〈高平おばちゃんズ〉の5人のメンバー
ニュース&コラム

平均年齢71歳。
日出町の〈高平おばちゃんズ〉がつくる
お弁当がおいしすぎる!

Posted 2023.04.20
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大分県の日出町(ひじまち)高平(こうびら)地区を拠点とする女性グループがSNSをにぎわせているという情報を耳にし、真相を探るべく現地へ。

あるときはJR九州の観光列車〈36ぷらす3〉が停車する杵築駅(きつきえき)に、またあるときは、日出町役場で開催されるマルシェなどに神出鬼没で現れて、手づくりのお弁当やお惣菜を販売するのだとか。

おそらくは今、大分県でもっともホットな“おばちゃんたち”と、“幻のお弁当”をご紹介します!

料理上手なメンバー11人が食を通じて地域に貢献する

盛り付けが完了した具だくさんの弁当がずらり並ぶ
これが、幻のお弁当!

日出町があるのは、別府市、杵築市、宇佐市(うさし)と隣接する県東部の速見郡。グループの正体は、町内の高平婦人会に所属する11人の女性が集まり、2016年から活動している、その名も〈高平おばちゃんズ〉。高平婦人会そのものは約100年の歴史があるといいます。

高平地区のまちなかに立つ大杉
高平地区のシンボルとも言うべき大杉。おばちゃんたちがこの地に嫁いできたときから、ずっと暮らしを見守っています。

60~80代が集まるメンバーの平均年齢は71歳! 皆さん元気はつらつとしていて、常に笑い声が絶えません。代表の末綱智子さん(ともちゃん)は、その活動について次のように話します。

「婦人会の活動の一環として、地域おこし協力隊と社会福祉協議会の支援により発足したのが〈高平おばちゃんズ〉です。メンバー全員が料理上手という強みを生かし、お弁当をつくって高齢者のお宅へ月1回届けたり、JR九州の観光列車〈36ぷらす3〉の乗客に向けて杵築駅のホームでお惣菜やお弁当を販売したりしています」

惣菜を調理する様子
阿吽(あうん)の呼吸で、次々とお惣菜を仕上げていくメンバーの皆さん。
キッチンに並ぶ仕込み中の食材たち。フライパンには炒り卵が
目と舌で楽しめるよう、彩りも工夫しています。

2020年には、毎年町内で開催される人気イベント「城下町ひじ雛めぐり」に合わせて、地元、大分県立日出総合高等学校の生徒とコラボレーションして、透明カップ入りの“映えるちらし寿司”をつくったことも。

「この年齢になって、高校生と一緒に何かをするということはあまりないので刺激になりますね(笑)。〈高平おばちゃんズ〉の活動を通して、いろいろな年代の人と出会って、コミュニケーションできるのは本当に楽しいし、幸せなことだと思います」

「城下町ひじ雛めぐり」に合わせて制作されたポスター
大分県立日出総合高等学校の生徒とコラボした際、彼らがつくったポスター。今も大切に保管しています。
JR杵築駅のホームで出店し、コロッケやぷち弁当を販売中
JR杵築駅のホームで出店中のけいこちゃん(左)とれいちゃん(右)。人気ナンバー1のコロッケやぼた餅など販売内容は変わります。写真提供:高平おばちゃんズ

周囲の人々を笑顔にする“元気印”のおばちゃんたち

おばちゃんたちのお弁当づくりの拠点は、のどかな山間の風景が広がる日出町高平地区のコミュニティ—センター。この日、メンバーが集合したのは朝7時頃で、5人が参加しました。お弁当の数や各人の都合により、時間や人数は変動するといいます。

南端(みなみはた)コミュニティーセンター外観
おばちゃんたちの拠点である南端(みなみはた)コミュニティーセンター。
ユニフォーム姿の〈高平おばちゃんズ〉のメンバー5人
〈高平おばちゃんズ〉のこの日のメンバーは、11人中5人。左から、さっちゃん、みえちゃん、ともちゃん、みやちゃん、のぶちゃん。ユニフォームは、イベントに参加するときに着用するもので、帽子はさっちゃんのお手製です。

