青が印象的な「黒刷毛」のスープリム皿と「きなり」の丸平皿
連載|日常を楽しくする、大分の手仕事

国東半島の身近な素材を使ってつくる器。
〈くにさきかたち工房〉垣野勝司さん | Page 2

Posted 2025.02.07
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日常を彩る「きなり」と「黒刷毛」の器

垣野さんの器は、素朴で温かみのある風合いも魅力のひとつ。薪ストーブにできる灰、自家栽培している稲の藁、目の前の海で拾ったシーグラスなど、身近にある素材を使っていることもその魅力につながっているのかもしれません。

工房の軒先に稲架掛けのように稲穂が吊るされている
無骨な薪ストーブとバケツいっぱいに入った灰
工房で暖をとるのに欠かせない薪ストーブは、釉薬(ゆうやく)になる灰を生み出してくれます。

ぽってりとしているのに、繊細な質感のある「きなり」シリーズの釉薬に使っているのは、工房の薪ストーブで生まれる灰。ろくろを引いて整形、素焼きしたあと、粉引の技法で、白い化粧土を刷毛で塗り重ねます。器をそのまま化粧土につけ込む陶芸家も多いなか、垣野さんはあえて何度も刷毛塗り。

「そのほうが、味が出るというか。手間はかかるんですけどね」

インタビュー中の垣野さん

その後、灰の釉薬をかけて、本焼き。現在は、工房のすぐ外にあるガス窯で焼き上げます。

工房そばに設置された窯
工房のすぐ外、田んぼも見える場所に設置された窯。現在はガス窯ですが、将来的には「薪窯にしたい」と、すでにレンガも準備済み。

実は、定番のきなりが生まれたのは、自家栽培した稲藁で火襷をしているときでした。

「余っていた(火襷をしていない)器に釉薬をかけたら、“これはおもしろいな”と。それがメインになった感じです」

化粧土を何度も重ねることで生まれる釉薬の濃淡や、古びたように見える風合いも、きなりの特徴です。

深い青色が印象的なスープリム皿と白い丸平皿
青さが強く出た「黒刷毛」のスープリム皿(6050円)と、「きなり」の丸平皿6寸(3080円)。右の丸平皿は、カフェなど飲食店でも使われることが多いそう。

もうひとつの定番は、「黒刷毛」。きなりと同じ粉引の技法を用いますが、こちらは黒い化粧土を刷毛塗りします。刷毛目はほとんど現れておらず、どれも“真っ黒”ではないのもおもしろいところ。濃紺のようだったり、黒の中に鮮やかな青みが混ざっていたり。それぞれに黒っぽさやブルーの濃淡が違っているのも、黒刷毛シリーズの特徴です。

「化粧土を黒くするために、原料に酸化金属や鉄、コバルトなどを入れているので、その調合で青く出る。それも、ちょっとおもしろいなと思っています」

まだ窯の中に並んでいる、焼き上がったばかりの器たち
焼き上がったばかりの器。黒刷毛もきなりも、釉薬の厚みなどでも変化するため、ひと窯ごとに色合いや風合いが違っています。

国東で新たに始めたもののひとつが、すぐそばの海岸で拾ったシーグラスを使うこと。

「遊びで始まったものが、広がりつつある感じですね」

そのまま使うのではなく、一度焼いて溶かしたものを使っているといいます。「迷いもありながら、“いまある素材でできること”を考えています」と垣野さん。

ひょうたんやハート型などシーグラスを使った箸置き4種
シーグラスを使った箸置き(各550円)。モチーフもかわいらしく、キラキラした感じや色合いが食卓のアクセントになってくれそう。

パステルカラーのようなきれいな色合いの“ラスター彩”を使った器づくりにも取り組んでいます。マグカップやお皿など、食卓できなりシリーズと並べて使うのもすてき。

上絵の具を使った「クレーの器」シリーズのカップ
「クレーの器」シリーズは、日常使いの器というよりも、垣野さんの作品というイメージ。食卓や棚にひとつ並べておくだけでも、華やかな雰囲気になります。

上絵の具を使った「クレーの器」は、スイスの画家、パウル・クレーにオマージュを捧げたシリーズ。本焼きをしたベースに、粉状の上絵の具を指で擦りつけながら、パステル画のように仕上げていくそう。その後800度で焼き上げ、完成させます。


〈うつわと喫茶 みなつち〉内観
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