大分のニラ農家直伝!
ニラの選び方やおいしく食べるコツ、
「にら豚」のレシピまで
大分ではレバニラより「にら豚」が主流? その発祥と歴史

町中華のメニューや私たちの食卓に欠かせない名脇役のニラ。「ニラを使ったメニューといえば?」と聞かれたら、あなたは何を思い浮かべますか? 餃子やもつ鍋、レバニラ炒めなど、さまざまな食べ方がありますが、大分市民のほとんどは「にら豚」と答えるのではないでしょうか。
1971(昭和46)年に誕生した「にら豚」は、ニラと豚肉、キャベツを炒めた醤油味ベースの料理。発祥の店といわれる〈中国料理 王府(わんふ)〉をはじめ、現在では大分市内の100店舗以上の中華料理店で食べることができます。
大分市民のソウルフードとして愛される「にら豚」ですが、高品質なニラが生産できる土地だからこそ生まれたメニュー。

実は、西日本有数の産地である大分県のニラは、「甘みが強く、えぐみが少ない」と評判。1年を通じてみずみずしいニラが出荷されています。
今回は、大分市の村上農園のニラ畑を訪ね、〈大分にら〉の魅力とおいしさの理由をうかがってきました。
大分のニラはなぜおいしい?
大分県のニラは、〈大分にら〉の銘柄で福岡や京都、大阪などの市場に出荷されています。主な産地は大分市や佐伯市など。特に大分市周辺は、瀬戸内海式の温暖な気候と、大分川・大野川流域の肥沃(ひよく)な土壌に恵まれ、年間を通して高品質なニラが栽培されています。
大分市でニラの栽培が始まったのは、1968(昭和43)年のこと。水田転作をきっかけに広がり、今ではかぼすやしいたけに次ぐ大分県を代表する農産物のひとつになりました。


ニラは「香りの強い野菜」という印象がありますが、〈大分にら〉は、香りにどこか丸みを感じます。〈タフボーイ〉という品種をメインに栽培する〈大分にら〉は、従来のニラに比べてくせが少なく、さわやかな香りが特徴です。葉の幅は広く肉厚。やわらかく、噛むと小気味よい食感。そのあとから、じんわり甘みが広がっていきます。

ニラは栽培時期によって「冬ニラ」と「夏ニラ」に分けられます。太陽の光をたっぷり浴びて元気に育つ「夏ニラ」は香りが強く、香味野菜の旨みを発揮。反対に「冬ニラ」は寒さから身を守ろうとすることで、ニラ自身が糖分を蓄え、甘さが増します。

収穫されたニラは、ビニールハウスそばの作業場で束ね、すぐに出荷します。そのため鮮度が高く、水分をしっかり含んだニラはずっしりと重量感もあり、香りの立ち方と食感も格別。採れたての〈大分にら〉は噛むほどに甘みが広がり、これまで食べてきたニラとイメージが変わるかもしれません。
実は栄養もすごい! ニラが元気食材な理由
ニラは昔から栄養豊富な「スタミナ野菜」として親しまれてきました。
特有の香り成分であるアリシンは、ビタミンB1の吸収を助ける働きがあるといわれています。さらに、βカロテンやビタミンA・C、カリウム、カルシウム、食物繊維なども含まれ、免疫力アップや美容効果も期待されています。

「鍋の時期に多く使われる野菜のイメージもありますが、疲れているときや、特に夏場はおすすめですね」と村上さん。暑い時期でも、ニラの香りをかぐだけで食欲が湧いてきます。
毎日食べられるニラを目指して。〈村上農園〉の栽培へのこだわり
村上さんが農業の道に入ったのは、高校卒業後。大学進学も卒業直前まで悩んでいたそうですが、幼い頃から見てきた両親の姿が背中を押したといいます。2021年には、父のあとを継いで代表取締役に就任。ニラと向き合い続けて27年が経ちました。現在は約6ヘクタールの規模の畑で年間約400トンを出荷しています。

ニラづくりは想像以上に繊細な仕事です。収穫はすべて手作業。傷みやすいため、一本一本折れないように状態を見ながら刈り取っていきます。
収穫したあとは「そぐり」という作業へ。傷んだ葉や形の悪い部分を取り除き、出荷できる状態に整えていきます。

