個性派の泉質をめぐる!
大分の温泉名人が教える【やまなみエリア】の
立ち寄り湯9選《前編》
日本有数の温泉地としても知られる大分県。湯めぐり旅行をしたいと思っても、数が多すぎて迷ってしまいますよね。そこで、温泉にまつわる難関試験を突破し、〈温泉マイスター〉の資格をもつ温泉名人がふらっと立ち寄れる日帰り温泉をエリア毎にセレクト。今回は、人気の観光地や山に囲まれた絶景スポットがある【やまなみエリア】の前編として、九重町の名湯を9か所ご紹介します。
※掲載情報は2021年1月時点の情報です。新型コロナウイルスの影響で営業時間、料金などが異なる場合があります。詳しくは施設の公式HPなどでご確認ください。
関連記事|日本有数の温泉地、由布院。大分の温泉名人が教える【やまなみエリア】の立ち寄り湯5選《後編》
温泉を満喫できる「九重“夢”温泉郷」!
今回ご紹介するのは、大分県の南西部に位置する九重町(ここのえまち)にある九重温泉。
「九州の屋根」と呼ばれ、泉質や趣が異なる12の温泉地が点在するため、総称して「九重”夢”温泉郷」の名で親しまれています。
個々の温泉の歴史は古く、西暦901年に京から大宰府へ左遷された菅原道真が「川底温泉」を開いてから、次々と温泉が湧出。昭和50年代前半に発見された「龍門温泉」に至るまで大小10種類以上もの温泉があり、「九重九湯」として人々に愛されてきました。
神経痛や美肌などに効能があるとされ単純温泉、慢性消化器病や便秘などに効果が期待できる塩化物泉、硫黄臭のする硫黄泉や炭酸水素温泉など、どれも魅力的で迷うほど! ゆっくり滞在して、湯巡りや湯治を楽しみたい温泉郷です。
温泉の滝で疲れを癒す「筋湯温泉 うたせ大浴場」
音と体で感じる打たせ湯がウリの珍しい共同浴場です。滝のような音が浴舎の外にも響き、浴室には湯気が立ち込め、圧倒されます。18本の湯が約2メートルの高さから落ち、肩や腰などを揉みほぐしてくれます。湯船で体を伸ばせば、効果抜群です。
絶景と4種の湯を心ゆくまで。「九重星生ホテル 山恵の湯」
鉄分が特徴の希少な酸性泉があふれる桶風呂にザブンと浸かると、目前には、標高約1,700メートル級の山々が連なったくじゅう連山が広がります。山に湧く、鉄を含んだ「緑礬泉(りょくばんせん)」は薬湯とも呼ばれる泉質。あたたかい硫黄泉と冷たい冷鉱泉の交互浴ができ、単純温泉の打たせ湯もあります。4種の湯がそろう、まさに露天ワンダーランドです。
九酔渓の絶景を望む「渓谷の宿 二匹の鬼」
九酔渓(きゅうすいけい)に面した絶景湯。湯は薄緑がかった褐色です。開放感ある露天のほか、家族風呂もあります。湯は炭酸や金気が感じられ、サラッとした浴感でありながら、湯船や床にこびりつく個性もみられます。露天は200円で楽しめ、家族風呂からも景色が望めます。
湯治の雰囲気を堪能する「寒の地獄旅館」
硫黄泉で温冷交互浴ができ、湯治の雰囲気が味わえます。約14℃の冷泉とストーブを組みあわせた夏限定の混浴入浴法は独特。通年入れる内湯にも薪を使った加温浴槽と冷泉浴槽を備え、弱酸性のやわらかめの浴感に心地よく浸れます。
きらめく泡であたたまる「炭酸温泉 山里の湯」
湯につかった瞬間、肌が泡に包まれてキラキラ輝き、 弾ける泡音も楽しい。希少な炭酸泉の中でも湯温が約38℃ある入りやすい温泉です。赤茶に染まった湯船が湯力を物語り、血行促進でホカホカ。泡付きが強いと評判の家族湯もオススメですよ。
入浴後も楽しい「芸舞温泉 湯守 金獅子」
加温加水なしの美肌の湯を楽しめるコワーキングスペースつきの温泉施設です。大浴場が貸切風呂になっており、家族や友達とゆったり楽しめます。コワーキングスペースは飲食持ち込みOKで、フリーWi-Fiと電源も完備。施設名の通り、ゲーマーにも人気のスポットです。
半洞窟の露天が自慢の「壁湯温泉 旅館福元屋」
川を隔てた半洞窟の混浴露天は、300年以上前から自噴している源泉を使用。一見するとわかりませんが、岩肌や足元からピュアな源泉が大量に湧いています。約39℃のツルサラ感ある湯は肌に泡付きもあり、長湯を誘います。自然の恵みである温泉との一体感をじっくり味わってみてくださいね。
地元民に愛される濃厚な湯「筌の口共同温泉」
褐色の湯が大量にあふれ、十数人は浸かれる広い湯船は開放感いっぱい! 金気臭やカルシウムなど多彩な成分でコテコテの床模様は湯の鮮度やパワーを感じます。湯ざわりはさっぱりぽかぽか系。24時間営業がうれしい、大分を代表するビッグな共同浴場です。
湯あがりしっとり! 「里山温泉 四季彩の湯」
貸切湯のみの「里山温泉 四季彩の湯」は、弱アルカリ性の泉質で湯あがりしっとり。湯は鮮度にこだわり、約98℃の源泉を加水なしで竹製温泉冷却装置「湯雨竹(ゆめたけ)」で冷まします。はじめは無色透明ですが時間が経つにつれて青っぽく見えることも。焦げたような香ばしい湯の香りもじっくり楽しみましょう。
温泉名人のこだわり! 温泉道
Profile 高橋 秀明・潤子名人
温泉マイスター、別府八湯温泉道名人、九州温泉道泉人。このほか、温泉ソムリエ、温泉観光士、温泉観光実践士、温泉指南役など。日本温泉地域学会会員。広島市在住。温泉好きがきっかけで結婚。別府の多彩な湯にはまる。
温泉地に着いた瞬間、「温泉レーダー」が働きはじめます。あそこに湯けむり、ここに共同浴場……。湯につかれば、色や香り、温度のほか、肌触りは、味はー。地図に頼らず五感を働かせてフラリ。温泉猫へのご挨拶も忘れません。湯と出合ううれしさや、数字では表せない個性を夫婦で楽しんでいます。
多様な泉質がある九重町で温泉をハシゴすれば、お肌もツヤツヤになって、疲れもどこかへ。すっかり健康になった気がします。湯の個性を存分に味わって、お気に入りの温泉を見つけてみてくださいね。
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※この記事は、斉藤雅樹(東海大学海洋学部教授)さん監修の『おおいた おんせんガイドブック』を再編集したものです。