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野菜や果樹、花など名産が豊富な大分県での就農を応援! 「大分県移住・就農相談会」をレポート

Posted 2025.09.12
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生産量日本一を誇る乾(ほし)しいたけや、オリジナルいちごの〈ベリーツ〉に代表されるような、全国に誇る農産物を数多く生産している大分県。そんな大分県で新規就農したいと考えている人を応援するイベント「大分県移住・就農相談会」が7月12日に東京で開催されました。

イベント会場の出入口

大分県で実際に農業を始めた先輩就農者の体験談などを紹介するセミナーと、県内各市町のブースでリアルな情報を収集できる個別相談会の2部制で行われ、会場は多くの参加者で賑わいました。今回は、その模様を詳しく紹介します。

16市町で24品目! 多様な農産物を生産している大分県

まずは、セミナーからスタート。大分県農林水産部 新規就業・経営体支援課の担当者が、大分県が実施している就農支援制度について紹介します。

「大分県で農業を始められる方のほとんどは未経験です。大分県は制度や移住支援の連携が充実しており、全国でもトップクラスのサポート体制が整っています。そのため、安心して就農を目指せるよう、ほぼすべての市町村がファーマーズスクールや就農学校などの研修機関を設置しています」

セミナーの様子
県内で生産されている農産物の数は16市町で24品目。この多様さは、大分県ならではといえます。

実際に就農を開始するまでに、各段階で細やかなサポート体制が確保されており、「農業に興味があるけど、何から始めていいかわからない」という人も気軽に相談できる窓口が内容別に用意されています。

また、大分県で新規就農を希望する人は県内各地にあるファーマーズスクールや就農学校で研修を受けると、そこで「農業技術の習得」から「農地・住宅の取得」「資金の確保」まで、必要な知識を身につけることができます。

マップ
2010年から2024年度までに大分県で就農した卒業生は342人。そのうち、県外からの研修生・就農者の数は182人にも上ります。

続いて、先輩就農者として体験談を紹介してくれた、佐伯(さいき)市のいちご農家・増尾德彌(ますおのりや)さん。彼も7年前にファーマーズスクールを卒業したひとりです。

幼い頃から生き物が好きで、いちご農家に転身する以前から家庭菜園を趣味にしていたという増尾さん。しかし、農業を仕事にすることについては不安も大きかったと話します。

「そんなとき、知人にいちご農家を紹介してもらったんです。話をしてみると、自分が知らなかっただけで地元・蒲江にはいちご農家さんがたくさんいることを知り、ファーマーズスクールの存在も教えてもらいました」

先輩農家の増尾德彌さん
家族とともにベリーツの生産に励んでいる増尾さん。実際にどのような働き方をしているか、1日のスケジュールなども紹介してくれました。

ファーマーズスクールを卒業するには、「大分県指導農業士」など大分県から就農コーチとして認定されたベテラン農家のもとで1~2年間、研修を受ける必要があります。この日は、増尾さんの就農コーチだった樋口勝典(ひぐちかつのり)さんも登壇しました。

増尾さんの就農コーチだった樋口勝典さん
いちご農家に生まれた樋口さんは、現在2代目としてベリーツ栽培を行っています。

栽培できる作物や制度も各地でさまざま

セミナーを通して、参加者それぞれが抱く大分県での就農イメージがより具体的になったところで、個別相談会へと進みます。この日は、佐伯市、臼杵市、竹田市、杵築市、宇佐市、豊後大野市、由布市、玖珠町など12の団体が出展。そのなかから、3つの市をピックアップして詳しく紹介します。

個別相談会の様子
個別相談会の様子

①臼杵(うすき)市
まずは、〈ほんまもん農産物〉の生産・販売など、自治体が率先して有機農業に取り組んでいる臼杵市から。肥沃な大地を有する山間部と豊後水道に面した臼杵湾が広がる自然豊かな土地、そして温暖多雨な気候を生かして生産されている主要な作物は、ピーマン、さつまいも(甘太くん)、にら、いちご(ベリーツ)などです。

臼杵市の担当者に話を聞く参加者

臼杵市のファーマーズスクールでは、ピーマン、いちご、有機農産物(来年度からリニューアル)から選んで、栽培技術などを学べます。

臼杵市のブース

「臼杵市では、草木を主原料とした完熟堆肥〈うすき夢堆肥〉の生産と、それら完熟堆肥で土づくりを行い、化学肥料や化学合成農薬を使わずに栽培された畑でつくられた農作物を〈ほんまもん農産物〉として独自に認証する取り組みを行っています。他県からの移住者も多く、毎年200人ほどを受け入れています。そのうち8割が子育て世代です」

