温泉の概念が変わる!
シュワシュワ気泡が楽しい長湯温泉で
宇賀なつみが整う旅
大分県の温泉地といえば別府や由布院が有名ですが、実はマニアも一目置く湯元がほかにもあります。
竹田市にある長湯温泉は、世界屈指の炭酸泉の湧出地。体中を気泡が包み込むほどの高濃度の天然炭酸泉で知られます。40度前後のぬるい温度のため、長湯温泉という名前のとおり、熱めの温泉が苦手な人でも長くゆったり浸かれるのです。
以前から「長湯温泉に行きたい!」と話していたフリーアナウンサーの宇賀なつみさん。今回は、古い着物を利活用して、“着物を着る楽しさ”を普及する〈竹田着物部〉にご協力いただき、大判の花柄が美しい着物姿で長湯温泉を巡りました。
温泉の概念が変わる!
おとぎ話の世界観の中で銀色の泡を楽しむ〈ラムネ温泉館〉
「長湯温泉を訪れたら、絶対に立ち寄ると決めていたんです」
嬉々としてそう話す宇賀さんが訪れたのは、三角屋根の先端から松の木がのぞく、ユニークな外観の〈ラムネ温泉館〉。漆喰の白と焼き杉の黒が織りなすストライプ柄が印象的な建物は、自然と調和した独創的な建築で知られる建築家・建築史家の藤森照信さんが手がけました。
「昔ながらのちょっとひなびた温泉も味わい深くて大好きですが、それとはまた違った趣きで、モダンだけど懐かしさもある。不思議な気持ちになる空間ですね」と宇賀さん。
実は、ふたつの源泉がある〈ラムネ温泉館〉。ひとつは大浴場の露天にひかれているラムネ温泉(炭酸泉)、もうひとつが内湯で体験できるにごり湯(炭酸水素塩泉)です。3室ある家族風呂には、それぞれふたつの温泉がひかれています。
ラムネ温泉の由来は、時代小説『鞍馬天狗』で知られる文豪・大佛次郎(おさらぎじろう)の言葉から。長湯温泉を訪れた際に体験した、体にまとわりつくきめ細かい気泡を「まるでラムネのよう」と紀行文の中で書いたことからきています。
それもそのはず、ラムネ温泉の炭酸ガス含有量は1400 PPMと長湯温泉内でもっとも多く、いわゆる炭酸入浴剤の15倍ほどにあたるといいます。一般的な炭酸泉が250 PPM、高濃度炭酸泉でも1000 PPMなので、その含有量の多さは格別です。
さらに一般的な温泉の温度は40度前後ですが、ラムネ温泉は32度とかなりのぬる湯。体温より低いものの、炭酸効果により血行が促進され、体の芯からぽかぽか温まります。
「弾力のある泡だから、なかなか消えないんです。それにとってもぬるくて驚きました。私はゆっくり長く浸かりたい派だから、これくらいがちょうどいいかもしれません」と宇賀さん。
浅めの浴槽には銀色の泡が広がっており、シュワシュワと弾ける音がかすかに聞こえます。
浴槽のレイアウトがユニークな内湯のにごり湯はミネラル分が豊富な炭酸泉。その名のとおり、茶色く濁った湯が特徴でこちらも源泉掛け流しです。
温度は41度で、炭酸ガス含有量は温度の割に高くて1010 PPM。露天のラムネ温泉と交互に入ることで血流がよくなり、高い温浴効果が期待できるといいます。
ラムネ温泉初体験の宇賀さんは、この不思議な空間と温泉にすっかり魅了された様子。館長の首藤匡輔さんに、このおとぎ話のような世界観の秘密について教えてもらいました。
「建築家の藤森さんに、山深い竹田の景観にマッチした外観をデザインしてもらいました。脱衣所から内湯への入口は茶室の“にじり口”をイメージしていて、屈んで入ることで、より開放感を感じてもらえるように。また屋根は銅板でできており、雨風にさらされ月日を重ねることで、少しずつ錆びていく過程の変化を楽しめますし、経年変化によってだんだん景観に馴染んでくるんですよ」
館内には、いたるところに〈ラムネ温泉館〉を象徴するかわいいゆるキャラが。イラストレーターの南伸坊さんが、ラムネ温泉に入った時の脱力感をイメージして描いたそうです。
2階には美術館が併設されており、長湯温泉を訪れた文人や縁が深い作家の作品が展示されています。
「いきなり外に出て湯冷めしないように、館内でゆっくりアートを楽しめるのがいいですね」と宇賀さん。
宇賀さんがずっと訪れてみたかった〈ラムネ温泉館〉。
「なんでもっと早く来なかったんだろうと思うくらい、とてもすてきな温泉でした。顔をお湯につけるとツルツルになったので、ピーリング効果もあるのかな。これはハマります!」と大満足の様子でした。