天日乾燥中の小鹿田焼を眺める宇賀なつみさん
特集|大分の小京都・日田へ

歴史と風土が育んだ小鹿田焼と日田下駄。
宇賀なつみが日田の手仕事にふれる旅へ

Posted 2021.12.08
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日本の原風景が残る隠れ里で「小鹿田焼」に出合う

大分県日田市の集落、皿山の景色
国の重要文化的景観に選定された小鹿田焼の里。川のせせらぎとひんやりした空気が心地いい。

大分県日田市の山懐に抱かれ、ひっそりと佇む美しい集落、皿山。

ここには約300年もの間、伝統的な技法を守りながらつくり続けられている陶器「小鹿田焼(おんたやき)」があります。

この地に焼き物づくりが伝わった江戸時代から変わらず、技術を継承している窯元は9軒。土づくりから、ろくろでの成形、窯焚きまですべてを手作業でこなすハードな仕事を家族総出で行っています。

柳瀬元寿窯の直売所を訪ねた宇賀さん
皿山地区では、窯元の軒先や直売所で小鹿田焼を購入することも。写真は柳瀬元寿窯の直売所。

民藝運動の創始者である柳宗悦や、イギリス人陶芸家のバーナード・リーチ、日本を代表する陶芸家・濱田庄司も訪れたというこの隠れ里。

「素朴で深みのあるデザイン。だからこそ、どれも普段の食卓に取り入れやすそうですね」と話すのは、旅好きのフリーアナウンサー宇賀なつみさんです。

前回の特集で別府を旅した時もうつわを購入した宇賀さんが、今回もお気に入りのひと皿を見つけにやって来ました。

【関連記事】 別府でアートを散策する旅へ出た宇賀さんの記事はこちらへ。

様々なうつわが天日乾燥されている
同じ形のうつわがずらり。成形した後、天日乾燥させています。

小鹿田焼は、その技法が国の重要無形文化財に指定された民藝のうつわ。

アート作品とは違い、あくまでも暮らしに寄り添ううつわであるため、特定のつくり手による名入れや独自の絵付けなどはせず、9軒あるすべての窯元で同じ素材、同じ技法を用いて、ひとつの「小鹿田焼」としてつくられています。とは言え、手仕事ゆえに、それぞれつくり手の個性が出るのも魅力のひとつ。

「たくさんのうつわが並んでいて圧巻の風景ですね」

大好きなうつわを前にテンションのあがる宇賀さん。その製作現場へお邪魔しました。

父子で切磋琢磨しながら作陶する、昔から変わらぬ光景

〈坂本工窯〉の坂本工さんと坂本創さん
坂本工さん(右)と、息子の創さん(左)。

やって来たのは、陶工である坂本工(たくみ)さんと息子の創(そう)さんが親子で営む〈坂本工窯〉。釉薬の原料である灰も地元の素材を使って自家生産するなど、こだわりのつくり手として知られます。

作陶中の創さん
足で蹴りながらろくろを回す「蹴(け)ろくろ」を使って作陶します。

息子の創さんは、高校卒業後、鳥取にある〈岩井窯〉で2年間修業。2010年、小鹿田の里に戻ってきました。

父の下、陶工としての活動をスタートさせ、切磋琢磨してきた創さん。宇賀さんが見ている前で、土の塊からうつわをあっという間につくり出していきます。

「見ていて気持ちがいいほどですね」と、宇賀さんも感心しきりです。

成形されたうつわを棚に置く
成形されたばかりのうつわを棚に置く工さん。天候を見計らって屋外に出し、約2週間ほど天日干しするそう。

「こんなにたくさんつくっても、窯焚きの段階で半分以上割れてしまうこともあるんですよ。この里で採れた土はそれほど繊細なんです。ほかの土を混ぜて生地を強くすることもできるのですが、それでは小鹿田焼でなくなってしまう。ここの土と、水と、気候と、われわれの技術があってこそ小鹿田の伝統。どれかひとつが欠けてもだめなんです」と工さん。