こう臼杵市の担当者が話すように、就農のための支援に留まらず、「若年・子育て世帯家賃補助金」をはじめ移住支援に関する制度が多く用意されているのも臼杵市の特徴です。

②宇佐市
続いては、安心院(あじむ)ワインの製造で有名な宇佐市。1年を通じ、温暖な気候に恵まれたこのまちのファーマーズスクールでは、安心院ワインにも使用されるぶどうの栽培をはじめ、いちご(ベリーツ)、小ねぎの栽培を学ぶことができます。

宇佐市の担当者に話を聞く参加者

また、支援制度は「宇佐市青年就農準備資金交付事業」を用意。宇佐市での就農は夫婦やペアなど、ふたり以上が推奨されているため、夫婦や家族での移住・就農にもおすすめです。

9月27日には、安心院町で「安心院ぶどう就農体感バスツアー」と題したイベントが開催予定。実際に新規就農した農家の園地見学などができる内容となっているため、よりリアルに就農イメージを持つことができるのではないでしょうか。

宇佐市のブース

「ぶどう栽培は少ない労力でも経営ができるので、従業員を雇用しなくてもいいところが魅力ですね。現在ファーマーズスクールでは、下は10代、上は40代と幅広い年齢層からなる5組7名が研修を行っています」と宇佐市の担当者。

③豊後大野市
最後は、県内屈指の基盤整備された畑作地帯を有し、“大分県の野菜畑”としてさまざまな野菜を栽培している豊後大野市。そのなかでも初期投資が少なく、栽培技術の習得が比較的容易な夏秋(かしゅう)ピーマンの栽培を専門的に学べる就農学校(インキュベーションファーム)での研修を推奨しています。

インキュベーションファームでは、毎年3組(ひと組当たりふたり以上)の研修生を募集。2012年の開校から、これまでに27組54名の卒業生が豊後大野市内で農業の担い手として活躍しています。

豊後大野市の担当者に話を聞く参加者

また、支援制度も充実しており、「豊後大野市新規就農支援交付金」のほか、宿泊施設の完備(自身の家を持ちたいという人には「空き家利活用補助金」)、ピーマンハウスの資材導入補助などがあります。

「30代から50代まで幅広い年齢層の方が研修生として学ばれています。卒業生のなかには、ピーマン栽培が休みとなる冬から春にかけて、さつまいも(甘太くん)や白ネギなどの作物を栽培して生計を立てている人も多くいます。来年にはファーマーズスクールも開校予定ですので、ぜひ豊後大野市での就農をご検討してもらえれば幸いです」と豊後大野市の担当者。

参加者の感想は?

今回のイベントには、女性の参加者も多く見られました。終了後、そのなかの数名に参加のきっかけや感想を聞いてみました。

「農業に興味があったので、就農支援について調べていたところ、たまたまこちらのイベントを見つけて参加しました。私自身が大分県の出身なので、Uターン移住を視野にいろいろとお話を聞きました。

初期費用が手頃で、栽培もしやすいピーマンを主に生産している臼杵市と豊後大野市、そして夫が梨に興味があるというので由布市のブースにも行きました。

実際にかかる費用面や、育てる難しさ・やりがいについて聞けたのが大きかったと思います。今はAIを使って何でも情報を得られる時代ですけど、実際に就農していらっしゃる方のお話が一番リアルだと思うので、それを聞けたのがよかったです」

「毎年家族で大分県へ旅行に行っていて、とてもいいところだなと感じていたのがきっかけで、大分県の情報を収集するようになりました。私はしいたけ栽培に興味があったので、それをキーワードに調べていたところ、こちらのイベントにつながりました。実際に、しいたけ栽培相談のブースでお話を聞いてみて、さらに興味が湧きました!」

宇佐市のブース
竹田市のブース

大分県の担当者いわく「例年よりも多くの方が参加してくださった」という、今回のイベント。来場者には特典として、大分県名物を使ったドリンクやお菓子がプレゼントされました。来年1月にも再び東京で開催予定のため、興味のある方は気軽に足を運んでみてはいかがでしょうか。

Information
大分県移住・就農相談会
web:おんせん県おおいた就農・就業応援フェア

credit text:柿崎真英 photo:ただ(ゆかい)

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