専用計測機でバター皿の丸みや深さを計測
連載|日常を楽しくする、大分の手仕事

日常に寄り添う、
洗練された湯布院の木工作品。
〈木屋かみの〉神野達也さん | Page 3

Posted 2024.01.25
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湯布院から全国へ。
制作意識が変わったターニングポイント

JR由布院駅から見える由布岳
JR由布院駅を出てすぐ正面にそびえ立つ由布岳の存在感に圧倒されます。

現在は全国各地で展示会を行い、幅広く活動していますが、2016年以前までは湯布院を中心にものづくりを行ってきた神野さん。その変化の背景には、2016年4月に起きた熊本地震があったといいます。

「熊本地震で湯布院もかなり被害があって、そこから建物を復旧したり、旅館や会社を建て直したり、なんとかやっているのを見てすごくたくましいな、自分もがんばらないと、と思って器づくりを本格的に始めて、県外で展示会ができるまでになりました」

専用計測機でバター皿の丸みや深さを計測している
器づくりを始めた際、初めてつくったのが「バター皿」。もともとバターナイフをつくっていたので「それならバター皿もつくってみよう」と挑戦したのがきっかけだそう。手づくりの専用計測機でバター皿の丸みや深さを測ります。

活動の幅に加え、生み出される作品にも変化が起きた2016年。震災前は湯布院のお土産物や、ショップの看板や店舗の商品展示台などを制作していましたが、震災をきっかけに器を始めとする日用品の木工制作を中心に行うように。

工房で作業中の神野さん

「器は生活の道具でおもしろいというのもあったし、震災以降、大分の陶芸作家や竹細工職人さんなどと交流が増え、つくり手の方たちとコラボして展示会をすることが増えたのが大きいですね。これが新鮮で刺激になる。だから今は器づくりにも力を入れて、取り組んでいる最中です。今後は自分らしい表現方法も追求していきたいという思いもあります。もともと湯布院で什器やオブジェをつくっていたので、今後は立体的なオブジェやアートなどにも挑戦していきたいですね。今の年齢だからできる作品というのをつくれたら、という気持ちが出てきました」

型にはまらない自由な発想と、みずみずしい感性から生み出される〈木屋かみの〉。ひとつひとつに木のぬくもりと、神野さんが追求してきたデザイン性を兼ね備えた作品たちは、日常にもスッと馴染んでくれます。

神野達也さん
Profile 神野達也

1962年大分県生まれ。大阪・東京でプロダクトデザイナーを経て、1993年に大分県へUターン。日田市の家具メーカー在職中に木工制作に興味を持ち、湯布院町の木工研修所の嘱託職員として木工制作の基礎を学んだ後、1998年に湯布院町塚原高原に自身の工房〈木屋かみの〉をオープン。木を主材とした器や家具、雑貨などを制作し、全国で展示会を開催している。Instagram|@kiya.kamino

*価格はすべて税込です。

credit text:大西マリコ photo:黒川ひろみ

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