夏にピッタリ!
大分の万能調味料「ごまだし」のあえ麺と
バーニャカウダ。
佐伯の伝統的な調味料が簡単調理でおしゃれなひと皿に変身!
大分県の南東部、宮崎県との県境に位置する佐伯市(さいきし)に、漁師の家庭を中心に代々伝わる調味料「ごまだし」があります。
同市は、九州7県の市町村の中で最も面積が広く、太平洋と瀬戸内海を結ぶ海域、豊後水道に面した位置。日本有数のリアス式海岸が約270キロメートルに渡って延びる、県内随一の水産都市です。
ごまだしとは、地元で水揚げした魚を焼いた身とごまをすり鉢で合わせて醤油を加えたペースト状の調味料。かまぼこやさつま揚げなど、練り物の原材料によく使われるエソという白身魚で作ったのが最初だそうですが、近年は、鯛、アジなどを使っているものも。
佐伯市民の誰もが知る、定番の食べ方はごまだしうどん。丼に茹でたうどんとごまだし、カマボコを入れ、お湯もしくは出汁を加えて薬味を載せたシンプルな一杯です。
今回、料理家・冷水希三子さんが使うのは、今年で創業26年になる郷土料理店〈味愉嬉食堂(みゆきしょくどう)〉が手がけるごまだし。磯貝直利さんとお母さんの征子さんの親子ふたりで切り盛りする地元で人気のお店です。
〈味愉嬉食堂〉のごまだしで使われているのはエソ。「2枚におろして焼いたエソの身をほぐしながら皮と骨をはずし、炒ってからすったごまと合わせます。骨は捨てずに醤油と一緒に炊いて、そのエキスと旨味が溶け出した特性醬油を作る。その醬油をごまだしづくりの最後に加えるのがうちの店の特徴なんです」と磯貝さん。
お店では、かけうどんやつけうどんの調味料として好みの量を加えて食べるほか、お茶漬けのトッピングやキュウリに添えたりもすると言います。
冷水さんが提案するメニューは、ディップスタイルに仕上げるバーニャカウダと、さっぱりといただくあえ麺の2皿。
「〈味愉嬉食堂〉のごまだしは、エソの風味とごまのコクが調和して旨味が濃厚。しっかりと味が決まっているので、料理の手間が省けてとても便利ですよ」
1品目は、「ごまだしバーニャカウダ」。いろいろな野菜を熱々のソースにディップして食べる、イタリアの郷土料理がベースです。
「イタリアンの場合、バーニャカウダにはアンチョビ(カタクチイワシの塩漬け)を使うのが定番。ごまだしが持つ風味のいい魚の旨味がそのソースと重なり、簡単にできるスピードメニューにアレンジしました」
まずは、通常のバーニャカウダのソースと同様にニンニクの調理から。
「皮をむいたニンニクを半分にカットして中央の芯を取りのぞいたら、お湯を沸かして10分ほど火を通します。やわらかくなったら、包丁の腹を使ってつぶし、さらにみじん切りにしてペースト状に」
ニンニクを茹でている間に、好みの野菜を食べやすいサイズにカットしておきます。今回用意したのは、キャベツ、ラディッシュ、セロリ。
「小鍋にペースト状にしたニンニク、ごまだし、エキストラヴァージン(EXV)オリーブオイルを入れて中火にかけます。沸騰したらさらに1~2分、ニンニクの香りがしてくるまで火にかけた状態のまま混ぜ、生クリームを加えて完成です」
できあがったソースを器に移し、野菜とともにお皿に盛り付けます。
「作るのが簡単なうえに、アンチョビを使うよりも塩気が抑えられていてマイルドな味に仕上がるんですよ」
確かに、ごまだしを使ったソースの塩気はほどよく、ディップというより、ドレッシング感覚で野菜にたっぷりとかけて食べたくなるほど。冷蔵庫に半端に残った野菜を使い切るのにもぴったりのメニューです。