まず、それぞれが持ち寄った野菜(メンバーが家庭菜園でつくったものが大半だとか)を見て、献立を決めることから調理が始まります。お弁当の主役となるのが、これら地元産の野菜を使った色とりどりのお惣菜。例えば、きんぴらごぼうや高菜の白和え、おからのサラダなど。

持ち寄った白菜やじゃがいも
採れたての新鮮野菜。メンバーが家庭菜園でつくったものなどを持ち寄るそう。
キッチンにたくさん用意されたブランド卵〈蘭王〉
卵は大分県のブランド卵〈蘭王〉を使用。「臭みがなくて、味が濃厚。きれいなオレンジ色をしているんですよ」とみえちゃん。
手書きで箇条書きされたこの日のメニュー
メニューが決まったら、忘れないよう紙に書いて共有。これだけでも、おかずたっぷりなのがわかります。

「みやちゃん、和え物の味見をしてくれる?」
「ちくわは何を詰めて揚げる? のぶちゃん、手が空いたら手伝って」
「この切り干し大根はさっちゃんの家で干したんだったね」

お互いを名前で呼び合う和やかなムードのなか、次々にお惣菜が仕上げられていきます。皆さんの手際のよさは主婦歴ウン十年の賜物。

コロッケを揚げる様子
前日の夜に仕込んでおいたコロッケを揚げていきます。手間のかかる作業をいとわないのもおいしいお弁当づくりの秘訣。
揚げたてのコロッケ
シンプルで素朴な味わいのコロッケ。何個でも食べられます!

和える、煮る、炒める、揚げるなど、丁寧に手づくりしたお惣菜が10種類以上、バランスよく並びます。箸休めの漬物に至るまで、おいしさはもちろん、ボリュームも満点でひとつ500円という価格設定には脱帽です。

盛り付け終わった弁当がずらっと並ぶ
見事なフォーメーションで、50食近くを盛り付け。さっちゃんのセンスが光ります。
おかずがはみ出そうな「本気のり弁」
コロッケ、白身魚のフライ、からあげまで入った本気のり弁500円。二度と普通ののり弁を食べられなくなるかも……。

安くて、おいしくて、神出鬼没。チャーミングなおばちゃんたちが丹精込めてつくるお弁当は決まった店舗での販売はなく、かつ数が限られることから、いつの間にか“幻のお弁当”とも言われるようになりました。

コロッケや唐揚げ、サバ煮や煮卵などもりだくさんの幕の内弁当
蓋が閉まりづらいくらいおかずが入った幕の内弁当500円。一品一品手が込んでいて、食べ終わるのが悲しいほどです。
お弁当のフタに貼られたメンバーの似顔絵シール
11人の似顔絵が描かれたロゴが目印。これも手づくりだそう。

イベントやマルシェへの出店、杵築駅での販売スケジュールなどは、インスタグラムを要チェック。人気が高く、早々に売り切れることもあるのでご注意ください。また、10個以上から注文も受け付けています。

お弁当を手渡しで配達中
みやちゃんが、配達に訪れたのは車で10分ほどの距離にある、日出町のブランド豚〈日出ポーク〉の直売店。よくお弁当を頼むという常連さんにその魅力を聞くと、「お惣菜がバラエティに富んでいて彩りもよく、料理をするときの参考になります。お昼が待ち遠しくて!」と教えてくれました。
お弁当を受け取りに来た人と談笑中
〈高平おばちゃんズ〉の活動を支援している日出町社会福祉協議会のスタッフが、注文したお弁当の受け取りにやってきました。

お弁当やお惣菜のおいしさはもちろんのこと、メンバー同士の仲のよさや明るく前向きな姿勢が、出会った人たちを笑顔にする〈高平おばちゃんズ〉。これから先10年、いえ20年も、11人で元気に活動してくださいね。

新聞紙でつくられた手提げバッグ
特製の新聞バッグも人気。杵築駅での販売時に商品を入れてくれるそう。
Information
高平おばちゃんズ
web:Instagram|@koubira_obachans

*価格はすべて税込です。

credit photo:メグミ text:池田祐美子

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