砂湯や蒸し湯も!
大分の温泉名人が教える【別府湾エリア】の
個性豊かな立ち寄り湯12選《前編》
日本有数の温泉地としても知られる大分県。湯めぐり旅行をしたいと思っても、数が多すぎて迷ってしまいますよね。そこで、温泉にまつわる難関試験を突破し、〈温泉マイスター〉の資格をもつ温泉名人が、ふらっと立ち寄れる日帰り温泉をエリア毎にセレクト。今回は、レジャー施設や美術館、情緒ある城下町などが集結した観光にぴったりな【別府湾エリア】の前編として、別府市にある名湯を12か所ご紹介します。
※掲載情報は2021年1月時点の情報です。新型コロナウイルスの影響で営業時間、料金などが異なる場合があります。詳しくは施設の公式HPなどでご確認ください。
関連記事|海を一望する温泉や美肌湯も! 大分の温泉名人が教える【別府湾エリア】の立ち寄り湯5選《後編》
個性豊かな8つの温泉郷がある別府市
今回ご紹介する別府市は、「おんせん県おおいた」を代表する温泉地。「別府温泉」の名で全国的にも有名な地域で、源泉数、総湧出量ともに日本一を誇っています。別府市内には湯煙があちらこちらから立ち上り、その景観はまさに圧巻! また、県内でも珍しい砂湯や泥湯などのユニークな温泉も楽しめます。
別府・明礬(みょうばん)・鉄輪(かんなわ)・浜脇・亀川・観海寺(かんかいじ)・堀田(ほりた)・柴石(しばせき)の個性豊かな8つの温泉郷があり、総称して「別府八湯(べっぷはっとう)」と呼ばれています。全10種類ある泉質のうち7種類が存在する非常に珍しい温泉地であることから、世界的にも注目されている別府温泉。また、異なる泉質を組み合わせて入浴することで相乗効果が期待される「機能温泉浴」という入浴方法を楽しむことができます。
別府温泉のシンボル「竹瓦温泉」
風情たっぷり、唐破風(からはふ)造りの屋根と昭和初期の面影を残す、別府のシンボル的名湯。「湯べりに腰掛けてはいけない」など、独特の温泉マナーを学べる歴史ある共同湯として君臨。湯の温度はかなり熱めですが、安易に加水すると叱られる(!?)試練の別府風呂です。個性ある3つの源泉が男女湯と砂湯に用いられ、湯は一流! 砂湯も人気で順番待ちが発生することもあるので、時間に余裕をもって行くのがおすすめです。湯上りに風格ある玄関で、ぜひ記念写真を撮りましょう。
四季折々の風情を感じる「夢幻の里 春夏秋冬」
春には満開の桜、夏は豊かな青葉やせせらぎを舞う幻想的なホタル、秋には色づく山のもみじ、そして冬は雪見露天も。四季を通じてその姿をかえる妙を楽しめます。高温蒸気を活かし、見事な湯を提供するオーナー夫婦の技にもふれてみてくださいね。
「豊前屋旅館」で自家源泉の湯を堪能
先の熊本・大分地震での被災から見事に復活。昭和30年代から続く、こじんまりとした旅館の内湯にこんこんと湧く自家源泉の名湯です。ただよう硫化水素臭とパウダー状の湯の花舞う白濁の湯は、大地の恵みそのもの。自然造成の不思議な湯のパワーを感じてみませんか?
