著名建築家による建物から
歴史香る建造物まで!
心ときめく大分建築探訪 | Page 4
造り酒屋のお屋敷〈帆足本家 富春館〉は、
見どころだらけの大人のサロン空間
大分駅から車で20~30分ほどの中戸次(なかへつぎ)にある〈帆足本家 富春館〉は、江戸時代から昭和にかけて造り酒屋として栄えていた屋敷を改修しオープンさせた、衣食住を楽しむ複合スペース。
約2000坪もある広大な敷地の中には、作家の手仕事作品を展示するギャラリーやレストラン、和菓子屋さん、ショップなどが点在し、落ち着いた雰囲気の中で心豊かに過ごせる空間となっています。
慶応元(1865)年築(!)の母屋は、江戸後期に南画家として活躍した田能村竹田をはじめとする多くの文人墨客たちが立ち寄り、過ごした場所。現在は当時の趣をそのままに〈ギャラリー富春館〉として、現代の作家たちによる作品などが展示販売されています。
ここでぜひ見てほしいポイントは、歴史と豊かさを感じさせる重厚なつくりの家屋や蔵の魅力を充分に生かしつつ、現代らしさを感じさせる空間になっているところ。古くから帆足家で使われていた家具を利用したショーケースがあったり、酒造の酒袋を革と組み合わせて座布団に仕立てたりと、ひとつひとつにちゃんとストーリーがあるんです。
総支配人の帆足めぐみさんは、そもそもギャラリーやカフェを開きたいと思っていたわけではなく、昔からあるここにあるものを生かしたくて、この富春館を始めたと語ります。
「その昔、ここは文人墨客たちが自由に詩画や茶を楽しむサロンのような場所だったと聞いて、それをもう一度現代に蘇らせて、いまの作家さんたちの手仕事を紹介したり、お茶やお菓子を楽しんでもらう場にできたらという思いで始めました」
大分市の建築探訪を終えて、どの建物にも一貫して感じたのは、すばらしい建築をただ保存管理するのではなく「いまの時代にあったかたちで生かしていこう」という心意気と建築家たちへのリスペクトです。
まだまだある! 大分県の名建築
今回は気軽に巡れる大分市の建築を紹介しましたが、県内には注目の名建築がまだまだあります! お近くにお越しの際は、立ち寄ってみてはいかが?
・由布院駅(由布市)
設計:磯崎新
・由布市ツーリストインフォメーションセンター(由布市)
設計:坂茂
・COMICO ART MUSEUM YUFUIN(由布市)
設計:隈研吾
・ラムネ温泉館(竹田市)
設計:藤森照信
・クアパーク長湯(竹田市)
設計:坂茂
・竹田市城下町交流プラザ
設計:隈研吾
credit text:川上靖代 photo:木寺紀雄