ティーセットや一輪挿し
連載|食卓で使いたい、大分の手仕事

城下町・杵築でつくる“物語のあるうつわ”。
陶芸家・坂本和歌子さん

Posted 2021.01.29
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理想は、上品で使いやすくて、たっぷり入るうつわ

第一印象は上品でエレガント。実際に使ってみると、おおらかで安心感があって、気づけば毎日手に取っている。そんなうつわをつくっているのが杵築(きつき)に工房を構える陶芸家、坂本和歌子さんです。

「大分のまちなかで育ったので、賑やかで明るい土地が好き。私が工房にいると近所のおばあちゃんがふらっと入ってきて、気ままなおしゃべりを楽しんでいく。そんな環境でものづくりをしたいんです」と話す坂本さんの工房は、“サンドイッチ型城下町”と呼ばれる杵築の中心街に建っています。

坂本和歌子さんの工房
築100年を超える町屋で、日常のうつわをつくっている坂本和歌子さん。

大分空港から、のどかな別府湾を眺めつつ車を走らせること20~30分。杵築城城下に広がる南北ふたつの高台と、それらに挟まれた谷あいの通りからなる一帯が“サンドイッチ型城下町”です。

坂の上の高台に立ち並ぶのは趣ある武家屋敷。一方、坂道を下った谷あいの通りには、江戸時代から続く商家や歴史ある酒蔵を改装した芝居小屋が連なっています。高台・谷・高台という土地の形状だから“サンドイッチ”というわけです。

別府湾
大分空港から杵築のまちへは、眺めのいい別府湾沿いを通るルートをチョイス。
高台からの眺め
名所「酢屋の坂」を上がった高台からの眺め。谷あいの道路を挟んで向かいには「塩屋の坂」。これがサンドイッチ型城下町。
杵築市の谷町通り
酒蔵を改装した商店など、瓦屋根に白壁の建物が並ぶ谷町通り。坂本さんの工房も通り沿いにある。

「この建物はもともと父の実家でした。昔は呉服屋だったのが、やがて洋品店になり、いまは私が土を練ってろくろをひいて、食器や花器を焼いている。土間も木の戸棚も昔のままなんですよ」

かつては洋服が並んでいたという古い戸棚には、白いティーポットやカップがたくさん並んでいます。どれも惚れ惚れするほどすてき……!

「残念ながら売り物じゃないんです。全部サンプル。どうしたらティーポットの注ぎ口をかわいらしく水切れよくつくれるか、10年以上ずっと研究し続けた試作品です」

試作品が並ぶ戸棚
ティーポットの試作品が並ぶ戸棚は、この建物が洋品店だった頃に使われていたもの。
作品やサンプル
広い工房内には作品やサンプルがあちこちに並んでいる。さりげなく花を生けたピッチャーも。
一輪挿し
取っ手のついた一輪挿しは定番アイテム。小さな花器なら食卓に飾るのもよさそう。

「私、紅茶が大好きなんです。だからティーポットやカップには思い入れがあって」と、杵築産の紅茶を淹れながら話す坂本さん。ふっくら丸みのあるポットから紅茶を注いだのは、陶芸家として独立した当初からつくり続けている〈しらゆりカップアンドソーサー〉です。

名前どおりの優雅な雰囲気にまずうっとり。そして「取っ手がちょっと大きいかな?」と思いきや、持ってみてびっくり。指がすっと入って持ちやすく、たっぷり紅茶が入ったカップを軽々と支えてくれるのです。

「紅茶は熱いのをたっぷり飲みたいから、サイズは大きめで、でも形は上品に。取っ手は指が3本しっかり入るように考えています」

紅茶を淹れる坂本さん
大分県一の茶産地でもある杵築市は、紅茶栽培でも有名。香り高く甘みのある〈自家製紅茶屋 やまどり〉の高熊紅茶を、坂本さんのティーポットで。
高熊紅茶をいれたティーカップ
見た目の美しさはもちろん、手に取ってお茶を淹れて飲んだときの心地よさにハッとする。

しらゆりカップアンドソーサー
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大切にしていることとは?

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