2つの泉質に浸かれる昭和レトロな「山田別荘」
昭和初期の木造旅館は、戦前から残る別府別荘文化で外国人に人気。露天もさながらですが、内湯女湯は昔ながらのタイル張りが美しく、レトロそのもので非常におすすめです。敷地内に2つの源泉があり、露天と内湯で違った泉質の温泉に入れます。泡切れよく湯あがりすっきり爽快! 毎日でも入りたくなるほどの心地よさです。
江戸期の石造りが残る地元の名泉「照湯」
戦国期の伝統が残る古の名湯が別府にあります。混浴のジモ泉(共同湯)として継承され、永く地域住民のみ利用していた謎の湯です。2003年改築され男女の湯舟ができ、一般に提供されました。殿様の湯には江戸期の石造りが要所に残り、ロマンの香りがあふれています。
海を一望できる開放感! 「別府温泉 杉乃井ホテル(棚湯)」
別府市内を一望する観海寺温泉にある大眺望の露天風呂。遠景には別府湾、海原の彼方に国東半島、さらには四国の佐田岬までを見渡しながら浸かる温泉は圧倒的なスケールと開放感があります。家族やカップルで一緒に楽しめる水着着用の屋外型温泉、ザ アクア ガーデンもおすすめですよ。
蒸し風呂と露天風呂の交互浴が楽しい「柴石温泉」
滝湯めざして柴石川を裸同然で行き来する光景はなくなりましたが、古くからの湯治場情緒が感じられます。蒸気蒸し風呂とぬるめの露天風呂の交互浴が柴石流。きっと温泉好きなら、常連客との会話も弾むはずです。
石菖の香りに包まれる「鉄輪むし湯」で心地よい汗を
鉄輪温泉街にある蒸し湯です。蒸し湯は風呂の原点です。ちいさな木製のドアを開けて、天井の低い石組みの蒸し風呂に寝転がる。敷き詰められた石菖(せきしょう)の香りで深呼吸し、全身から噴き出す汗を楽しみながらじっと我慢します。おそってくる熱気と眠気の心地よさがたまりません。
ノスタルジーに浸れる「四の湯温泉」
「四の湯温泉」は共同湯の代表格です。半地下の階段を下ると広々空間に楕円湯舟。うす緑色のペンキがいかにも別府共同湯といった雰囲気です。ぬるめで優しいお湯はいつまでも浸かっていたい! 忘れつつある良き時代を思い起こしてタイムスリップできます。
加水厳禁! シンプルを極めた「鉄輪すじ湯」
湯けむり立ちのぼる鉄輪温泉を散策しながら見つける、こじんまりとした湯小屋。療養の観点で利用する湯治スタイルを継承し、湧いてきたお湯を湯舟に溜めて浸かるというシンプルを極めた温泉です。水道がないため100℃近い湯を独自冷却で提供し、シャンプーや石鹸は使用不可。熱めの湯に浸かると、ぐっと効き目がありそうな気がします。
海の風を感じられる「別府海浜砂湯」
さまざまな温泉の楽しみ方のなかでも、インパクトがある砂湯! 頭部以外はズッシリとぽかぽか砂にうずもれて、別府湾をそよぐ風を感じながらの珍体験が楽しめます。「熱い、重い、動けない」これもまた砂かけさんの絶妙な技に身を任せるがよし。
砂湯、蒸し湯、地獄蒸しも体験できる「ひょうたん温泉」
鉄輪温泉を代表するかけ流し温泉天国。100℃近い源泉を竹の冷却装置「湯雨竹(ゆめたけ)」で適温にするこだわりで湯の個性が際立ちます。弱酸性の食塩泉はまるで化粧水。瀧湯、砂湯、蒸し湯、貸切湯や地獄蒸しの料理体験など、別府温泉の魅力を色んな角度から堪能できます。
温泉名人のこだわり! 温泉道
Profile 土谷 雄一名人
温泉マイスター、九州温泉道選定委員、温泉観光士、別府八湯温泉道初代名誉名人。季節や時間によって表情を変える温泉の魅力、野湯や個人湯を探究。
私が別府温泉探究を始めて40年以上。家々の温泉、町湯に集い暮らす情景に魅せられ幾千もの湯がひしめくまちを歩き、独特の温泉文化の存在に驚きました。88湯スタンプラリーがスタートして20年、88巡目名人も近い。だがやはり根底にある、秘められた幾千もの温泉たちと出合う喜びが、限りない温泉の道を探究する力となっています。
別府湾エリアは、砂湯やむし湯などの個性的な温泉も体感でき、あなたの中にある温泉の世界をぐっと広げてくれるはず。また同エリアは観光スポットと温泉スポットがぎゅっと集まっていて、何度遊びにいっても飽きることがありません。色んな場所を巡りたい欲張りにもぴったり! ぜひ、お出かけプランに組み込んでみて。
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※この記事は、斉藤雅樹(東海大学海洋学部教授)さん監修の『おおいた おんせんガイドブック』を再編集したものです。