カモシカ書店で所蔵しているボン書店の刊行書など4冊の本が並ぶ
連載|あの人に会いたい!

“旅の予定を狂わせる店”。
大分市〈カモシカ書店〉岩尾晋作さん | Page 3

Posted 2024.11.20
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人知れず埋もれている、
大分県の歴史的な足跡を紹介したい

コミックやアートなど様々なカルチャー系の本が並ぶ一角

1932年に誕生した〈ボン書店〉は、自ら活字を組み、印刷をして、北園克衛や春山行夫ら若きモダニズム詩人の詩集を洒脱(しゃだつ)なセンスで刊行し、彗星のごとく消えていった出版社です。

テーブルに置かれた4冊の書籍と1通の書簡
カモシカ書店で所蔵している、〈ボン書店〉の刊行書や鳥羽茂の書簡。

「その発行人であったのが鳥羽茂という人物なのですが、北園克衛や吉田一穂(いっすい)などモダニスム詩出版で際立った仕事をしているだけではなく、アンドレ・ブルトンやポール・エリュアール、マン・レイらと原稿や写真のやりとりをして、シュルレアリスム文献でも先駆的な出版活動をしていました」

そんな鳥羽茂氏が、眠っているのが、ここ大分の地だといいます。

「僕は内堀さんの著書を頼りに、豊後大野市にある鳥羽氏の最期の地を訪ね、関係者数人にも接触し、その方たちのご協力のおかげで鳥羽氏に直接会った人へのインタビューなども行ってきました。大分県は文学不毛の地、なんて言われてきましたが、僕は鳥羽茂のことを、ボン書店のことを、大分の人にこそもっと知ってほしいのです」

1606年に発行された世界地図
最近オークションで手に入れたという1606年に発行されたメルカトル=ホンディウス版の世界地図。ガリバー旅行記の挿絵にもなっているもので、地図内には「サガノセキ」の表記も確認できます。

またフランシスコ・ザビエルが豊後国(大分県)を訪れキリスト教が伝えられたことで、県内にはキリシタン史跡も点在しています。

「ザビエルの書簡は130通ほどが本物だと認められていますし、まだまだ大分に埋もれているはずです。ほかにも維新志士関連など、歴史の足跡となる証拠が人知れず眠っていると思うのです。そうした地域ならではのものを集め、紹介していくことで、大分の周知にも努めていきたいと思っています」

お店へとつながる階段を上る岩尾さん
「愚直に真面目に本屋をやっているだけ」という岩尾さんですが、本について話し始めると、熱い思いがあふれます。
カモシカと本のイラストが描かれた〈カモシカ書店〉の木製看板
Information
カモシカ書店
address:大分県大分市中央町2-8-1-2F
tel:097-574-7738
access:大分駅から徒歩約15分
営業時間:11:00~20:00(土曜~22:00)
定休日:月曜(詳しくはSNSで要確認)
web:カモシカ書店
Instagram:@kamoshikabooks

credit text:西野入智紗 photo:木寺紀雄

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