絵本のラフ
連載|あの人に会いたい!

〈ザ・キャビンカンパニー〉
廃校アトリエからおとぎ話を紡ぎ出す
絵本作家ユニット | Page 2

Posted 2022.02.22
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地元の人たちの結束と生きがいを生み出した
「チルドレンフェスティバル」

旧石城西部小学校をアトリエとして借りようと決意したザ・キャビンカンパニーのふたり。さっそく申請をしようと由布市役所へ連絡したところ、意外な答えが返ってきました。

「この学校は地元の人たちの思い入れがとても強い学校なので地元のみんなが了承してくれたら、貸してもいいよって話になったんです」(健太朗さん)

インタビュー中の阿部健太朗さん
阿部健太朗さん。特に役割を決めているわけではないけれど、作品では静物を描くことが多いそう。

2011年頃はまだ絵本も出版しておらず、駆け出しの若手美術ユニットという肩書きだけで「ただ漠然と絵で食っていきたいと思っているだけの何者でもなかった」と、当時を振り返るふたり。

絵本のラフ
絵本のラフは何度も描き直して練り上げていきます。

その後、地元の人たちの大切な母校をなんとか貸してもらおうと、地域の寄り合いを開いてもらい、自分たちの思いを理解してもらうために地道に交流を重ねていったそうです。

「はじめは『どんな使い方をするかもわからんし貸すのが不安だ』という声と、『学校を大いに活用してもらいたい』という声で意見が割れていました。自分たちのやりたいことや目指す方向を言葉にして伝えることで、最後には貸していただけるようになりました」(紗希さん)

絵本の原画

こうして無事にアトリエとして廃校を借りることになったふたりは、制作活動の場として利用するのはもちろん、大切な母校を使わせてもらうならと、地元の人をはじめとする一般の人々にアトリエを開放するイベント「チルドレンフェスティバル」を開催することに。

「チルドレンフェスティバル」を楽しむ子どもたち
2012年から開催している「チルドレンフェスティバル」。(写真提供:ザ・キャビンカンパニー)

「地元の人たちと話しあって、この学校を再び、子どもたちの居場所へと再生させようということに。ミュージシャンやダンサーなど、ふだん先生をやっていない人に授業をやってもらうワークショップイベントを立ち上げました」(健太朗さん)

「『図工』『音楽』『体育』とか、ちゃんと時間割を決めてやりました。スタッフは私たちふたりと平均年齢70代の地元のおじいちゃんとおばあちゃんで、とっても温かくユニークなイベントになりました」(紗希さん)

「旧石城西部小学校歴史博物館」の部屋
旧石城西部小学校の歴史を振り返る「旧石城西部小学校歴史博物館」の部屋。黒板に貼られているのは、この学校の卒業生たちの写真。チルドレンフェスティバルのスタッフをしてくれるおじいちゃん、おばあちゃんたちも、多くがこの学校の卒業生。

2012年にスタートした「チルドレンフェスティバル」は、その後も2年に1度のペースで開催。回を増すごとに来場者は増えていき、地元のおじいちゃんやおばあちゃんたちにとって、なくてはならない「生きがい」のようなイベントとなったそう。

飾り付けられた廊下
教室だけでなく廊下にもザ・キャビンカンパニーらしい工夫がいっぱい。

「チルドレンフェスティバルが成功したこともあって、徐々に地元の人たちとの距離も縮まっていきました。アトリエの管理を手伝ってくれたり、田んぼづくりを教えていただいたり、みんなで学校の草刈りをしたりと、なにかと交流する機会も増えました」(健太朗さん)

現在は新型コロナウイルス感染症の影響もあり開催を中止しているそうですが、「コロナが落ち着いたらまたやりたいねと地元のみんなと話してます」(健太朗さん・紗希さん)

チルドレンフェスティバルのスタッフでもある森仁さん
「チルドレンフェスティバル」のスタッフをする森 仁さんが「俺はザ・キャビンカンパニーの応援団長だから」と自慢げに話すところを見ても、ふたりがすっかり地域になじんでいるのがわかります。森さんは、絵本『ほこほこのがっこう』のキャラクターモデルにもなったそう。

設置されている『キメラブネ』
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