使うほどに強く美しく育つ、
革小物と柿渋染め。
革職人・小河眞平さん | Page 3
パイサーノ(仲間)を増やし、
新たなものづくりに挑戦したい。
ところで、屋号の〈paisano〉はどういう意味なのでしょう? 答えは「同郷の人」というような意味のスペイン語。移住してきて大好きになった竹田のまちを通じて、幅広い仲間や同志と出会いたい。小河さんのそんな願いが込められています。
工房の隣にあるギャラリーを訪ねると、革小物や柿渋染めのアイテムのほかに、小河さんが選んだ作家ものの陶器や木工もあれこれ。この9月には竹田在住の作家による2人展も予定しているそうです。
「竹田市には技術もセンスもある若手が結構います。ものづくりの楽しみを、彼らとも共有したいんですよね」と小河さん。それを聞いて「実は僕も……」と話し出したのは、おすぎさん。
「松本クラフトフェアに出展していた小河さんの作品をいいなあと思って、その場でちょっとおしゃべりしたのが3年前。その1年後、僕が自転車で九州を旅していた途中でふっと思い出して立ち寄り、そのまま転がり込むみたいな感じでスタッフになったんです」
そんな小河さんとおすぎさんは今、自然素材だけで革をなめす「白なめし」という日本古来の技術に挑戦しています。本来は水と塩と菜種油でなめすそうで、古くは平安時代の書物にも、似た技法が記されているのだとか。
「鹿の革で何度か試みているんですけど失敗続き。自分たちで毛を抜くところまでは辿り着いたものの、その後がうまくできなくて」と小河さん。
「でも、そういう未知の領域も含めて、革は本当におもしろいです。1枚1枚に表情があって、見れば見るほど、使えば使うほど変化するし愛着も沸く。魅力が尽きることなくずっと続くんですよね」
東京都生まれ。靴職人の祖父の影響もあって革に興味を持つ。東京・御徒町の専門学校で革づくりの技術を学んだ後、栃木県の老舗鞄店でランドセルづくりの仕事に就く。独立後、2017年に妻と子ども、両親とともに大分県竹田市へ移住。工房&ギャラリー〈paisano〉を開く。〈paisano〉の展示会は9月4日まで東京・南青山〈pejite青山店〉で開催中。10月1日~16日に福岡県うきは市の〈reed〉でも予定。
*価格はすべて税込みです。
credit text:輪湖雅江 photo:白木世志一