〈日田彦山線 BRTひこぼしライン〉のグリーンの棚田カラーバージョン車両
連載|おおいたトラベルガイド

話題の〈BRTひこぼしライン〉で巡る!
日田市で一度は立ち寄りたい、6つのスポット

Posted 2024.05.31
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2023年8月に開業した、日田彦山線BRT(バス高速輸送システム)、愛称〈BRTひこぼしライン〉。福岡県添田駅から大分県日田駅間の約40キロメートルの区間を結んでいます。同区間には36のBRT駅が設けられており、学校、病院、商業施設など、地域に密着した移動手段として、大きく利便性が向上しています。

〈BRTひこぼしライン〉のピンクのしゃくなげカラーバージョン車両
BRTひこぼしラインには、地域の思いを乗せ、未来に向け駆け抜けていく「日田“彦”山線の“星”」となるようにという願いがを込められています。(写真提供:JR九州)

開業の背景にあったのは、2017年に起きた「平成29年7月九州北部豪雨」。この豪雨により、福岡県北九州市と大分県日田市を結ぶ日田彦山線は、橋の損傷やトンネルや駅構内への土砂流入などといった大きな被害を受けました。

未曽有の災害からの復旧はJR九州単独では難しいことから、沿線地域とともに復旧方法の検討を行い、一部区間を専用道として整備するBRTでの復旧が決定。こうして誕生したのが、BRTひこぼしラインです。今回は、BRTひこぼしラインに乗って、日田市の魅力巡りの旅へ。

あやめカラーバージョンの車両
外装デザインは、“おりひめの羽衣”をイメージ。色とりどりにきらめく地域の魅力を表現。日田市の花「あやめ」カラーが印象的なデザインも。

日田駅に到着

徒歩約15分

Spot01 〈廣瀬資料館〉で廣瀬家の展示を鑑賞

日田市豆田町の街並み

まずは伝統的建造物群保存地区となった日田市豆田町(まめだまち)へ。江戸時代に天領として栄えた日田市は、歴史と文化のまち。〈廣瀬資料館〉では、そんな江戸末期から明治にかけて活躍した儒学者「廣瀬淡窓」とその弟で商人の久兵衛を中心とした廣瀬家の史料や、貴重な遺品が展示されています。

〈廣瀬資料館〉の「新座敷」の外観
正面は1853年築の「新座敷」。4年半の修復工事を終え、2023年4月より公開範囲を広げて開館。

廣瀬家の生家を利用し、建物自体が国指定史跡に。江戸時代後期に建てられた主屋は、当時の豪商の暮らしぶりを伝える貴重な存在です。

古文書や帳簿類の展示コーナー

館内には、廣瀬家に伝わる古文書や帳簿類、美術工芸品など、多数の資料が展示されています。これらの資料を通して、江戸時代から明治にかけての日田の経済や文化、さらには廣瀬家の活動について学ぶことができます。また、季節ごとに特別展が開催されており、日田の歴史や文化に触れる機会も豊富です。

多数の雛人形が飾られた「廣瀬家の時代雛」展示スペース
4月の取材時には、「廣瀬家の時代雛」の特別展示中。江戸時代の風習では一対(いっつい)、または単体で贈っていたというお雛様。
Information
廣瀬資料館
address:大分県日田市豆田町9-7
tel:0973-22-6171
access:JR日田駅から徒歩約15分、BRT日田市役所前駅から徒歩約13分
営業時間:9:00〜17:00
定休日:月曜(祝日の場合は翌日)、12月31日〜1月2日。
※ただし2月〜3月、10月〜11月は無休
入館料:大人/450円(個人)、400円(団体 20名以上)小・中・高生/350円(個人)、300円(団体 20名以上)
web:廣瀬資料館

徒歩約5分

Spot02 〈薫長酒蔵資料館〉で酒造りを学ぶ

薫長と書かれた祝樽

九州の拠点としても栄えた面影が残る豆田町は、日田市を代表する見どころ満載のエリア。せっかくなのでもう少し寄り道をして、〈薫長酒蔵資料館〉へ。

〈薫長酒蔵資料館〉の入口

ここでは江戸時代後期から続く老舗酒蔵〈クンチョウ酒造〉の歴史や日本酒造りの工程を学べます。この資料館は、1826年(文政9年)に建てられた歴史ある酒造の2階を資料館として開放。館内では、酒造りに使用される道具や機械など、さまざまな資料が展示されています。

大樽をはじめ酒造り道具が展示されている
昔の酒造り道具を多数展示。大迫力の酒蔵の丸太梁を直にみることができる。珍しい酒造りの道具の名前を探してみるのも楽しみのひとつ。まるでタイムスリップしたような気持ちになる、歴史を感じる空間。
「お酒の学習室」の内観
資料館隣の酒蔵の一部には酒造りの工程や日本酒ができるまでの工程を知ることができる「お酒の学習室」が設置されており、酒造りの奥深さを学ぶことも。
Information
薫長酒蔵資料館
address:大分県日田市豆田町6-31
tel:0973-22-3121
access:BRT昭和学園前駅から徒歩約8分
営業時間:9:00〜16:30
定休日:年始
web:薫長酒蔵資料館

