〈リトルアトリエスイッチ〉の
かわいい雑貨が勢揃い。
〈ツナグミセ。〉が大分市にオープン | Page 2
外の世界への架け橋となる〈ノボリバタプロジェクト〉
カラフルな織物のバッグの材料は、実はお店の軒先やイベント会場などではためく、「のぼり旗」なのだそう。
「緑の生地は墓石屋さん、こっちはケーキ屋さんのいちごフェア、これはシュークリームの旗だったかな? 旗にもいろんな種類があっておもしろいですよね」
それにしても、いったいのぼり旗をどうやって一枚の布に?
「裂織(さきおり)といって旗の布地を細かく裂いて糸状にしたものを織り込むんです。裂織に関しては、長く織物に取り組んでいる障がいのある方たちがいて、その施設で一枚布に織ってもらい、それを私たちが買い取って雑貨に仕立てています」(安部さん)
以前はよくある綿の糸を使って織っていたそうですが、たまたまもらったのぼり旗で裂織をやってみたところ、生地としての軽さや柄の出方のおもしろさに気づいたのだとか。雑貨との相性も抜群だとわかり、いまはのぼり旗をメインの材料として使うようになったそうです。
その織物を、柳井さんの得意とする“仕立て力”をフルに使ってバッグや小物にする〈ノボリバタプロジェクト〉をスタート。その活動と商品は注目を集め、テレビなど多くのメディアでも取り上げられました。この活動が、障がいのある方たちにとって社会に出るための第一歩になったと安部さんは言います。
「障がいのある子どもたちが福祉の枠組みのなかで守られていることはもちろん親としてありがたい。だけど健常者のいる社会とはちょっと隔たりがあって、外の世界に出ていく機会が本当に少ないんです。テレビ取材をきっかけに外とのコミュニケーションが生まれたことで、障がいのある方や施設のスタッフたちのモチベーションや積極性にもつながったのは、とてもうれしかったですね」(安部さん)
4月には、ノボリバタプロジェクトとして商標登録も。大分県が中小企業を支援する「経営革新計画」の承認も受けました。現在、裂織の布を織ってもらっている施設は1か所ですが、今後は材料集めから加工販売までをきちんとできる仕組みを整えて、ほかの施設や福祉グループでもこのノボリバタプロジェクトに取り組めるようにするのが、安部さんたちの目標です。
「材料として織物をつくる人、布ものクリエイター、あとはその流れを回す人がいればどこでもできることなんです。このたくさんの可能性を持った仕組みをオープンソースにして全国に発信していきたい。いろいろな地域の方たちがこれをできるようになったら、きっと楽しいと思うんです」(安部さん)
安部さんと柳井さんからは、かわいいものをつくりたい! という情熱と愛情、それにものづくりの楽しさが伝わってきました。リトルアトリエスイッチの商品は、大分市の〈ツナグミセ。〉またはオンラインショップでも購入が可能です。ユニークでかわいく、ストーリーのある雑貨たちを、ぜひチェックしてみてください。
*価格はすべて税込です。
credit text:川上靖代 photo:木寺紀雄