急須で入れたお茶
ニュース&コラム

日本茶をもっと身近に! 
中津市で130年続く老舗茶店〈丹羽茶舗〉の挑戦

Posted 2024.04.12
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煎茶のパッケージ
思わず手に取ってみたくなるようなデザイン。

ゆるくて可愛らしいイラストが目を引くパッケージ。これは、中津市で1893(明治26)年から続く老舗のお茶屋さん〈丹羽茶舗(にわちゃほ)〉が販売している商品です。従来の日本茶のイメージを覆すデザインを施した商品は、SNSでも多くの人の心をつかんでいます。

そんな時代に合わせた商品デザインへと舵を切ったのは、5代目店主の丹羽真一さん。そこで今回は、約130年という長い歴史を持ちながら、さまざまな取り組みで日本茶の文化や魅力を後世に伝えている〈丹羽茶舗〉について、丹羽さんにお話を伺います。

お茶屋さんを若い世代にも親しみやすく

JR中津駅から徒歩10分ほどの場所にある〈丹羽茶舗〉。立派な佇まいの日本家屋からも、この店が紡いできた歴史の長さを感じさせられます。店内には、京都府宇治市のお茶と福岡県八女市で栽培されたお茶をはじめ、真一さんの代から販売を始めたオリジナルのお茶などが並びます。

本店の外観
中津市にある本店。店内を改装するなどして、大切に受け継いでいます。

日本茶の商品だけでも50種類以上を取り扱うこの店で、一番の人気を誇るのがオリジナルブレンドの煎茶〈甘露(かんろ)〉です。布で覆いをして育てた「かぶせ茶」と呼ばれる茶葉を使っており、甘みとコクのある味わいが楽しめると言います。

甘露のパッケージ
〈煎茶 甘露〉1080円。覆い香(おおいか)という、かぶせ茶ならではの香りも魅力。
ほうじ茶のパッケージ
最近は、大分県産の茶葉がブレンドされている〈ほうじ茶〉648円も人気を集めていると言います。

オリジナル商品の開発にも積極的に取り組む丹羽さん。〈煎茶ティーバッグお茶のすすめ〉を代表とするティーバッグシリーズは、丹羽さんが発案から手がけています。

ときに地元の職人や生産者さんたちとの会話のなかで生まれた商品もあると言い、それが最近発売されたばかりの〈カカオ煎茶ティーバッグ〉と〈マコポン和紅茶ティーバッグ〉です。その開発秘話について、丹羽さんはこのように話します。

「カカオ煎茶は、すぐ近くにある〈ハルチョコレート〉さんと話しているときに、チョコレート製品の製造には使われないカカオハスク(カカオ豆の種皮)を使って、何か商品をつくろうということになったのが始まりです。

どのお茶が合うか試行錯誤した結果、煎茶が一番相性がいいと感じました。マコポン和紅茶も、地元の〈おはら果樹園〉さんが育てているオリジナル柑橘のマコポンの皮を使って何かできないかという話になり、乾燥させた皮と和紅茶をブレンドしてつくった商品です。

その都度、いろいろな苦労がありましたが、ようやく形になってほっとしています」

カカオ煎茶 ティーバッグ
〈カカオ煎茶 ティーバッグ〉540円。斬新な組み合わせが興味をそそります。
マコポン和紅茶 ティーバッグ
〈マコポン和紅茶 ティーバッグ〉540円。マコポンの皮は渋みがなく、ほんのり甘味も感じられるとか。

柔軟な発想によって生まれた商品たちをさらに魅力的に見せるのが、冒頭でも触れた“いい意味で日本茶らしくない”パッケージです。丹羽さんは、パッケージデザインのリニューアルを考えた経緯をこう話します。

「大学を卒業して、東京の某有名和菓子屋さんに勤めていた頃(2000年代初頭)に、お菓子やお茶、コーヒーなどのパッケージをいろいろ見てきたこともあり、個人的に都会的な洗練されたパッケージにちょっと飽きていたんですね。

そして、地方のお店がそういった都会的なものの真似をすることにも疑問を感じていました。
パッケージデザインをリニューアルすると決めたとき、せっかく地方にあるお店なので、もっと手触り感があって、お茶を普段買わない方も、可愛くて手に取りたくなるものをつくろうと思い、たまたま知り合った漫画家の堀道広さんにイラストをお願いしたんです。

デザインは、大分県出身の高橋孝治さんにお願いし、最終的な形に落としてもらっています。中身には自信があったので、外観を変えるだけでお客様の幅が広がるはずと確信していました」

ほうじ茶シロップ
掘さんと高橋さんのタッグによって生まれたパッケージデザインの代表例。おばあさんのイラストが可愛らしい。

独自の発想で、デザインの変更という思いきった取り組みを行った丹羽さん。「日本茶をもっと身近に」という想いは、お茶とともに並ぶ器や道具のセレクトにも表れています。販売している器や急須は、地元・大分県出身の陶芸作家をはじめ、全国で活躍する作家の作品。それぞれにつくり手の個性が感じられ、毎日のお茶の時間が楽しみになりそうなものばかりです。

郡司製陶所のマグカップ
焼き物のまち、栃木県益子町で製作を行う〈郡司製陶所〉のマグカップ3300円。

定期的に開催される企画展も、お茶に興味を持ってもらうきっかけにひと役買っています。展示の内容は、丹羽さんが「さまざまな出会いのなかで、この人と一緒に仕事がしたい」と思う活動を行っている作家の作品。陶磁器やガラス、洋服、靴などお茶というジャンルにとらわれず、幅広く取り入れているのも特徴です。

丹羽茶舗喫茶室の内観
昭和初期からあったという元眼科の建物を改装した喫茶室内は、古い物のよさを活かした空間に。

そんな企画展の会場としても使用されるのが、本店からすぐ近くの場所にある〈丹羽茶舗喫茶室〉。カフェとしての役割を持つこの店では、販売している煎茶や抹茶を実際にいただけるだけでなく、お茶に合うデザートも提供しています。

自家製抹茶パフェセット
自家製抹茶パフェセット(ドリンク・お干菓子付)1000円。
パリパリ最中アイスセット
パリパリ最中アイスセット(ドリンク付)850円。

日本茶との距離が広がりつつある世代の目線に立ちながら、さまざまな努力を続ける丹羽さん。2022年には、常連客も多いという別府市に2号店をオープンするなど、活動の場を広げています。

〈丹羽茶舗〉のお茶は、オンラインショップでも購入できるので、気軽に味わえるのもうれしいところ。間もなく訪れる新茶の季節に、ぜひ一度お試しあれ!

Information
丹羽茶舗
address:大分県中津市京町1530
tel:0979-22-0123
access:JR中津駅から徒歩約10分
営業時間:9:00~18:00
定休日:日曜・祝日 ※企画展期間など変更が出る場合あり
web:丹羽茶舗 ホームページ
online shop:丹羽茶舗 オンラインショップ
Information
丹羽茶舗喫茶室
address:大分県中津市京町1533
tel:0979-22-0123
access:JR中津駅から徒歩約10分
営業時間:11:00~16:00
定休日:日・月・火・水曜

*価格はすべて税込です。

credit text:柿崎真英

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