「不撓楽天」と書かれた落款印が木材に押されている
連載|日常を楽しくする、大分の手仕事

木工家具屋がつくる“たおれんだるま”。
日田市〈ID HOUSE〉の
ユニークな一品〈不撓楽天達磨〉 | Page 3

Posted 2024.08.06
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たおれんだるまは、
これからも受け継いでいく

40歳の頃に心臓手術、60歳で胃を全摘出するなど、病気がちだった邦隆さん。何度病魔に襲われながらも家具をつくり続けたいという意志は強く、入院と現場復帰を繰り返す姿は、自身が生み出した、たおれんだるまそのものでした。

額装された「不撓」の文字
「不撓」の文字の横には「人生七転八起 失敗しても屈せず 目的に向かって挑む誓願成就を達磨に託す 永い年月を苛酷な大自然の中で生き続けてきた木が伐り倒される 不撓楽天達磨は今日の厳しい社会の中で不運困難に出会っても ひるまない倒れないことを祈願し木が再び生きかえる」という、たおれんだるまに込められたメッセージが記されています。

ID HOUSEには、生前に邦隆さんが製作した家具や木材のストックがまだまだあり、これからも販売は続けていくそうです。

上から見ると背もたれがSの字になった2人がけのチェア
邦隆さんデザインのチェア。ふたりで座ると自然とお互いが向き合うことになり、そこから会話が生まれるようなデザインになっています。ショールームにはこのほかにもアイデアを凝らした家具が所狭しと置かれており、邦隆さんの家具に惚れ込んだ方が県外からも買に来るそう。
木をくり抜いて作られたお弁当箱
家具のほかにも小物やアクセサリー類なども。このお弁当箱も、木をくり抜くなど高い技術でつくられています。

「この先、家具がなくなってもだるまだけは続けたいと思っています。やっぱり主人が倒れずひるまないという思いでつくっていたので。息子はまだまだつくれると思いますし、色着けはほかの家族でもできるので、なるべく続けていきたいですね。孫がとても器用で何でもできる子なので、ゆくゆくはだるまを引き継いでくれたら」と由美子さんは話します。

それぞれ表情が違う2体の完成品
おとぼけ(左)と吊り目(右)、ペアでお雛様として飾る方もいるそう。「だるまなので3月3日を過ぎても片づけなくてもいいところがいいんですよ」

夫から妻へ、父から息子へ、そしてそこから孫世代へと脈々と受け継がれていくだるまのバトン。これがこの先もずっと続けば、たおれんだるまは日田市を代表する工芸のひとつになっていくかもしれません。

たおれんだるまの上に「不撓楽天」の落款印が押された木材が乗っている
Information
ID HOUSE
address:大分県日田市大字渡里衣織手1464-1
tel:0973-23-7333
access:日田駅から車で約7分、大分空港から車で約1時間15分
営業時間:13:00~17:00
定休日:火・水曜、ほか不定休

*価格はすべて税込です。

credit text:川上靖代 photo:木寺紀雄

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