一度は食べてみたい!
佐伯市のふたりの漁師が生んだブランド魚〈美人鰤〉
冬に旬を迎えるブリ。毎年11月から3月頃にかけて出荷される「寒ブリ」は、脂がよくのっていることで知られます。
大分県随一の水産都市である佐伯(さいき)市の沿岸のまち、西野浦で生まれた〈美人鰤(びじんぶり)〉も、まさに今が食べ頃。古くから養殖業が盛んなこのまちで育ったふたりの漁師が地域と漁業の活性化や、代々続く養殖技術の継承を目指し、生産に挑んだブランドブリです。その特徴や魅力について、詳しく紹介していきます!
佐伯市の養殖技術と山口県の酒粕でつくり上げるブランド魚
近年、さまざまなブランドブリが全国で生産されており、大分県でも特産のかぼすをエサに混ぜて育てた〈かぼすブリ〉が有名です。そんな群雄割拠のブランドブリ市場に現れた美人鰤の特徴は、「モジャコ」と呼ばれるブリの稚魚をとる漁から行っていること。
佐伯市の漁師町には、古くからモジャコ漁師たちが漁に出てとってきたモジャコを養殖するという技術が根づいています。美人鰤の生産者である〈村松水産〉の村松教雄(のりお)さん、〈浪井マルミ水産〉の浪井満洋(みちひろ)さんも、毎年モジャコ漁が解禁される4月になると、船で漁に出ます。
とったモジャコは、岸に広がるいけすへ移し、出荷できる大きさになるまで育てます。エサにも特徴があり、山口県萩市の〈澄川酒造場〉が手がける日本酒〈東洋美人〉の酒粕を混ぜて与えています。美人鰤というネーミングは、このお酒の名前にあやかってつけられたほど、村松さんたちにとっては大きな出合いでした。
餌づけから慣らして育てたモジャコは、サイズごとにいけすを移っていき、最終的には西野浦湾を出た外海にあるいけすへ移されます。1年半から2年もの歳月をかけ、5キロほどの大きさに育ったブリが美人鰤として出荷されるのです。
日本酒の酒粕で育った美人鰤は、脂がのっているのにあっさりとしていて、食べ飽きない味わいと評判に。2018年の初お披露目から、じわじわと口コミが広がり、レストランや有名旅館から問い合わせが入るほか、取り扱うブリをすべて美人鰤に切り替えた料理店まで現れるほどとなりました。
西野浦港から車で10分ほどの場所にある〈道の駅かまえ Buri Laboratory〉にも、美人鰤が並びます。併設するレストラン〈海鳴り亭〉では、新鮮な美人鰤を使った絶品料理も味わえますよ。
西野浦の伝統を守りながら、漁業の未来に「風穴を開ける」べく立ち上がったふたりの漁師が、試行錯誤を繰り返してつくり上げた美人鰤。養殖ブリの概念を覆すおいしさは日本だけでなく、世界の人々をも驚かせることでしょう。名実ともに価値を高め続けるブランドブリ、一度味わってみてはいかがですか?
web:美人鰤 公式ホームページ
*価格はすべて税込です。
credit text:柿崎真英