竹田市の革製品ブランドpaisanoの商品
連載|日常を楽しくする、大分の手仕事

使うほどに強く美しく育つ、
革小物と柿渋染め。
革職人・小河眞平さん

Posted 2022.08.31
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持つ人をカッコよく見せる、
“一頭仕立て”の革バッグとは?

自然な色ムラが美しい革の財布や、しなやかなのにタフな革のバッグ。〈paisano(パイサーノ)〉の革小物は、竹田市にある小さな工房でつくられています。つい手に取ってみたくなる親しみやすさと、「これを持っているだけで、いつもよりカッコよく見えそう」と思わせる佇まい。温かみがあって頼れる存在です。

〈paisano(パイサーノ)〉の小河眞平さん
「おじいさんが靴の職人だったこともあり、子どもの頃から革に親しみを持っていました」と話す小河眞平さん。東京の御徒町にあった革の専門学校で基礎を学んだ後、ランドセルなどを制作するメーカーで縫製を学び、独立しました。

つくっているのは革職人の小河眞平さん。いい水と豊かな自然、ものづくりの職人を歓迎するまちの空気に惹かれて、2017年に栃木県から竹田市へ移住してきました。天窓から自然光が入る工房では、昨年仲間に加わった若き相棒とふたりで制作に没頭。素材選びから裁断、下処理、縫製のすべてを行っています。19年には工房の隣にギャラリーも併設。1点ずつ表情の異なるバッグや革小物を求め、県外からも多くのお客さんが訪れます。

〈paisano(パイサーノ)〉の工房の外観
竹田市竹田町にある工房(左手前)。「もともとは市が古い長屋を改修してギャラリーとして運営していた建物を、そのまま借りて作業場にしています。隣(奥)の建物も空いたので併せて借り、自分たちの作品などを販売するギャラリーにしました」
工房に立つ小河眞平さん
天窓からの光が心地いい工房。ふたりとも黙々と革に向かいあっています。
〈paisano(パイサーノ)〉の革製品
奥から時計回りに、キーケース7150円、くつべら4950円、ネームタグ4950円、長財布38500円。
革作業をするおすぎさん
革小物の縫製や仕上げをしているのは、昨年から仲間に加わった25歳のおすぎさん。
縫い終わった後の糸を始末する工程
縫い終わった後の糸を始末しているところ。「こば(革の切断面)の部分は、やすりで削ってケバ立たせてから、ふのりを塗り、さらに熱で溶かした蜜蠟を染み込ませます。こばから水分が入ると革が傷みやすいので、蜜蠟で膜をつくっておくんです」。再びやすりをかけて磨いてようやく完成します。

「革小物をつくるときは、いかに長く使えるかを重視しています」と小河さん。財布やキーケースに使うのは、上質なイタリア産の牛革を植物性のタンニンでなめしたもの。丈夫だけれど手触りに温かみがあって、使えば使うほど味わいが深まります。

さて、そんな小河さんが現在取り組んでいるのが、“ヤギ革の一頭仕立て”です。ヤギの体はそれほど大きくないため、1頭分がバッグひとつ分。と言っても、バッグにするのに必要な長方形の革を、そのまま切り出すわけではありません。1枚の革を無駄なく使いつつ、より丈夫なものにするために、あえて部分的にカットしたり継いだりしながら仕立てるのです。

作業台にヤギ1頭分の革を広げる小河さん
ヤギ1頭分の革を広げ、しばし考案中の小河さん。部位による強度や状態の違いを見極めながら、どういうふうにバッグの形を構成していくのか考えを巡らせます。
革にガイドラインをひく小河さん
革の上にデザインのガイドラインとなる線を引いて、
革包丁で革を裁断している
その後、専用の革包丁で裁断します。自然の革が持つ湾曲やゆがみをどうやって生かすのでしょう?

「同じ1頭の革でも、背中のほうは強く、お腹まわりは弱くてやわらかい。時には傷がついた部分もあるんです。なので、負荷がかかるバッグの底の部分や肩ヒモには背中の革、負荷のかかりにくい部分にはお腹の革、傷んでいる部分はカットして、代わりにほかの部分の革をつぎはぎする。そうやって工夫しながらつくるのが、難しくておもしろいんです」

革を平らにならす作業中
「動物からとった革は、当然ですが平面じゃないので、そのままバッグにするとたるみが出てしまう。そのたるみを防ぐために、ところどころにハサミを入れて平らにならします」
裁断で生まれた端っこの革
「裁断で生じた端っこの部分もできるかぎり利用したいんですよね」。継いだり剥いだりパッチワークのように組み合わせたりすることで、1枚の革として再編成します。
革すき機で革を薄くする作業中
革と革を継ぐときは、重なる部分が厚くならないように革梳(す)き機を使って薄くしておきます。「革を薄くするためだけの道具があるのがおもしろいですよね」
ヤギ革を一頭分使用したバッグ
ヤギ革を一頭仕立てにしたバッグ(55000円~)。縁の部分を見ると、革を継いでいることがわかります。

できあがったバッグを見ながら、「めちゃくちゃアナログなんですよ」と、なんだか誇らしげな小河さん。「デザインに合わせて素材を選ぶのではなく、素材に合わせて人間が思考していくものづくりですね」


柿渋染めした生地を天日干しする
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