かな雰囲気が広がります。

内観
建築ポイントのふたつめは「内部に広がる様々な柱の空間」。「待ち合いスペースは天井高8.5〜10メートルの垂直性ある空間に柱が林立し、そこに光や気配が漂う、祝祭性と親密さが同居した空間です」(c) Masaki Iwata + Sou Fujimoto Architects

「『大分県の原風景=杉林』というイメージを、単なるモチーフとして利用するのではなく、木々に囲まれ、木々と共に生活するような、空間の質そのものを豊かにするコンセプトでつくり上げました。

立ち並ぶ柱のリズムや、高い天井から落ちる柔らかな光、幹の合間から風景が抜けていく開放感、歩き回れる“散策性”と多様な居場所の連なりなど、これらが重なって、森の中のようでありながら新しいターミナル特有の軽やかさを持つ空間を目指しました」と藤本さん。

内観
(c) Nacása & Partners

初めて訪れた人でも迷わずに目的地にたどり着ける「素直な動線」

屋根下
3つめの建築ポイントは「この海・都市・建築が連続する構え」です。「屋根下の空間は、屋外の広場やバス停、駐輪場まで一体化され、建築と都市とランドスケープが溶け合うつくりとなっています」(c) Masaki Iwata + Sou Fujimoto Architects

デザイン性を保ちながら、訪れた人にやさしいつくりも魅力です。動線の工夫については、このように語っています。

「初めて訪れた人でも迷わずに目的地にたどり着ける『素直な動線』を最優先にしています。まずは、公共交通と一般車両の分離です。バス・タクシーと一般車両の動線を分けることで、安全性と利便性を確保しました。

ふたつめは、大屋根による一体的な乗り換え体験。海沿いのホーバー乗降口から待ち合いスペース、バス停、駐車場までをひとつの大屋根で包み、雨風を避けつつ、視線が自然に目的地へ導かれる構成としています。

そして、3つめが発券・待ち合い・乗船までの一本道の主動線。発券から待ち合い、そしてホーバー乗船とスムーズにつながるよう、広い待ち合いと見通しのよさによって、わかりやすい移動を実現しました。

最後が、展望台としてだけではなく、津波からの避難スペースとしての大屋根です。大屋根のスロープは、日常では展望台へ上がる立体動線、海辺を眺める散策路として利用され、津波が襲来するような非常時には、あそこへ登れば助かるとひと目見てわかるような避難経路として計画しています」

ライトアップされた屋根下
(c) provided by Oita prefecture

そんな建築デザインへのこだわりが詰まった〈ホーバーターミナルおおいた〉は、大分市の新たなランドマークとしても注目したいもの。藤本さんは、ホーバークラフトの利用客だけでなく、近隣住民などにも日常生活のなかで気軽に使ってほしいと話します。

「夕暮れを眺めながら海辺で過ごしたり、散歩やサイクリングの途中に立ち寄ったり、地域イベントやマルシェに参加したり、大分の食材や工芸に触れたり、展望台から別府湾やホーバーの発着風景を楽しんだりと、大分の魅力と自然を感じられる新しい公共空間として、日常の延長線上で自由に使っていただける場所になれば嬉しいです」

Information
ホーバーターミナルおおいた(HOV.OTA)
address:大分県大分市駄原2905-11
tel:097-547-7171(受付対応時間7:30~18:00)
access:JR西大分駅から車で約5分
乗車料金:大人2000円(アプリ決済)、2500円(現地決済)、小児(3歳~小学生)1000円(アプリ決済)、1250円(現地決済)
便数:1日4往復(今後増便予定)※土日祝のみ別府湾周遊も運航中
web:ホーバードライブ
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