指で花びらのような形に仕上げる工程
連載|食卓で使いたい、大分の手仕事

料理が映える“幻の焼物”、臼杵焼。
陶芸家・宇佐美裕之さん | Page 2

Posted 2021.07.30
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手のぬくもりを残すことに、意義があるんです

もともと陶器をつくっていた宇佐美さんですが、いったん歴史から忘れられた焼物――特に強い印象を受けた白磁のうつわーーを復興させるため、磁器づくりにも挑戦し始めます。まちの旧家に残ってた焼物や古い資料を研究し、試行錯誤を重ねたのち、「ろくろ挽きと型打ち成形を組み合わせる技法」にたどりつきました。

たくさんの職人が作業をする工房内
個々の仕事に黙々と打ち込みつつ、ときどきおしゃべりタイムも挟まれる。海外のアトリエのように自由でなごやかな雰囲気だ。手前が臼杵焼復興のきっかけをつくったふたり。宇佐美さん(右)と薬師寺和夫さん。

「型打ち成形」とは、生地を薄くのばしたのち、石膏の型にかぶせて手で押しつけて形づくる技法。臼杵焼のもとになった末広焼でも、輪花型のうつわなどに用いられていた方法です。陶土を型に流し込んでつくる「型成型」に比べて手間も時間もかかる分、手の跡や心地よいゆがみがわずかに残り、温かみが生まれます。

工房では数名の職人さんたちが、輪花鉢や縁にレリーフ(彫り)の入った皿などをつくっています。ろくろ挽きでベースの円形をつくったと、ひとつずつ型に押し当てるものもあれば、土の塊を板状に薄くのばしてから型に当てて形づくる変形皿も。指を使って花びらの形を成形していく様は、お菓子のパイやタルトづくりみたいです。

型打ち用の生地
型打ち用の生地は6ミリ厚さの円盤状。工房の一員であるイタリア人の職人がつくっている。こんなふうに薄くのばした陶土を……
型打ち成形の様子
石膏の型に被せて押し当ててて形づくる。「型打ち成形」は約200年前の末広焼でも使われていた技法。
糸を使って縁をカット
その後、糸を使って縁をカットしたり、
指で花びらのような造形をつくる
指で花びらのような形に仕上げたり。職人の手の跡が残るうつわづくり。

「宇佐美さんも僕らも“新しいものを生み出したい”という気持ちが大きい。まだ若い工房なのでチャレンジの連続ですし、仕事が楽しいんですよね」と話してくれたのは、職人のひとりである玉田コウキさん。臼杵でバーテンダーをしていたところ、宇佐美さんに誘われて工房に参加したそうです。

ほかにも、京都で陶芸を学んだ若い女性や書道家、イタリア人の職人など、さまざまな背景を持つつくり手が集まっています。

女性の職人も
小皿を装飾中
若い女性から、バーを開いている男性まで、それぞれの思いと個性でものづくりに向き合う職人たちの手が、臼杵焼を支えている。
陶器のうつわの製作過程
臼杵焼には磁器だけでなく陶器もある。薬師寺さんは陶器のうつわを手がけている。
付け高台の工程
うつわを成形したあと、紐状にした土をひとつひとつ手でつける“付け高台”。

「そう。うつわは人の生活の中から生まれ、生活の中で使われるものだから」という宇佐美さん。臼杵焼は白く美しいだけでなく、どんな生活にも溶け込む素直さや使いやすさなど多面的な魅力を備えている。その理由の一端が垣間見えた気がしました。

皿の裏面の刻印
臼杵焼を象徴する輪花皿の裏には、シンプルな「USUKIYAKI」の刻印。

〈輪花十二弁皿S・白〉と〈黒釉 輪花十六弁大鉢〉
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する理由とは? 】

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