まもなく開園70年を迎える〈高崎山自然動物園〉の魅力を深堀り! | Page 2
市長のアイデアから生まれた「自然教育の場」
1953年3月、当時の大分市長だった上田保さんのアイデアによって開園した〈高崎山自然動物園〉。四季折々の美しい景色が楽しめる自然豊かな高崎山は、同じ年に瀬戸内海国立公園特別保護区にも指定されています。この山には、江戸時代からサルが生息していたことが当時の資料からわかっています。
高崎山に生息するサルたちは、次第に高崎山周辺の農作物などに被害を及ぼすように。そこで市長は、サルを1か所に集めることで、被害防止と観光資源につなげようと考えました。
餌付け用のリンゴを用意し、ホラ貝で呼び寄せるという最初の作戦は失敗に終わったものの、高崎山の麓にある寺の和尚のアイデアを参考にサツマイモに変えたところ、人間を警戒していたサルたちが徐々に寄せ場に集まるようになったと言います。
今では、餌付けの時間になるとどこからともなく集まり、人間とよい関係を築きながら共生しているサル。30分ごとの小麦、そして1日2回のイモ取り競争は同園の一番の見どころです。
餌付けの時間に、人間が〈サル寄せ場〉近くの柵の前で足を開き、横1列に並んでいるとサルが股の間をくぐることもあるようです。くぐったサルの数が多いほど、多くの幸せが舞い込んでくるという言い伝えもあるのだとか。
そんな言い伝えはほかにも。〈おサルの銅像〉におさい銭をあげて頭をなでたカップルは円満でいられる、サルの横顔に見える「猿岩石」を見つけることができたら幸せになれるといったものがあります。
国道10号線を渡った海側のエリアには、園の歴史やニホンザルについて学べる施設〈おさる館〉があります。1階にはカフェやお土産店、2階には飲食も可能なフリースペース、3階にはキッズコーナーがあるので、休憩場所にもぴったりです。
開園70年を間近に控え、同園では毎週土曜日にさまざまなイベントを開催。サルとの記念撮影をかけたジャンケン大会や子ども限定のクイズ大会など、週ごとに異なるイベントを実施し、訪れるお客さんとともに、節目の年に向けてのカウントダウンを盛り上げています。
「サルひと筋で開園から70年を迎える〈高崎山自然動物園〉は、身近でサルの生態に触れることのできる貴重な自然教育の場です。これまで当園を愛し、支えていただいた方々に感謝するとともに、後世に引き継いでいけるようこれからも努めていきたいと思います」と、大分市高崎山管理センターの原田佑一郎さんは感謝と意気込みを語ります。
最近では、サルのトレーディングカードがSNSで話題になるなど、さまざまなかたちで魅力を発信している同園。子ザルの成長や群れの順位争いなどはもちろん、今後の取り組みにも注目が集まりそうです。
credit text:柿崎真英