BRT昭和学園前駅で乗車し約30分、今山駅で下車

徒歩約10分

Spot03 〈ももは工房〉でみそづくり体験

豆田町を後にして、向かったのは〈ももは工房〉。大肥川沿いで、農薬を極力減らした栽培を行っている「大肥郷ふるさと農業振興会」が育てる米・麦・大豆を使用し、味噌やきな粉、あられや餅などの加工品を製造販売しています。

〈ももは工房〉の外観

おすすめ商品は、麹から手づくりしている「大肥の庄みそ」。代表の森山豊子さんいわく、おいしさの秘訣は、裸麦(はだかむぎ)と蒸し煮にした大豆だそう。

「一般的に、味噌は大麦を使うことが多いのですが、うちは裸麦。栽培が難しく、収穫量も少ないのですが、上質で旨みがしっかり出るんです。それから大豆にもこだわっていて、水煮ではなく蒸し煮にしたものを使います。蒸すとほくっとして甘く、本当においしいんですよ」

「大肥の庄みそ」の袋タイプとパックタイプ
地元から県外までファンの多い「大肥の庄みそ」。(写真上から)袋タイプ(900g)は 680円、パックタイプ(600g)は 480円。
皿に盛られた蒸し上がった大豆
大豆は4時間半かけて蒸して、麹は3日間寝かせてつくるこだわり。甘みと旨みがしっかり効いた味噌ができあがります。

1998年(平成10年)に地域の女性5人で立ち上げて以来、試行錯誤を重ねながら、商品開発にも取り組んできたという〈ももは工房〉。

大きな蒸し器の蓋を開けている様子
大豆を蒸しているところ。この大きな蒸し器で約130キログラムの蒸し大豆ができるそう。

工房では、味噌や豆腐づくりの体験も可能。希望者は工房内で食事もできるので、ぜひ立ち寄ってみてはいかがでしょうか。

きな粉やだんご粉、蒸し大豆などの各種商品
「安心・安全・おいしい」を合言葉に、大肥郷の素材でつくる無添加食品の数々。お土産にもぴったり。
BRT今山駅と奥に見える三日月山
〈ももは工房〉から徒歩10分ほどの場所にあるBRT今山駅。近くを流れる大肥川と、西側に見える三日月山がうつくしい。春には新緑とネモフィラの花に囲まれ、この自然に囲まれた景色に出合えるだけで、乗ってみる価値あり。
Information
ももは工房
address:大分県日田市夜明上町693-1
tel:0973-27-7211
access:BRT今山駅から徒歩約10分、釘原駅から徒歩約5分
営業時間:9:00〜17:00
定休日:日曜
web:ももは工房
※みそづくり体験は電話または公式サイトで要予約。

BRT今山駅で乗車し約3分、方司口駅で下車

徒歩約1分

Spot04 〈清渓文庫〉で展示を見学

「角の井」と書かれた〈井上酒造〉の酒蔵

自然の恵み豊かな水郷日田の地で、1804年に創業し、200年以上にわたって、その長い歴史を紡いできた蔵元〈井上酒造〉。酒本来の味を楽しめる「最後まで飲み飽きない酒」を目指して、環境や素材にこだわり抜いたおいしさを届けています。

一面稲穂が実った田んぼ
なんと蔵人自ら酒の原料となる米づくりから行っているというから驚き。蔵の前に広がる田んぼで、日々愛情を込めて米を育てています。

井上家は、大正から昭和にわたって日本銀行総裁および大蔵大臣を歴任し、日本経済発展に貢献した井上準之助の生家でもあり、遺品資料展示館〈清渓文庫〉を併設。準之助の号である「清渓」からその名づけられました。

〈清渓文庫〉の外観
主屋、煙突、清酒蔵は、2016年に国の登録有形文化財に登録されました。
数々の資料が展示さている〈清渓文庫〉館内
館内には遺品や書簡など、生家だからこそ見学できる貴重な資料もたくさん。
Information
清渓文庫
address:大分県日田市大鶴町2299
tel:0973-28-2213
access:BRT方司口駅から徒歩約1分
営業時間:10:00〜17:00
※最新情報は公式サイトをご確認ください。
入館料:300円(見学は完全予約制)
web:清渓文庫|井上酒造

BRT方司口駅で乗車し約4分、名本駅で下車

徒歩約2分

Spot05 〈やさい工房 沙羅〉の地元農作物を購入

〈やさい工房 沙羅〉の外観

2008年に誕生した地域の農産物直売所〈やさい工房 沙羅〉。地元の農家さんが毎朝新鮮で安全・安心な農作物を運んでくれるので、季節によって商品はさまざま。いつ来ても旬の味を楽しむことができます。