ニラは、一度収穫して終わりではありません。刈り取ったあとの根をそのまま育てると、約1か月後には再び葉が伸びて収穫できます。7回収穫をすると植え替えです。

村上さんが特に大切にしているのが、水の管理。
「暑いときに私たちののどが渇くのと同じようにニラも水がほしくなる。水が少なすぎると筋っぽくなるし、多すぎても腐ってしまうんですよね。気温の高い日は暑さで煮えないように夕方に水をあげるなど、気持ちのいい環境にニラを近づける感覚ですね」
常に天気予報をチェックし、その日の気温や湿度、風の強さを見ながら水やりの量やタイミングを細かく調整。毎日同じことを繰り返すのではなく、その日の畑を見て判断しています。

もうひとつ印象的だったのが、“やりすぎない”という考え方。
「高級品を少量生産するのではなく、全国どこでも、たくさんの人が毎日食べられるように味も価格も安定したニラをつくりたいんです」
家でつくる炒め物や鍋など、冷蔵庫に2束、3束とストックしてニラが日常的に使ってもらえる存在になることを目指しています。

「父が築いてきた栽培方法をベースに、季節やそのときの環境、時代に合わせて育てる。毎年同じやり方ではないんです。そのときに合わせてシンプルに栽培するために、水の量も温度も肥料も、それまで100パーセントで入れていたものを、少し抜いてみる。ダメなら戻す。その繰り返しですね」
派手さはなくとも、毎日の食卓に自然と並ぶ野菜でありたい。真剣な思いが、村上さんの言葉の端々から伝わってきました。
農家直伝! ニラをおいしく食べるコツ
「まずは、生で食べてみてほしいです」
村上さんがそう話すように、採れたてのニラはできるだけシンプルに食べるのがおすすめ。加熱すると甘みが増す一方で、生のニラにはフレッシュな香り、食感と、それぞれの味わいが楽しめます。

・食べ方
長く炒めると歯切れの良さがなくなってしまうので、火を入れすぎないこと。火の通りにくい野菜と合わせる場合は、最後にさっと加えるのがおすすめ。茎の部分も甘みがあるので、茎を入れる場合だけ少し早めに火へ入れるとちょうどよい食感に。
・選び方
根元がきれいにそろっているかどうかがポイント。収穫して間もないものほど切り口が整っていて、水分もしっかり残っています。
・保存方法
自宅では購入時のフィルム袋に入れたまま冷蔵庫へ。袋から出した場合は、新聞紙で包み、さらにビニール袋に入れておくとニラ自身の水分で乾燥を防げます。

簡単にできて食卓の主役に。おすすめニラレシピ
ベストな状態のニラを買ったら、村上さんおすすめのつくり方で食べてみませんか。
ご飯が止まらない。農家直伝「ニラ醤油」
刻んだニラに、ごま油、醤油、ラー油を合わせるだけ。村上さんの家庭では、卵黄をご飯にのせ、その上からニラ醤油をかけて食べることも。

【材料】
・ニラ 2束
・醤油 適量
・ごま油 お好みで
・ラー油 お好みで
【作り方】
①ニラを細かく刻む
②調味料と合わせる
③少しなじませたら完成
「うちでは夫が朝ごはんにいつも食べるんですよ(笑)。元気の源になっています」
刻んですぐ食べるとシャキシャキ感が際立ち、冷蔵庫でひと晩置くと味がなじんで、とろりとした食感に。ニラそのもののおいしさを感じられる一品です。
子どもも喜ぶ!「ニラの塩昆布あえ」
カットしたニラをレンジで熱し、塩昆布をあえて、最後にすりごまを振りかける簡単レシピ。

