老舗文具店〈明石文昭堂〉が
別府ならではのサブスクを始めた理由
地元で愛される文具店のユニークな試みの数々
「こんにちは、この用紙が入る封筒はありますか?」
「先日、納品してもらった賞状ケースの代金を支払いにきました」
別府駅から徒歩2分ほどの場所に、ひっきりなしにお客さんが訪れる文具店があります。昭和2(1927)年に創業し、来年で創業95周年を迎える〈明石文昭堂(あかしぶんしょうどう)〉です。並べた色鉛筆を思わせるデザインのファサードがチャーミングなこのお店には、ノートやペン類、封筒や事務用品などのいわゆる普通の文具はもちろん、画材や額なども並んでいます。
色とりどりの消しゴムやかわいいノート類は見るだけでも楽しいし、子どもの頃によく行ったお店を思い出して、思わず頬が緩んでしまいます。かつて、小学校や中学校のそばには必ず文具店があり、子どもたちでにぎわっていましたよね。
〈明石文昭堂〉が扱うのは、そんな懐かしい気分になる文具だけではありません。PVC加工が施されたおしゃれな帆布トートバッグや別府土産にぴったりなそえぶみ箋、別府大学とコラボした多機能ペンといったオリジナル商品が並びます。
なかでも人気なのが、3代目社長の明石泰信さんが創業80周年を迎えたときに企画したオリジナルインクです。最初は8色でしたが、今では「BEPPUベイブルー」や「湯あがりピンク」など別府の風景や黄昏時の空の色をイメージした15色まで増えています。
レトロなインク瓶は愛らしく、インテリアとして買い求める人も少なくないようですが、やはり万年筆とセットで購入して、手紙を書いてみたいもの。Eメールや、LINEといったSNSがコミュニケーションツールの中心となった時代ですが、手書きの手紙を受け取るとやはり特別な気持ちになるものです。
書き文字を大切にしている泰信さんは、5年前に記念万年筆を限定販売しました。空の色を反映して変化する別府湾をイメージした深みのある青色の万年筆は、ペン先に湯けむりをモチーフにした遊び心のあるデザインが施されています。
その際、お客様へ感謝を伝えるためにつくったメッセージに泰信さんはこう綴りました。「相手のことを思って筆を持つこと、ひとつひとつの文字に想いを込めること。書くということは、誰かのことを思う時間なのだと感じます」と。心に沁みる言葉です。
書き心地のよさも評判になり、すぐに完売した万年筆が今年、200セット限定で〈湯けむり文具函(ぶんぐばこ)〉海コースで発売されます。今回の万年筆は、別府オリジナルインクの人気色「湯けむりミストブルー」をイメージしたシックな色合いがすてきです。