連載|あの人に会いたい!
“旅の予定を狂わせる店”。
“旅の予定を狂わせる店”。
大分市〈カモシカ書店〉岩尾晋作さん | Page 3
人知れず埋もれている、
大分県の歴史的な足跡を紹介したい
1932年に誕生した〈ボン書店〉は、自ら活字を組み、印刷をして、北園克衛や春山行夫ら若きモダニズム詩人の詩集を洒脱(しゃだつ)なセンスで刊行し、彗星のごとく消えていった出版社です。
「その発行人であったのが鳥羽茂という人物なのですが、北園克衛や吉田一穂(いっすい)などモダニスム詩出版で際立った仕事をしているだけではなく、アンドレ・ブルトンやポール・エリュアール、マン・レイらと原稿や写真のやりとりをして、シュルレアリスム文献でも先駆的な出版活動をしていました」
そんな鳥羽茂氏が、眠っているのが、ここ大分の地だといいます。
「僕は内堀さんの著書を頼りに、豊後大野市にある鳥羽氏の最期の地を訪ね、関係者数人にも接触し、その方たちのご協力のおかげで鳥羽氏に直接会った人へのインタビューなども行ってきました。大分県は文学不毛の地、なんて言われてきましたが、僕は鳥羽茂のことを、ボン書店のことを、大分の人にこそもっと知ってほしいのです」
またフランシスコ・ザビエルが豊後国(大分県)を訪れキリスト教が伝えられたことで、県内にはキリシタン史跡も点在しています。
「ザビエルの書簡は130通ほどが本物だと認められていますし、まだまだ大分に埋もれているはずです。ほかにも維新志士関連など、歴史の足跡となる証拠が人知れず眠っていると思うのです。そうした地域ならではのものを集め、紹介していくことで、大分の周知にも努めていきたいと思っています」
Information
credit text:西野入智紗 photo:木寺紀雄
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