料理家・冷水希三子がつくる、
姫島車えびのセビーチェと豆鼓蒸し
生で食べられる車えびを
ペルー生まれのマリネ、セビーチェに。
大分県の北東部、国東(くにさき)半島の伊美港からフェリーで20分ほどの距離に浮かぶのが、周囲約17キロメートルの一島一村の小さな島、姫島。火山活動によりできた離島で、日本ジオパークにも認定されています。
近海の豊かな漁場で水揚げされる魚介類と並び、大分県を代表する特産品として全国区で知られているのが〈姫島車えび〉。島内の塩田跡地を利用した養殖の車えびです。
大規模な養殖池は島内に3か所。毎年1月から4月にかけて清掃を行い、こだわりの餌を与えるなど、徹底した生育環境の下で車えびの養殖が行われています。
旬を迎えるのは秋で、10月から12月にかけては活き車えびが出荷されます。それ以外の時期でも、活き車えびと同様にフレッシュなおいしさを味わえるのが〈生食用凍眠凍結車えび〉。活き締めにした車えびを真空パックにして、マイナス30度のアルコール溶液につけて急速冷凍したもので、お取り寄せも可能です。
料理をする際にパックごと氷水につけるか流水で解凍後、焼いたり炒めたりして調理するのはもちろん、何よりも、刺身でおいしくいただけるのが醍醐味です。
今回、〈姫島車えび〉を使って、料理家・冷水希三子さんが提案するメニューは、生のままマリネするセビーチェと、香り豊かに蒸し上げる豆鼓(とうち)蒸しの2品。
「〈生食用凍眠凍結車えび〉は、解凍したあと特有の臭みがなく、生の車えびと変わらないくらいしっかりと身が締まっています。届いたらそのまま冷凍しておけば、とれたての鮮度をキープした状態のままいつでも調理できるのがいいですね」
材料の中には、一般のスーパーなどでは少しだけ入手しづらいものもありますが、それを使うことで本格的な味わいになるので、ぜひ挑戦してみてくださいね。
1品目は、旬のトウモロコシや野菜を使ったサラダ感覚の「車えびのセビーチェ」から。
「解凍したにもかかわらず生と同レベルのクオリティならば、車えびの持ち味をしっかりと味わえるメニューをと思いついたのがセビーチェ。新鮮な魚介ありきの料理です」と冷水さん。
「車えびは解凍したら、殻がついたままの状態で金串か竹串を使って背ワタを引き出すと、身をつぶすことなくすんなりと取ることができますよ」
殻をむいたら半分の長さに切り、塩、ライム汁、水、酒を加え、車えびと一緒にマリネする野菜を準備します。
「ハラペーニョの酢漬けは、すっきりとした酸味と爽やかな辛みが味のアクセントに。ない場合は、青唐辛子やタバスコを少量加えることで代用できます。茹でたトウモロコシは、ひと粒ずつほぐすよりも包丁でそぐようにはずすと、ざくざくとした食感とみずみずしさを楽しめますよ」
また「ミニトマトは手で実を割るのがポイント」とも。包丁ではなく手でつぶしながら中身を出すことでジューシーさが増すのだとか。
「すべての材料を混ぜ合わせたら、1時間くらい冷蔵庫で冷やして味を落ち着かせます。身からはずした殻はこのメニューでは使いませんが、捨てずに素焼きしたり、油で揚げるとパリッと香ばしいおつまみに。頭の部分にはえび味噌もあるので、味噌汁に入れるといいだしが出ますよ」
トウモロコシの黄色、ミニトマトの赤、パクチー(香菜)の緑など、鮮やかなビタミンカラーに彩られたセビーチェは、ライムの爽やかな香りと酸味が夏らしい一品。車えびの甘さが一層ひきたちます。2分の1尾サイズのボリュームは口にした時の満足感も。