城下町を着物でゆったり巡る。
宇賀なつみ、臼杵の歴史タイムトリップ | Page 2
静かな時間を感じて。
日本情緒あふれるまち並み・二王座歴史の道を歩く
臼杵城跡を南下すると、臼杵の城下町を代表するエリア・二王座歴史の道があります。
武家屋敷と寺院、町屋が混在するしっとりとした雰囲気に「ここだけ時間の流れがゆったりしていて、思わずゆっくり歩きたくなりますね」と宇賀さんも魅了されたよう。
ノスタルジックな景観が広がる二王座ですが、このエリアは約9万年前、阿蘇噴火により阿蘇溶結凝灰岩で形成された丘でした。
それを、人が通れるように岩を採掘し、この街道筋ができたのです。
旧真光寺の前の通りは「切通し」と呼ばれ、平成5年、国の都市景観100選に選定されました。
歩き疲れたら、無料の休憩所として活用されている廃寺・旧真光寺へ。
中に入ると、複雑に入り組んだ梁や急勾配の階段、かがまないと入れない小さな間など、意匠を凝らした構造になっています。
白壁と石畳に囲まれたゆるやかな坂道を見つめて、当時の臼杵城に想いを馳せる宇賀さんでした。
蔵元で直接買う楽しさを。
大分県最古の醤油・味噌商店〈カニ醤油〉
二王座歴史の道から1本入った通り・八町大路には、安土桃山時代から続く由緒正しい商店が並びます。なかでも注目なのは、創業420年以上を誇る醤油・味噌商店〈カニ醤油〉。
そもそもなぜ、味噌とソフトクリームを掛け合わせようと思ったのでしょうか。遡ること2007年、ソフトクリーム製造機を譲り受けたことから始まりました。
「味噌と掛け合わせるのはもう決めていたんですけどね。味噌の味をどう出すかが大変でした。意外とソフトクリームの味わいに飲まれちゃって。入れすぎても塩辛いですし。結果的に味噌ソースを絡めることにしたのですが、これがソフトクリームの上にとどまってくれなくて苦労しました。ソースの配合を変えると、今度はソフトクリームの冷たさで固まってしまったりね」(カニ醤油・可兒明子さん)
たくさんの試行錯誤を重ねた結果、ソースの調合に加えて、味噌で土手をつくることに。
臼杵煎餅をつくっている煎餅屋さんに麦味噌を混ぜ込んだ煎餅をつくってもらい、それを粉砕してクランチにしたものが土手の役割を担っています。
「クランチのカリカリした食感が楽しいですね。あっさりしたバニラにこってりした味噌がバランスよくマッチしています。あまじょっぱくて、みたらし団子に近い味わいです」と絶賛する宇賀さん。
小腹を満たしたら、店内でお買い物を楽しみましょう。
まずはお味噌から。
カニ醤油で代表的なのは麦味噌。〈いいちこ〉や〈二階堂〉など麦焼酎で有名な大分ですが、味噌にも麦を使用するのが九州のスタンダードなんです。
麦味噌の特徴は、なんといってもその“濃厚さ”。麦の麹を使用すると赤っぽくなり濃い風味を感じられるのだとか。
醤油も見てみましょう。
納豆用、たまごかけごはん用、冷奴用など、用途別に作られた小ぶりなサイズの醤油がずらっと並びます。
「ポップに書いてあることが、かなり“クセつよ”で、いちいちおもしろいですね(笑)。使い道がピンポイントだからこそ、どれも揃えたくなってしまいます」と宇賀さん。
なかでも宇賀さんが気になったのは万能だしの「黒だし番長」。
「九州のお醤油はもともと甘いのですが、うちでは甘さのランクも色々とあります。お塩の代わりに薄口醤油を使ってコクを出したりして。同じ料理でも醤油で食の豊かさは変わりますよ」と可兒明子さん。
宇賀さんのご自宅の台所にも、新たな醤油が仲間入りしそうです。
最後に臼杵市の歴史探訪を振り返ってもらいました。
「まちが大きすぎないから、とても巡りやすいですね。昔ながらの風景が残っているところって全国各地にありますが、観光地化されすぎてしまうと、どこも同じに見えてしまう現象ってあるじゃないですか。臼杵はそれがないというか、当時の雰囲気が色濃く残っていて、空いていて、めちゃくちゃ穴場ですね。
たまに自転車に乗った地元の人とすれ違うくらいで、とっても静かでくつろげました。この静けさは貴重です。心が安らぎます」(宇賀さん)
credit text:藤田佳奈美 photo:ただ hair & make:永田紫織(Nous)