臼杵市がユネスコの食文化創造都市に認定!
その豊かな食文化を辿ります
2021年11月、大分県の南東部に位置する臼杵市(うすきし)がユネスコの「食文化創造都市」に認定。大きな話題を呼びました。
ユネスコは、2004年から「創造都市ネットワーク」という取り組みを実施。文学、映画、音楽、クラフト&フォークアート、デザイン、メディアアート、食文化の7つの分野において、固有の文化を持ち、それを活用している都市を創造都市としてネットワークへの加盟を認定しています。
食文化の分野における認定は、国内では山形県鶴岡市に続く2例目。そんな世界も注目する臼杵市の食文化を支える大きな柱は、「発酵」「質素倹約」「有機農業」の3つ。そのルーツや取り組みなどを探りに、鍵となる人や場所を訪ねました。
発酵①|
味噌・醤油の老舗〈富士屋甚兵衛〉へ
まず訪れたのは、臼杵市の中心市街地に延びる商店街「八町大路」。約300メートルに及ぶ商店街は至るところに城下町の景観を残し、タイムスリップしたような気分が味わえます。
その一画で店を営む〈富士屋甚兵衛〉は、〈富士甚醤油〉のアンテナショップ。臼杵市では400年以上前から味噌づくりが始まり、次第に醤油や酒を含む発酵・醸造業が栄えた歴史があります。
〈富士甚醤油〉も、1883(明治16)年に創業した老舗で、臼杵市内の味噌・醤油づくりをけん引する大手のひとつ。店名の〈富士屋甚兵衛〉は創業者の名前からつけられたのだとか。
店内に入ると、中央に目を引く大きな味噌桶がふたつ並んでいます。桶の中にたっぷり入った量り売り用の味噌は、合わせ味噌と麦味噌の2種類。「この味噌は、国産の原料にこだわっているのが特徴です」とスタッフの吉田洋子さんは話します。
桶のお隣りには、アイスクリームやお餅用の醤油、ハチミツ味噌などユニークな商品がずらり。醤油を使ったソフトクリームなども人気だといいます。
定番の味噌・醤油だけでなく、それらをアレンジした商品の開発にも積極的に取り組む。臼杵の発酵文化発展の陰には、こんな老舗の努力もあるようです。
発酵②|
木製の蒸留器で焼酎をつくる〈小手川酒造〉
続いて訪れたのは、八町大路の1本隣りの通りにある〈小手川酒造〉。1855(安政2)年の創業当時のままを保っている土蔵と店舗兼事務所が入る建物は、この店が歩んできた長い歴史を感じさせます。
清酒の蔵元として酒づくりをしていたなかで、手の空いた時期に味噌や醤油の製造も始めたところ、それが大手メーカーの一角を成す〈フンドーキン醤油〉の前身となった歴史を持つ同社。向かいには、その〈フンドーキン醤油〉の創業者である小手川金次郎さんが分家し、1861(文久元)年に創業した〈小手川商店〉があります。
そんな〈小手川酒造〉でつくられるのは、手づくりにこだわった焼酎(麦・芋)と日本酒です。麦焼酎の〈白寿(はくじゅ)〉や大吟醸の〈宗麟(そうりん)〉など、10種類の銘柄を手がけています。
「九州の焼酎と言えば、アルコール度数25度が多いんですが、大分県の人は20度を好むんですよ」とスタッフが教えてくれたとおり、同じ銘柄の焼酎でも20度と25度の2種類を揃えています。
店の奥へ進むと、巨大な木製の蒸留器が見えてきます。スチール製が一般的な今、この昔ながらの木樽で、麦や芋からつくったもろみを蒸留しているのだとか。
完成した焼酎は、土蔵で熟成させます。約500リットルも入る大きなかめが、蔵の中にずらりと並ぶ様子は圧巻。なかには、30年ものもあるといいます。
敷地の中では、店の飼い猫が時折のんびりと歩き回る姿も。その光景もまた味わい深い雰囲気を醸し出しています。