路上販売から人気アーティストへ。
画家・北村直登さん | Page 3
アートも大分の観光資源のひとつに
福岡出身の北村さんに言わせると、大分の人と福岡の人では気質が全然違うそう。
「大分の人は人が嫌になるようなことは絶対言わないですね。僕はサッカーをやっている頃から“なにくそ根性”が強かったんですが(笑)、大分の人は本当に人がいいんです。僕が絵を描いているというと、大変だねとかすごいねと言ってもらえて、それがとてもうれしかった。大分の人たちに学んだことは大きいです」
そして、やはり大分の温泉の魅力も強く感じているそう。
「ここも温泉施設ですけど、温泉って本当にいいエネルギーを感じます。自分が自然のサイクルのなかで生きていることを思い出させてくれる。大分の人の気質も温泉によるものが大きいのかなと思ったりします」
でも、いいものがたくさんあっても、大分の人たちは自分たちで発信するのはあまり得意ではないと感じるそう。
「たぶん自分から自慢げに言うのが、あまり好きじゃないんですよね。それは大分の人のいいところでもあるので、僕みたいな、もともと県外の人間が大きな声で言えばいいんですよ。ここには温泉もあっておいしい食べ物も、アートもある。僕がここでこういう活動をしているのも観光資源のひとつになればと思って、アートでの引き込みをがんばっているところです」
順風満帆に活動を展開してきた北村さん。いまや自分の会社を持ち、スタッフを雇うまでに。
「絵を描いているのが一番楽ですね。難しいのは絵を売ること、その次に難しいのは会社を運営していくこと」と、アーティストでもあり経営者でもある大変さをにじませます。
今後はもっと大きな野望を持って活動していくのかと思いきや、「現状維持」という意外な答えが。
「いま目の前にあることを一生懸命やったり、いただいた話を大切にして、営業はいっさいしていないんですよ。でもSNSで知ってもらえるようになってから、スマートフォンひとつでいろいろな人とつながれたり、新しい人と出会ったり。昔の労力を考えたら、こんなにいいことはない(笑)」
それで冒頭のように、動画での発信などに力を入れているというわけ。そんな情報発信の甲斐あってか、今後は海外への道も開けそうなのだとか。
「海外のルートを持っている人に声をかけてもらって一緒に動いたりしています。自力で飛んでいける力はないけど、上昇気流に乗せてもらってなるべく遠くに飛んでいけるように、自分のできることを一生懸命やるというスタイル。まあ、絵を描くのだけは得意なので」
どんなに売れっ子になっても謙虚な姿勢は忘れない。北村さんもすっかり大分気質なのかもしれません。
credit text:榎本市子 photo:在本彌生