「たおれんだるま」の目のまわりを彫り込む作業
連載|日常を楽しくする、大分の手仕事

木工家具屋がつくる“たおれんだるま”。
日田市〈ID HOUSE〉の
ユニークな一品〈不撓楽天達磨〉 | Page 2

Posted 2024.08.06
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夫から、父から、それぞれに渡された
「だるま」のバトン

現在は、邦隆さんがやっていた下絵と彫りを息子さんが担当し、由美子さんが着色を行う分業制で、月に20~30個のペースでだるまをつくり続けています。息子さんもふだんは会社員として福岡県で仕事をされているため、福岡県と大分県を行き来しながらの作業となります。

おふたりに普段の作業の工程を教えてもらいました。

まず、断裁したクスノキに鉛筆で下絵を描きます。よくみると目の大きさや位置は異なっており表情はさまざま。

断裁したクスノキに鉛筆で描かれた下書き
ささっと描かれた下絵には一切迷いは感じられません。

次に下絵の線をもとに彫っていくのかと思いきや、由美子さんがアクリル絵の具を使って着色を先に行います。そこにはちゃんと理由があるそうで「先に彫ってしまうと、どうしても彫ったところに絵の具がはみ出してしまうんです」と由美子さん。

白目部分を塗る工程
体部分に朱色を重ね塗り
何度か重ね塗りを行い、木材に色を定着させるそうです。

ベースとなる色が塗り終わり絵の具が完全に乾いたら、電動の彫刻刀を使って、色と色の際を彫りこんでいきます。カーブも多く、左手でこまめに木材の向きを変えながら彫り進めていきます。

電動の彫刻刀で彫りを入れる作業
色と色の際を線状に彫り込んでゆく
「直接父に教わったわけではない」と言いつつも、息子さんの手さばきはすでに職人技。とにかく数をこなしトライ・アンド・エラーを繰り返しながら慣れていったそうです。
目入れを待つたおれんだるまが並ぶ

最後はだるまの要となる目入れを行います。筆を入れるとばかり思っていたら、由美子さんが手に取ったのはなんと綿棒。由美子さん曰く、だるまの大きさによって綿棒の太さもそれぞれ使い分けているとのこと。

綿棒の先で黒目を入れている
意外な道具の登場に取材陣一同笑顔になりました。

目の絵の具が乾けば、たおれんだるまの完成です。

工程のひとつひとつはとてもシンプルですが、出来上がったものはそれぞれ表情豊かで、クスノキの木目からも温かみを感じます。また、木肌が見えているため、家や家具との相性もよく、ポンと置いただけですんなりとインテリアになじんでくれます。

完成しただるまが積み上げられている
表情だけでなく木目や節もそれぞれ異なるところに唯一無二感が。

おとぼけと吊り目、2対のたおれんだるま
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メッセージとは…?

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