扱いの難しい土を使い、すべて手仕事でこなしていく。とても大変な作業だからこそ、生まれる唯一無二の焼き物。その製作工程を見せてもらいました。

川辺に設置された唐臼(からうす)
ししおどしと同じ要領で、川の水を利用し土を粉砕する「唐臼(からうす)」。ギー、ゴトンという音が集落の至る所から聞こえてきます。

うつわづくりは、川の流れを動力にした〈唐臼(からうす)〉による土の粉砕からスタート。里山から採取した原土が粒子状になるまでは、およそ30日かかるといいます。

唐臼の説明を受ける宇賀さん
唐臼を間近に見る宇賀さん。その足下にはさらさらの土が。

「乾燥させた原土をこうして、ゆっくり、ゆっくり時間をかけてついていく。この集落には唐臼が土をつく音が24時間ほぼ休みなく響き渡るのだけど、私はこの音とともにここで生まれ育ってきたから、逆にこれがないと安心して眠れないんですよ」と工さんは笑います。

オロと呼ばれる濾過槽
オロと呼ばれる濾過槽で、土の水抜きをしている様子。手ですくえるくらいまで水分をとります。

約1か月かけて粒子状になった土に、今度は水を加えて攪拌します。それをふるいで何度も濾したうえで、水分を抜いて乾燥させると、やっと陶土のできあがり。気の遠くなるような作業を経て、いよいよ作陶が始まります。

うつわに「飛び鉋(かんな)」を施す工さん
小鹿田焼の伝統的な技法である「飛び鉋(がんな)」を施す工さん。放射状の模様が美しい。

小鹿田焼の伝統的な技法に、鉋(かんな)を用いて連続的な細かい模様をつける「飛び鉋」や、半乾きの素地に白い化粧土を塗り、それが固まる前に刷毛(はけ)を当てて濃淡を表現する「打ち刷毛目」、櫛(くし)で波形の曲線を描く「櫛描き」、柄杓(ひしゃく)を使って釉薬を陶器にかける「打ち掛け」などがあります。

工さんが宇賀さんに見せてくれたのは「飛び鉋」。かなりのスピードでろくろを回しているにもかかわらず、見事に等間隔に模様がついていることに驚きます。まさにこれぞ職人技!

登り窯を覗き込む宇賀さん
坂本工窯の登り窯を覗き込む宇賀さん。うつわの入っていない一番下の焚き口に火をつけて10数時間かけて温めた後、その上にある1番目の窯、そして2番目の窯と順に焚き上げていくそう。

さまざまな工程を経た後、最後にして最大の難関が、登り窯での焼成です。

「1日半かけて夜通し焚き続けるんです。ずっと窯の前に張り付いて、薪をくべながら火加減を調整するのが本当に大変でね。とくに夏場は暑くてかないません」(工さん)

時間と労力をかけても、焼成不足や破損のため、商品にならないものも少なくない。本当に骨が折れる作業です。

軒先に並べられた小鹿田焼の完成品
坂本工窯の軒先でも小鹿田焼は購入できます。

こうして、やっと完成した小鹿田焼。宇賀さんが選んだうつわで、日田の日本酒をいただきましょう。

ぐい呑みを手にする宇賀さん
手にしっくりくる、ちょうどいいサイズのぐい呑みをチョイス。

「日田のお酒を、日田のうつわでいただく。それぞれのつくり手のいいエネルギーをいただいている気がします。それにしてもこの里は、まるで時が止まっているかのような、穏やかな場所ですね。非日常的で、不思議な世界に迷い込んだ気持ちになります」(宇賀さん)

宇賀さん、工さん、創さんの3人で日本酒を味わう
「労働の後の酒はうまい!」と工さん。

盃を重ねてきたところで、創さんに陶工としての工さんの魅力を聞いてみると、「やわらかくて繊細なうつわをつくるところですね。この見た目からはまったく想像がつかないと思いますけど(笑)」と答えてくれました。

「対して、僕はその逆。しっかりとした骨格で強さを表現していきたい」とも。

同じ素材や技法でつくられているにもかかわらず、つくり手によって大きく味わいを変える小鹿田焼。暖かい日差しの中で酌み交わし、そのすばらしさを堪能する宇賀さんでした。

Spot 01
Information
小鹿田焼陶芸館
address:大分県日田市源栄町皿山138-1
tel:0973-29-2020
access:JR日田駅から車で約30分
営業時間:9:00〜17:00
定休日:水曜、年末年始
web:小鹿田焼陶芸館

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