温泉を体感しながら学べる〈地獄温泉ミュージアム〉が別府鉄輪にオープン
別府観光の人気コースである「べっぷ地獄めぐり」。地獄とは、100℃前後の噴気や熱泥・熱湯などが噴出している温泉噴出口のことを言い、コバルトブルーの色をした〈海地獄〉や真っ赤な〈血の池地獄〉などが有名です。
かつて、そんな「地獄」のひとつに数えられていた〈金龍地獄〉(2009年閉館)の跡地に、新たなスポットが2022年12月にオープンしました。その名も〈地獄温泉ミュージアム〉。雨として天から降った水が温泉水になるまでの地中の旅を来場者自身が追体験し、自然の恵みと人々の営みの循環を楽しみながら学べる施設となっています。
鉄輪(かんなわ)の新名所が誕生!
2階建ての館内は、主に4つの部屋で構成。地中の旅の第1段階となる「SCENE 1」では、地上に降り注いだ雨水が地面に染み込んでいき、温泉水ができるまでの約50年の旅を床面プロジェクションマッピングで紹介します。
続いて「SCENE 2」では、雨水が複雑な地層を進みながら、ミネラルやイオンといったさまざまな温泉成分と融合していく世界を表現した空間が広がります。約50年もの歳月をかけて温泉水になっていく様子は、入り組んだ迷路とレースや鏡などを用いたアート性の高い演出で体感することができます。
2階へ進むと、温泉と人・文化との出合いを学べる「SCENE 3」へと続きます。ここでは、鉄輪における地獄の文化をはじめとした別府温泉の歴史を、浴場の中にいるようなデザインのシアターでたどります。
最後の部屋となる「SCENE 4」は、地獄文化の発展や新たな取り組みを継続的に発信していく企画展示コーナーとなっています。2023年11月30日までは、デザイナーの廣川玉枝さんによる『地嶽祭展 –地嶽ではぐくむ、芸術の源泉–』が展示されています。
2021年から2022年にかけて、別府市で開催された個展形式の芸術祭『in BEPPU』のアーティストとして招聘された廣川さんが、同地の新たな祭として創造した〈地嶽祭神事奉納〉。地獄文化の起源でもある自然の恵みに感謝を捧げ、ポジティブな未来の訪れを願う想いが込められた祭で、そこで使用された神々の衣装をはじめ、廣川さんが風土のリサーチのために収集した骨董品や絵葉書などを鑑賞することができます。
このほか、1階にはカフェ兼ショップ〈50CAFE〉を併設。物販ブースでは、別府駅前の老舗文具店〈明石文昭堂〉が手がけるオリジナルインクやポストカードといった雑貨から、ご当地のお菓子やジャムなどの食品まで、お土産にぴったりの商品が並びます。
飲食ブースでは、神奈川県辻堂のスペシャルティコーヒーショップ〈27 COFFEE ROASTERS〉のオーナー兼マスター葛西甲乙さんと提携し取り寄せた、シングルオリジンや季節のブレンドを提供しています。
また、神奈川県大和市にあるパティスリー〈MAISON GIVRÉE(メゾン ジブレー)〉の江森宏之シェフらとコラボレーションしたこだわりのソフトクリームや、別府市で活動するシェフ3名と共同開発した完全無化調・無添加の温泉ソーセージを使用したオリジナルホットドッグなども味わうことができます。
中庭に出れば、〈金龍地獄〉時代から続く噴気と源泉を間近で見ることも。すぐそばには、鉄輪の大衆劇場兼温泉旅館〈ヤングセンター〉(2020年閉館)から移設されたステンドグラスも展示されています。2023年2月3日からは3日間限定で、光と反射を駆使した斬新な空間作品を創り出すインスタレーションアート集団〈ミラーボーラー〉とコラボレーションしたアートイベントも開催。
これまで広く知られることのなかった別府鉄輪の地域や温泉の歴史を体感しながら学べる〈地獄温泉ミュージアム〉。別府観光の際は、ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか?
*価格はすべて税込です。
credit text:柿崎真英