店内で買い物をするお客さん
「野菜が新鮮でおいしいものが揃っているから、わざわざ訪れたくなるんだよ」と話してくれた常連さんも。

また、野菜以外にも、地元のおばあちゃんが作った加工品、お弁当・パンや手作り雑貨などを販売。数ある商品の中から、おすすめ商品をご紹介します。

米袋に入った「ひのひかり」
水郷と呼ばれるほど、きれいで豊富な水が流れる日田で育った米「ひのひかり(10kg)」4200円。
「もりやまの椎茸」
大分県の名産品である、しいたけも各種販売。寒暖差の激しい日田ではおいしく育つそう。
〈日田製茶園〉の「梅こぶ茶」と「昆布茶」
1949年創業以来、日田市で茶業を営む〈日田製茶園〉。ギフトにもぴったりな「梅こぶ茶」、「昆布茶」各700円。
Information
やさい工房 沙羅
address:大分県日田市大肥本町1212
tel:0973-28-2738
access:BRT名本駅から徒歩約2分
営業時間:8:00〜17:00
定休日:年末年始
web:やさい工房 沙羅

BRT名本駅で乗車し約40分、日田駅で下車

徒歩約15分

Spot06 〈すてーき茶寮 和くら〉で鉄板焼に舌鼓

BRTひこぼしラインで巡る旅。最後は日田駅に戻り、〈すてーき茶寮 和くら〉でゆっくりとディナーを楽しむのがおすすめ。旅の締めくくりにふさわしい、おいしい料理と素敵な空間を味わうことができます。

〈すてーき茶寮 和くら〉の外観
1917年(大正6年)築の土蔵を改装した鉄板焼ステーキレストラン〈すてーき茶寮 和くら〉。登録有形文化財に指定されており、モダンとクラシックを融合させた空間です。

雰囲気が異なる、2つの空間が広がっている店内。2つの部屋に分かれており、この茶寮でメニューを決めたあと、もうひとつの鉄板席がある部屋に移動して食事をします。食後はまた茶寮に戻り、デザートやお茶を楽しむという贅沢な時間を過ごすことができます。

ソファやテーブル席が用意された茶寮
メニューを決めたり、食後の時間を楽しむ茶寮。椿を模ったステンドグラスも。2階にまで伸びる長柱には1本の杉からとったものが使用され、歴史を感じさせてくれる空間です。
カウンターの鉄板席
窓の向こうには三隈川や、亀山公園の四季折々の景色を見渡せる鉄板席。椅子に座るとちょうど目線の高さに川が見える、日田の絶景スポットです。

自慢の料理は、店名にもなっているステーキ。なかでも世界的に人気が高く、希少な尾崎牛を使用したステーキがイチオシだそう。

一口大にカットされた尾崎牛ステーキ
「尾崎牛熟成赤身肉 (200g)を使用した「ベーシックコース」11000円(サ別)。ステーキは尾崎牛の他に大分特選牛のロース・フィレも選べます。
プレートに盛られた前菜3種
季節の食材を取り入れた、華やかな前菜。この日は日田市で養殖が進んでいる「モロコ」を使ったバーニャカウダーが。淡水魚の一種であるモロコ、近年は漁獲量が減り高級魚のひとつに。

宮崎県の澄んだ空気と水と、ビール酵母を発酵させた肥料で育った尾崎牛は肉の味が濃く、旨みも強いのが特長です。世界の高級レストランで提供されており、国内で食べられるところは限られています。大分県内でも扱っているのは1、2軒のみ。

デザートとコーヒー
デザートがつくフルコースとしても人気です。
小瓶に入った「不知火 デコポンの杏仁豆腐」
季節に合わせたスイーツはテイクアウトが可能。「不知火 デコポンの杏仁豆腐」486円。おしゃれなボックスに詰め合わせもできるので、手土産にもぴったり。

食欲をそそる音や香ばしい香り、目の前で生み出される料理を五感で楽しめるのも鉄板焼の醍醐味。目の前に広がる三隈川を眺めながら、1日の旅を振り返ってみるのも。

三隈川の夕日
Information
すてーき茶寮 和くら
address:大分県日田市隈2-4-13
tel:0973-24-2728
access:BRT日田駅から徒歩約15分
営業時間:12:00〜14:30(L.O.)、17:00〜21:00(L.O.)
定休日:不定休
web:すてーき茶寮 和くら

昔ながらの歴史や文化に触れたり、地域の食を堪能できる、魅力あふれるスポット満載の日田エリア。ぜひ訪れたら、〈BRTひこぼしライン〉に乗って、大分の魅力を探しに巡ってみませんか。

Information
日田彦山線 BRTひこぼしライン
web:日田彦山線 BRTひこぼしライン
※BRT時刻表は変更になる場合があります。最新情報は、公式サイトをご確認ください。

*価格はすべて税込です。

credit text:大西マリコ photo:黒川ひろみ

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