【材料】
・ニラ 2束
・塩こんぶ 適量(2つまみ程度)
・すりごま 適量
【作り方】
①ニラを3センチほどにカット
②レンジでニラに熱を通す。目安は2分程度
③熱したニラと塩こんぶをあえて、盛り付ける。最後にすりごまを振りかける
野菜嫌いの子どもでもおかわりして食べるほど好評でした。
「お酒のあてにもなるし、とにかく楽でおいしいので、夕食にあと一品ほしいときにぜひ」
こんなにニラがすすむ料理、ほかにないかも!?
大分のソウルフード「にら豚」
大分でニラ料理といえば、やはり「にら豚」。
1968(昭和43)年に大分市でニラ栽培が始まった数年後、「地元のニラを使った安くておいしい料理を」と、市内の中華料理店で考案されたのがはじまりといわれています。

【材料】
・ニラ 1束
・豚バラ肉 100グラム
・キャベツ 100グラム
・砂糖 大さじ1
・しょうゆ 大さじ2
・すりおろしにんにく 適量
・サラダ油 適宜
【作り方】
①豚バラ肉を2センチほど、キャベツを幅1センチほど、ニラを4~5センチほどにカット
②フライパンにサラダ油を入れてよく熱し、豚バラ肉を炒める。火が通ったらキャベツを入れる
③最後にニラと砂糖、しょうゆ、すりおろしにんにくを入れ、強火でさっと炒め合わせる
ポイントは、ニラを炒めすぎないこと。「私はちょっと甘めの味つけが好きなんです。よりニラの甘さも出る気がして」と村上さん。湯気と一緒に立ちのぼる香りだけで、思わず白ご飯を用意したくなる。そんな“大分の定番”です。
お取り寄せできる大分のニラ
鮮度の高いニラのおいしさを知ると、家でも気軽に楽しみたくなります。最近では、大分県産ニラを使った調味料や加工品も増え、オンラインで購入できる商品も。
炒めるだけで“大分の味”を楽しめるものや、ご飯のお供にぴったりの調味料など、自宅用はもちろん、ちょっと気の利いた大分土産としてもおすすめです。
フンドーキン醤油〈にら豚のたれ〉

大分のソウルフード「にら豚」を、自宅で手軽に楽しめる調味料。豚肉やキャベツ、ニラと一緒に炒めれば、中華料理店のような味わいに。甘辛い味つけで、ご飯がすすむ一品。忙しい日の夕食にもぴったりです。
大分県産ニラをたっぷり使用〈必然のニラ醤油〉

大分県産ニラの茎部分を使った、香り豊かなニラ醤油。みりんと少しの唐辛子を合わせた特製醤油で、ご飯や冷奴、卵かけご飯とも相性抜群です。
大分県公式「おんせん県おおいたオンラインショップ」では、ニラを使った商品のほか、県産食材や調味料など、さまざまな大分の味を購入できます。
後継者たちと手を取り合って、全国、世界へ
農業は担い手不足が課題として語られることも少なくありません。そんななかで村上さんは「〈大分にら〉の農家の強みは、仲間がいること」と力強く話します。
「すぐ隣の畑には仲間がいて、台風が来れば対策を教え合い、困った時は助け合う文化が根づいています。 これまでニラを育ててくれた私の両親をはじめとする先人たちの知恵と、仲間の団結力があるからこそ、後継者が育ち、3世代続くニラ農家も増えてきています。1軒あたりの栽培面積も増えて、むしろ手が足りないぐらいなんですよ」
県外にいる村上さんの息子さんも、近い将来、大分に戻って手伝いたいと話しているのだとか。「農業が若者たちに憧れられるような、子どもたちにとって将来の選択肢のひとつになればいいなと思っています」と、穏やかな表情で伝えてくれました。

村上さんの夢は、〈大分にら〉を全国、そして世界へ届けること。「『ニラといえば大分』となっていけたらうれしいですね。それと、いつか私がつくったニラが海を渡って、大谷翔平さんに食べてもらって栄養面でサポートしたいですね(笑)」
そんな明るい未来を描きながら、今日も村上さんは朝5時からビニールハウスに立ち、ニラに愛情をたっぷりと注いでいます。
スーパーの野菜コーナーで〈大分にら〉の文字を見かけたら、ぜひ手に取ってみてください。その肉厚な葉には、農家の情熱と大分の自然が育んだ、驚きの甘みが詰まっています。
credit text:牧亜希子 photo:藤島靖佳、栗本千尋(レシピ、お取り寄せ)