使うほどに強く美しく育つ、
革小物と柿渋染め。
革職人・小河眞平さん
持つ人をカッコよく見せる、
“一頭仕立て”の革バッグとは?
自然な色ムラが美しい革の財布や、しなやかなのにタフな革のバッグ。〈paisano(パイサーノ)〉の革小物は、竹田市にある小さな工房でつくられています。つい手に取ってみたくなる親しみやすさと、「これを持っているだけで、いつもよりカッコよく見えそう」と思わせる佇まい。温かみがあって頼れる存在です。
つくっているのは革職人の小河眞平さん。いい水と豊かな自然、ものづくりの職人を歓迎するまちの空気に惹かれて、2017年に栃木県から竹田市へ移住してきました。天窓から自然光が入る工房では、昨年仲間に加わった若き相棒とふたりで制作に没頭。素材選びから裁断、下処理、縫製のすべてを行っています。19年には工房の隣にギャラリーも併設。1点ずつ表情の異なるバッグや革小物を求め、県外からも多くのお客さんが訪れます。
「革小物をつくるときは、いかに長く使えるかを重視しています」と小河さん。財布やキーケースに使うのは、上質なイタリア産の牛革を植物性のタンニンでなめしたもの。丈夫だけれど手触りに温かみがあって、使えば使うほど味わいが深まります。
さて、そんな小河さんが現在取り組んでいるのが、“ヤギ革の一頭仕立て”です。ヤギの体はそれほど大きくないため、1頭分がバッグひとつ分。と言っても、バッグにするのに必要な長方形の革を、そのまま切り出すわけではありません。1枚の革を無駄なく使いつつ、より丈夫なものにするために、あえて部分的にカットしたり継いだりしながら仕立てるのです。
「同じ1頭の革でも、背中のほうは強く、お腹まわりは弱くてやわらかい。時には傷がついた部分もあるんです。なので、負荷がかかるバッグの底の部分や肩ヒモには背中の革、負荷のかかりにくい部分にはお腹の革、傷んでいる部分はカットして、代わりにほかの部分の革をつぎはぎする。そうやって工夫しながらつくるのが、難しくておもしろいんです」
できあがったバッグを見ながら、「めちゃくちゃアナログなんですよ」と、なんだか誇らしげな小河さん。「デザインに合わせて素材を選ぶのではなく、素材に合わせて人間が思考していくものづくりですね」